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2023年9月15日 第652号

よくある借地借家の相談事例
東借連2023年夏季研修会初のハイブリット開催
最近の相談事例を学習
地主が変わって賃料の支払方法など

東借連2023年夏期研修会(9月3日豊島区内)

 東借連は「2023年夏季研修会」を9月3日(日)午前10時から豊島区内の施設で開催した。
 講師の東借連の常任弁護団の穐吉慶一弁護士より「よくある借地借家の相談事例」9つの事例について解説し、報告した。
 借地問題では、(1)地上げ行為、(2)更新料の支払、(3)借地権の相続、(4)借地権の売却、(5)借地上の建物の増改築と修繕について、借地人がどのような対応をしたらよいか具体的に分かりやすく解説された。

賃料一方的増額応じる必要ない

質問に答える穐吉弁護士

 地上げ問題では新しい地主に変わって地代の高額な増額を請求された場合に、増額に合意しなければ今まで通りの地代を支払っておけばよい。更新料について契約書に具体的にいくら支払うとの明確な合意がなければ更新料を支払う義務はない。前回の更新の時に更新料を支払ったからというだけでは、更新料の支払義務は発生しない。
 借地権の相続では、地主の承諾は必要ない。自宅の名義と借地権の名義は一致させておいた方がよい。相続人でないものに遺贈させる時は地主の承諾は必要である。借地権を第三者に売却する場合には地主の承諾が得られない時は借地非訟手続きを行い、裁判所で承諾を受ける。借地上の建物の増改築は地主の承諾が受けられなければ借地非訟手続きを行い、地主に代わる承諾を受ける。なお雨漏りで地主の許可なく屋根を改修したからといって信頼関係破壊に当たらない可能性は高い。

オンライン参加者からも質問が

 借家の修繕を要求しても家主が修繕しない時は借家人が家主に代わって修繕し、修繕費用を請求できる。賃料を減額する場合には勝手に減額しないで調停の申し立てを行う。借家の老朽化や耐震性がないと言われても、直ちに明渡しに応ずる必要はない。借家のオーナーが代わって引き渡しを受けていれば新家主に対抗できる。賃料増額請求について合意してから1、2年ぐらいであれば値上げに応じる必要はない。講演終了後、会場参加者やオンラインの参加者からも活発な質問が出され、講師から丁寧な回答がされた。


地上げ110番
電話相談鳴り止まず

 7月30日、城北法律事務所を借りて東借連常任弁護団の地上げ110番が行われた。
 東借連常任弁護団弁護士2名と東借連役員3名が出席し交代で電話相談を受けた。
 午前10時頃からNHKとテレビ朝日の取材があり相談風景やインタビューの撮影があった。NHKお昼の首都圏ニュースで地上げ110番が紹介されると一気に電話が鳴り、1件終了するとすぐに鳴るというまさに休む暇もないほど相談が集中した。
 午後3時までの受付の予定だったが、電話が鳴りやまなかったため30分延長して対応した。
 相談件数は38件。地上げの相談は6件で他の相談も賃料増額や原状回復、修理修繕など借家に関する相談が多く寄せられた。相談件数が多く大変好評で大成功な地上げ110番だった。常任弁護団と相談し第2弾も検討している。


振込んだ地代を地主が理由もなく返却!
受領拒否とみなし東京法務局に供託
足立区

足立区内の昔ながらの住宅地

 足立区内でも宅地約45坪を賃借する永井さん(仮名)は毎年6月末日までに翌年1年分の地代を地主の口座に振込む約束がある。地代と言えば前回地代増額請求があった際は地主の顧問弁護士に否応なしに近隣地代に比べて安すぎるという理由で1・5倍の値上げを承諾した経緯があった。今年は6月末日までに振込むのを7月3日に振込んだところ地主は永井さんの口座に1年分地代を返却してきた。驚いて東京法務局を尋ねた永井さんは職員に経緯を説明し相談の結果、受領拒否に当たると言われ無事に供託を済ませた。
 この地主はこの地域で500以上の借地を抱えており、自分ひとりでは到底管理できないと考え区内にある建設会社に地代の回収及び更新料の請求、地代増額請求の通知書発送、駐車場の管理等を依頼している。
 その後、組合事務所を訪ねて地主は何をもって地代を返してよこしたのか理由が判らず心配である。たった3日の遅延をもって信頼関係破壊という理由には当らないと思うが、何か地主との争いはありますかと尋ねても思い当たることはないという。今後、調停なり訴訟を起こされる可能性はないとは言えないと回答。
 後日、建物収去土地明渡の訴訟を申し立てられたと連絡があり、弁護士に相談するよう伝えた。