2024年1月15日 第654号
法制審議会区分所有法制部会は、昨年11月に区分所有法制の改正に関する要綱案を発表した。同部会では6月に中間試案を発表し、意見募集を行い、131件の意見が法務省に寄せられた。
老朽化した区分所有マンションの建替え決議がされた場合の賃借権の消滅に関しては、存続期間中の賃借権の消滅については反対したのは全借連、自由法曹団など5団体と個人2名で、賃借人の使用の必要性を全く無視するもので正当事由制度の賃借人の権利保障を骨抜きにするもの等の反対意見が寄せられた。
A案の建替え決議によって賃借人の権利消滅に賛成したのは、不動産協会など7団体。B案の賃借権消滅により通常生ずる損失の補償金の支払いを請求することができる案には11団体が条件付きも含め賛成した。日弁連は条件付きでB案に賛成し、建替え決議の多数決要件の緩和を前提に建物に耐震性に危険がある場合で「補償金の支払いと賃借権の消滅による明渡しを同時履行とすべき」と意見を寄せている。
区分所有法制部会の要綱案では、B案の意見が採用され、(1)建替え決議がされた場合に専用部分の区分所有者は、賃借人に対し、賃借権の終了を請求することができる。(2)請求があった日から6カ月を経過する時に賃借権は消滅する。(3)区分所有者は、賃借人に対して賃貸借の終了により通常生ずる損失の補償金を支払わなければならない。(4)(1)の請求をした者は専用部分の区分所有者と連帯して(3)の債務の弁済の責めに任ずる。(5)賃借権が消滅しても賃借人は補償金の支払いを受けるまで、専用部分の明渡しを拒むことができる。なお、通常生ずる損失の算定について、法務省の補足説明では公共用地の取得に関する用対連基準の通損補償の算定方法が参考になるとしている。また建替え決議がされた場合に、賃貸借の更新等に関する借地借家法の適用除外の規律は反対の意見が多く削除された
乾杯する東借連常任弁護団 |
昨年の12月7日豊島区内において東借連常任弁護団会議が開催され、弁護士と東借連役員合わせて8名が参加した。
区分所有法制の見直しについてもっとじっくり議論する必要がある。立ち退き料さえ払えば明渡しが成立したり、法の手続きなしで自力救済行為も起きてしまう懸念もあることが議論された。
また問題になっていた地上げについて、地上げ業者がマスコミの報道以来沈静化していることも報告された。東借連の研修会は5月に開催する予定を決めた。
弁護団会議の後は忘年会で鍋を囲み一年を振り返り時には笑い、時にはしみじみとなった。弁護団ならではのハイレベルな話題中心だが、大いに食べ大いに飲んで楽しい時間を過ごした。
世田谷区内に部屋を賃借している幾田さん(仮名)は8月に明渡し訴訟の判決で全面勝訴し、住み続けられることになった。しかしほっとしたのも束の間。12月8日付で家主代理人弁護士名で賃料増額請求の書面が届いた。裁判時と同じ弁護士が担当している。
驚いた幾田さんは組合に相談に来た。A4用紙一枚に簡単な主張がされており、増額の根拠は建物が老朽化して管理維持費や修理修繕費がかかるため入居者に負担を求めるという趣旨だった。しかし、民法でも外壁や設置物などは家主が修理修繕の義務を負うと規定されている。賃料増額の根拠とは言えないのではないかとアドバイスし、前回明渡し請求時のように満足に協議もせず裁判に移行した前例がある。
年内は返答せず、来年また家主代理人弁護士より通知があったら改めて返答内容を考えて対処することとなった。安易に裁判にされ鑑定士が入ると賃料増額になってしまう可能性があるからだ。
できるだけじっくり協議し簡単に裁判になることを避けたいと幾田さんは考えている。