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2011年4月15日 第529号

住宅政策を私たちの手に

住まいの貧困に取り組むネットワーク2周年の集い
大震災の住宅居住支援強化を
復興公営住宅の建設等で緊急要望発表

東借連第32回定期総会で挨拶する佐藤冨美男会長
高幡台団地の居住者等と映画監督早川由美子さん

 住いの貧困に取り組むネットワーク2周年の集い「住宅政策を私たちの手に」が、3月21日午前10時半から新宿区戸塚地域センターで開催された。3月11日に起きた東日本大震災後で開催が危ぶまれたが、この時期にこそ震災後の住宅支援や対策が重要なテーマになっているとして開催した。参加者は当初の予想を上回る85名が参加した。
 開会に当り、ネットワークの世話人で住まい連代表幹事の坂庭国晴氏より開会挨拶があり、東日本大震災で亡くなられた方々に対し参加者全員で黙祷を行なった。

高幡台団地問題の映画上映

 午前中は、UR高幡台団地が耐震強度不足を理由に取壊そうとしている日野市高幡台団地73号棟の問題をテーマにしたドキュメンタリー映画「さようならUR」の初上映会が行なわれた。上映後、監督の早川由美子さんの挨拶、映画に出演した73号棟の住民、構造設計士や裁判闘争弁護団より、それぞれ挨拶とトークがあった。
 UR(独立行政法人都市再生機構)は、本来であれば建物の耐震改修か耐震建て替えをすべきであるにもかかわらず、建物を解体除去すべきと住民の立退きを求めて、残った7名の住民に対して、現在明渡しの訴訟を東京地裁立川支部に起こしている。73号棟の住民の会の世話人の村田栄法さんは「この問題は他団地や民間賃貸住宅の追出しにもつながりかねない」と語っている。

震災対策で家賃補助が必要

東借連第32回定期総会で挨拶する佐藤冨美男会長
震災対策等でディスカッション

 午後からのディスカッションでは、家賃補助問題とともに震災後の雇用や住宅問題をテーマに自立サポートセンター・もやいの稲葉剛さんの進行役で議論がされた。
 首都圏青年ユニオンの河添誠さんは、「派遣の数が減らされ、長期の失業者が増えている。月払いの仕事では生活が出来ず、日払いの仕事についている若者がいる。半失業・半就労状態で家賃も支払えない。大震災の影響で経済が縮小し、解雇が大量に起きる可能性が高い。停電を労働者にしわ寄せするのはおかしい」と語った。
 住まい連の坂庭さんは、東日本大震災の政府の対応方針の問題点を説明し、住宅・居住支援の抜本的強化として、復興公営住宅の建設と供給、民間賃貸住宅の借上げ方式等による公営住宅の供給、UR賃貸住宅削減方針を撤回し空家の提供、ケア付仮設住宅の建設・供給、民間賃貸住宅の一定期間の無償賃貸と家賃補助の創設等についての緊急要望(骨子案)を提案した。
 会場から、「震災で何か言うことを我慢しなければならないかのような雰囲気があるが、しっかりと自分の権利を主張することが必要だ」との発言があった。

東日本大震災募金のお願い

国に対して住宅・居住支援を要求

 3月11日に発生した東日本大震災は、多くの尊い命を奪い、街を根こそぎ破壊する未曾有の大災害となりました。犠牲となった方々に哀悼の意を表するとともに、被災者の皆さまに対し心よりお見舞い申し上げます。街を復興させるためには長期の期間が必要です。当面、避難されている皆さんへの物心両面の支援が重要となっています。東借連では、全借連の皆さんと共に、震災支援募金を行ないます。同時に、国に対して被災された皆さんの住宅・居住支援の強化を他団体と協力して求めていきます。皆さんのご支援・ご協力を御願い致します。
◎送金先 〒160―0022 東京都新宿区1―5―5 全国借地借家人組合連合会電話03(3352)0448
◎郵便振替口座番号(00170―4―60255)
 備考欄に震災義援金と明記


地震被害で修繕強行

荒川借組の組合員O・Kさん
外壁が剥がれ落ちた
契約書には地主の承諾条項が

放送する住まいるチャンネル
玄関前の外壁が剥がれ落ちたOさん宅

 3月11日に発生した東日本大震災で、荒川借組のO・Kさんから次のような地震被害の報告が組合にあった。
 「我家は、平屋建で築60年が経過し、かなりの部分が傷んでいたため、家の外壁が剥がれ落ち、畳の下の床が落ちたり、ドアの開閉も不自由となったり家の中で随所に被害が出てしまった。その後も大小あわせて何回も余震に見舞われ、家が倒壊するのではと落ち着かなかった。
 最近、修繕と耐震補強工事をしなければと思い、念のため借地契約書を確認したところ、修繕するにも地主の承諾を得るよう明記してあったため、組合に相談した。組合からは、借地人が家の修繕を行なうことは自由であり、地震で建物が全壊しても借地権は存続し、例え修繕や増改築の禁止条項があっても、倒壊前の借地権の存続期間中は家を建替る権利があり、倒壊前と同様な建物を建てるのであれば地主の承諾は必要としないとのアドバイス受け、速やかに家の修繕を行なった」。
 「今後、借地契約期間が満了した時に地主が無断で修繕したことを理由に借地の明渡しを要求してきたとしても、私は堂々闘う決意です」。


借地借学 豆知識

大震災で建物倒壊、借地権は

(問)借地上の建物が東日本大震災のように倒壊・焼失・流失等で滅失すると借地人の権利はどうなるのか。
(答)借地契約が1992年の借地借家法施行前に設定された借地権に関しては借地法7条が適用され、借地権の存続期間が終了する前に地震・火事・台風等による災害によって借地上の建物が滅失した場合でも借地権自体は消滅しません。
 借地法7条は建物が滅失しても建物を再築することが出来ることを規定しています。とくに、災害による滅失の場合は増改築を制限する特約があっても地主の承諾は不要とされています。
 問題は、借地人の建物が滅失している間に地主が第三者に土地を売却してしまった場合です。本来、借地人は借地上の建物を登記しておけば土地所有者がかわっても新所有者に対して自分の借地権を対抗することができるのですが、建物が滅失している間に土地を取得した新所有者に対しては原則的には借地権を主張できません。改正された借地借家法では、建物の滅失の原因を問わずに借地人が建物を特定する事項・建物の滅失の日・建物建築予定等を掲示することによって建物が無くても旧建物の滅失の日から2年に限り新所有者に対抗することが出来る(借地借家法10条2項)と定めてあります。
 大規模災害があった場合は政令で適用地域を定め、罹災都市借地借家臨時処理法が適用されます。今回の東日本大震災でも法務省は臨時処理法の適用を発表しました。「処理法」は借地権の存続期間に関しては建物の再築を容易にするために残存期間が10年以下の場合は一律に政令施行日から10年間に延長されます。また政令施行日から5年間に限り建物が滅失のままでも前記掲示をしなくても新所有者に借地権を対抗することができることになっています。5年以内に建物を再築し登記することが必要です。


組合の催物とお知らせ

■城北借組「西武デパート相談会」
 5月18日(水)・19日(木)午前11時~午後5時(午後1時~2時昼食休憩)まで、西武デパート7階お客様相談室。
 「法律相談」
 5月20日(金)午後2時より要予約。連絡・(3982)7654。
■多摩借組「定例法律相談」
 5月7日(土)午後1時30分から組合事務所。相談者は要予約。
 「第31回定期総会」
 5月29日(日)午後1時15分から東京都国分寺労政会館。総会終了後、第2部学習会「民事裁判と調停の仕組み」講師は組合顧問の山口真美弁護士。
連絡・042(526)1094。
■江東借組「法律相談」
 毎月第2水曜日午後6時から大島総合区民センター。連絡・(3640)4694。
■葛飾借組「定例相談」
 毎週水・金曜日の午前10時から組合事務所。連絡・(3608)2251。
■足立借組「定例相談」
 毎月第2日曜日午後1時から2時、組合事務所。連絡・(3882)0055。
■荒川借組「夜間相談会」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から組合事務所。
 「法律相談」
 毎月第3金曜日の午後7時から組合事務所。相談者は要予約。連絡・(3801)8697。
■北借組「法律相談」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から赤羽会館。相談者は要予約。連絡・(3908)7270。
■世田谷借組「相談会」
 毎月23日午後2時~7時まで組合事務所。連絡・(3428)0828。
■大田借組「借地借家問題講座・相談会」
 4月15日(金)大田区消費者生活センター。4月22日(金)大田文化の森。時間はいずれも午後6時30分から参加無料。連絡・(3735)8481。