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2020年3月15日 第631号

賃貸住宅の契約の相談対応研修会
原状回復トラブルのガイドラインと賃貸住宅標準契約書
クロスの修繕6年で1円に
ガイドラインは経過年数が導入

国交省の原状回復をめぐるトラブルガイドライン
国交省の原状回復をめぐるトラブルガイドライン

 株式会社社会空間研究所が国交省の補助事業として毎年行っている「賃貸住宅の賃貸借契約に係る相談対応研修会」が全国9都市で開催され、東京会場は2月13日午後12時から千代田区の全国町村議員会館で開催された。150名の定員一杯となり、東借連から役員3名が出席した。
 研修内容は、(1)原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)の解説、(2)賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版)の解説、(3)民間賃貸住宅に関する相談対応事例集(改訂版)の解説以上で約4時間にわたり、3名の弁護士から講演と質疑応答が行われた。
 原状回復をめぐるガイドラインでは、原状回復について「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意過失、善管注意義務違反。その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、建物の通常使用・経年変化は賃料に含まれるので貸主が負担、賃借人の善管注意義務違反や故意・過失部分は賃借人が負担と分類している。また、借主の退去後に古くなった設備等を最新のものに取り換える等のグレードアップは貸主が負担するとしている。(下図参照)
 また、ガイドラインでは経過年数の考え方が導入され、経過年数の経過割合について耐用年数経過時に残存簿価1円となり、賃借人の入居期間が長くなるほど賃借人の負担割合は減少する。クロス・畳床・クッションフロア等については入居期間が6年で1円になる。

図

賃貸住宅標準契約書の再改定の主なポイントとは

 国のモデル契約書である「賃貸住宅標準契約書」では、原状回復についてガイドラインの考え方に基づいて作成され、別表第5でガイドラインの概要が記載されている。なお、別表第5の最後に「例外としての特約」で、本来貸主が負担すべき原状回復費用を借主に負担とする理由を示して、特約を明記し、貸主・借主の署名・捺印を求めている。
 講師の弁護士は、単に契約書の特約に例えば「乙は退去後、汚れの程度に如何を問わず、指定クリーニング業者にて行う室内クリーニング費用を支払うものとする」と書くだけでは無効となると指摘していた。
 賃貸住宅標準契約書の再改定の主なポイントについては、(1)家賃債務保証業者型が追加。(2)連帯保証人については改正民法に基づき「極度額」を頭記欄に設けた。(3)契約期間内に借主が修繕を行う場合のルールを明記した。(4)賃貸物件の一部滅失その他の理由で賃貸物件が使用できなくなった時の賃料減額の規定が明記。(5)敷金・原状回復・賃借物の全部滅失による契約の終了に関する規定が明記。極度額について金額の基準はなく、国交省は「極度額に関する参考資料」を発表している。


地主より嬉しい通知契約解除を撤回!
組合の支援で無断転貸と増改築問題が解決
世田谷区

世田谷区内の多摩川近辺
世田谷区内の多摩川近辺

 世田谷区内に住む山口さんは地主と意見の対立が絶えず、困っていた。
 前号の記事で、山口さんはリフォームをすると通知したところ建物を無断転貸している、修理修繕、リフォーム程度でも承諾が必要であり、違反行為なので契約解除すると通知があった。
 組合は山口さんと相談し、建物の賃貸は借地人所有で登記もしてあるので自由、土地を転貸しているわけではないので無断転貸には当たらない、リフォームは大修繕や増改築には当たらない、よって契約解除は無効である、もし今後も主張するのであれば法的根拠をお示しくださいと通知書を書いた。
 その通知書を送付して間もなく、地主より回答があり今回の一件はすべて撤回する。今まで通り借地賃貸借契約を継続する旨の通知があった。
 強硬な態度で一貫して同じ主張をしてくると思っていた山口さんは歓喜の声で組合に報告した。
 組合としても解決して良かったと思うが、地主が今後賃料増額等他の請求をしてくるのではないかと注視している。
 しかしあまり先のことは考えず、問題が発生したらすぐに組合に相談するよう伝えた。
 早く地主からの不当な請求から解放されたい山口さんを組合として最大限バックアップし、今後を見守りたいと考えている。


組合の催物とお知らせ

■城北借組「西武デパート相談会」
 4月15日(水)・16日(木)午前11時~午後5時まで4時半受付終了(昼食休憩午後1時~2時)、池袋西武百貨店7階くらしの相談コーナー。連絡・(3982)7654。
■多摩借組「定例法律相談会」
 4月4日(土)午後1時30分から組合事務所。相談者は要予約。連絡・042(526)1094。
■葛飾借組「定例相談」
 毎週水・金曜日の午前10時から組合事務所。連絡・(3608)2251。
■足立借組「第48回定期総会」
 4月26日(日)午後1時20分から足立区学びピア・研修室2。連絡・(6806)4393。
■大田借組「第53回定期総会」
 4月19日(日)午後1時30分から大田区消費生活センター。連絡・(3735)8481。