2022年7月15日 第645号
JR立川駅南口付近、地上に多摩都市モノレール |
立川駅の南口から徒歩10分ほどの閑静な住宅地の627坪の借地が今年4月に突然底地買い業者のE社に売却された。
借地人はこれまで地代を半年分まとめて支払っているが、地主から土地を売却するような話は一度も聞かされたことはなかった。5月に入りE社の社員が土地の登記簿謄本を持って借地人の各戸を訪問し、「内の会社が今度地主になりました」と挨拶に来た。驚いた借地人の数名が近くにある組合に連絡し、6月に入り5世帯が町会の会館に集まり、E社との交渉を組合に依頼し、5世帯が組合に入会した。
組合では早速E社と連絡を取り、第1回目の借地人一同との会合を町会会館で行った。E社の社員は2名来て、冒頭「内の会社は借地を貸すことを目的にしていない。1年半以内に底地の買取り、もしくは売却の話がまとまらなければ、他に売却する」と脅してきた。組合では「話し合いもしていないのに他に売却するような話はするべきではない」と抗議した。当面、地代の支払いについて本年7月分からの地代はE社の銀行口座に振り込みで送金し、後払いの6月分までの地代は旧地主に支払うことを確認した。E社と賃貸人変更の覚書を7月初めに再度集まり締結する。組合では今後の交渉も組合を通じて行う予定だ。
地主が底地を業者に売却すると、業者は借地人に「買うか売るか」の二者択一を迫り、従前の契約のままでというと2年後に転売しますと公言する会社もある。組合員の中には4回も転売されたケースもあった。
今年に入っても上場企業の不動産会社は隣り合っている組合員の一方の底地を転売した。組合では新地主に対して土地所有権移転の登記簿の提出を要求し、事実確認後、地代の振込をするようにしている。暫くして新地主から振込先の通知が送付された。しかし訪問はなく、今のところ静観するしかない状況にある。
世田谷区に土地を賃借している組合員の厚木さん(仮名)は数年前に旧地主から底地買い業者E社に地主が変わり、借地権を売るか底地を買うか迫られていた。売買は考えていないと答えると、2年位で土地を手放す、新しい地主になると大変ですと言われ、その後E社は底地を売却した。地主変更の通知後間もなく地代増額請求をしてきたが根拠を示さないため、拒否すると調停を起こした。期日に東京簡易裁判所に出向くが、新地主の主張はこの場で地代増額に合意しなければ裁判で鑑定してもらうと主張。合意せず不調に終わり、後日東京地裁から訴状が届いた。そして組合に相談に来た。訴状を見ると賃料増額の根拠が示されておらず、僅か数ページに綴られた訴状で裁判が行われるのか不思議に思った。しかも弁護士に委任することなく本人訴訟をしてきた。厚木さんは組合の顧問弁護士に代理人を委任した。