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2011年1月15日 第526号

組合員の声がわかる組合に

東借連会長 佐藤富美男

写真 新年明けましておめでとうございます。
 今年は3月に東借連第32回定期総会が開催されることになっています。今度の定期総会は、2年前の前総会以降の活動を総括し、今の情勢にあった組合運動方針と、組合の名前にふさわしい相談活動をいかに構築していくかが問われています。
 昨年は、3月に行われた全借連総会に東借連として初めて連合会組織として参加し、全国の仲間と交流し、東借連の果たすべき役割を参加者一人ひとりが強く感じた全借連総会でした。
 借地借家人組合の運動では、ハウジングプアーと言われている住まいの貧困を様々な団体といかに協力共同の輪を広げ、大きな世論にし、国と自治体の住宅政策を変えていくかが問われていると思います。昨年4月に行われた日本住宅会議・国民の住まいを守る全国連絡会・住まいの貧困に取り組むネットワーク共催の「住宅政策の転換をめざす国会集会」はまさに時節をえた集会だったと思います。また、追出し屋対策会議とともに保証会社問題などに取り組み、野放しになっていた保証会社を規制する法制化するところまで運動を盛り上げることにできました。
 同時に居住差別につながる「家賃滞納者のデーターベース化」の全面禁止をめざし、引き続き運動を強める必要があります。定期借家制度の廃止と借地借家法の正当事由の緩和などの改悪反対を全国連絡会の団体と引き続き借地借家人の声を大きな世論にするために頑張る必要があります。
 このような運動面で借地借家人の声を世論に訴える組合の果たす役割はますます重要になっています。組合が組合員の声をどのように聞き、運動にしていくかがまさに問われる年だと思います。残念ながら前総会以降、品川、西部など一部の組合が定期的に総会役員会を開催しないまま、組合そのものが消えてしまうという重大な事態が発生しています。
 このことを私たちの問題として、組合員の一人ひとりの声がわかる組合づくりをめざし、がんばる決意を表明いたします。


追い出し屋規制法案が国会で継続審議に

定期借家制度に反対する全国学習支援集会(11月13日江東区大島)
追い出し屋対策会議の集会

 臨時国会は12月3日に会期末を迎えた。家賃債務保証業者への登録の義務化や、鍵の交換や家財道具の持ち出しなど借家人に対する悪質な督促行為の禁止を盛り込んだ「賃貸住宅居住安定化法案(追い出し屋規制法案)」は、同3日の衆議院で閉会中審査を決定し、11年通常国会以降継続審議となった。
 同法案に対して全国不動産政治連盟は、昨年11月に規制対象から一定の小規模な個人家主を適用除外にし、滞納家賃の迅速な取立ての仕組みを早期に構築する等4項目の要望事項で12万名余の署名を集め、法案の修正を求めて自民・公明・民主の各党に要請を行なった。
 全国追い出し屋対策会議では、11月に集会を開き、85%の個人家主を禁止の対象から除外すれば規制が尻抜けになってしまうと、11月11日に「個人の賃貸事業者を適用除外とすることに反対する共同アピール」を発表し、東借連・全借連も賛同した。全借連では、11月25日に衆議院国土交通委員と理事45名に、「個人家主を適用除外とすることに反対し、家賃等弁済情報のデーターベース禁止を求める要請書」をFAXで送付した。
 追い出し屋規制法は今年の通常国会で審議される予定だ。


住まいを人権として保障させ本格的な家賃補助導入へ

不況で公営住宅の応募急増
自治体は削減方針

 毎日新聞は「公営住宅、69万人が入居待ち…不況などで急増」(11月17日)と報道した。
 東京では抽選倍率は28倍、神奈川15倍と大都市では軒並高倍率だ。国税庁の調査によると、05年に981万人だった年間給与200万円以下の「低所得者」は、09年には約1099万に増加した。総務省によると、年収200万円未満で公営住宅に入居しているのは約97万世帯で、本来であれば公営住宅の入居階層である民間住宅居住者は340万世帯いるという。
 朝日新聞社が昨年9月~10月に行なった47都道府県と19指定都市に行なった公営住宅の中期的増減方針の調査によると、「公営住宅を削減する」とアンケートに答えた自治体は16府県4市、「増やす」は沖縄県と相模原市のみ、「未定」は北海道、奈良県、仙台市、横浜市。それ以外は28都道府県12市は「現状維持」と回答している。
 「全国の自治体が公営住宅から撤退している背景に、国の公営住宅関連予算の大幅な削減がある。09年度当初予算額は2399億円。10年前から4割減った」(11月28日朝日新聞)と報道している。

市場重視で居住貧困が拡大
 戦後すぐの1951年に制定された当時の公営住宅の立法趣旨では、憲法25条に基づき健康で文化的な生活を営むことできる住宅を国民に保障するための制度として、社会福祉政策の位置づけがされていた。1950年代までは公営住宅など公共賃貸住宅が全住宅の2割近い割合を占めていたが、60年代以降民間の住宅建設が活発になると同時に公共住宅の建設数は必要最低限に抑制され、日本の住宅政策は民間が自力で住宅を建設することを基本とする方向に大きく転換した。
 さらに、90年代以降の市場重視の新自由主義の住宅政策によって、「民でできることは民で」と、民業を圧迫させる公共住宅政策の解体、圧縮の方向に向かい、借家人の居住権を保護する借地借家法も規制緩和され、追い出し自由の定期借家制度が2000年に創設された。しかし、経済の停滞や雇用の悪化によって、市場重視の政策は、市場から占め出された人々に、居住貧困と居住格差をもたらした。

家賃補助創設で住政策転換
 下の表は欧米主要国の家賃補助制度の資料だ。イギリスでは全世帯の17・8%、460万7千世帯、フランスでは614万5千世帯、全世帯の22・8%が家賃補助を受給している。イギリスでは全額国庫負担で2兆6535億円(GDP比1・4%)、フランスでは1兆8847億円で国庫負担分は6256億円で雇用者の負担分も3158億円を占める。日本との違いは、「住まいは人権として保障する」することが法律で定められている。今年こそ日本でも家賃補助制度の本格的導入の年にしたいものだ。


老朽借家の明渡し!

周辺一帯をマンション業者が地上げ
家主が借地権を売却
組合がマンション業者と交渉
豊島区

 豊島区長崎に住む渡辺さん(仮名)は周辺一帯が平屋建が多い借地上の一軒家の建物を借りて30数年経過した。建物も相当老朽化してきたが、まだまだ住めると思っていた。ところが、昨年の8月に家主から老朽化を理由に明渡しを請求された。突然の通知に驚いて家主であるAさん(東北地方に居住)に問いただしたところ、家主は「周辺一帯をマンション業者が地上げし、私も借地を売買してしまった。10月までに立ち退いてもらえないか」という話であった。地元の区議会議員に相談したところ、「こういう問題は借地借家人組合に相談するのが一番いいので紹介します」と言われ、組合に相談に来た。
 「住み続けるか、それとも明渡しの条件によっては明渡しに応じる用意があるのか決断し、そのうえで話合いに応じましょう」とアドバイスし、高齢でもあるので組合を窓口にして交渉することにした。
 最初の家主の条件は家賃の6カ月分を提供するというもので、交渉を中断していた。12月に入り底地を買いとったマンション業者から話し合いの申し入れがあり、家主も遠方でもあることも考慮し話し合いに応じることにした。
 その結果、来年の明渡し期限を短縮することによって家賃の数十カ月分の補償金を条件に明渡すことに合意した。
 渡辺さん「一時は睡眠不足で体がどうなることやらと考えていました。これで安心して正月を迎えることができました」と語った。


地上げ会社が倒産中に再建

大田区

 戦後の日本の復興を支えた工業地帯であった、大田区本羽田も今はマンションが連立する地域となった。ここに、約60坪を賃借している元木(仮名)さんは、5年前地上げされて土地を買うか、借地権を売るかとの執拗な請求に組合員であることを宣言して対抗する。2年後には更新料と地代増額請求されるが、組合を介して拒否し地代は指定の口座に振込みを継続する。さらに、1年後地上げ業者(地主)が東京地裁に民事再生手続(倒産)開始を申立。振込口座閉鎖、地主の所在不明となり、地代の供託を開始する。2年経過した昨年10月、組合知合い不動産業者を介して地主が接触を図って来た。地主に会うと、民事再生手続開始の申立中に資金の援助者が現れ、会社(地主)は存続し事業は継続・再開されたとのことで、地代の精算と今後の支払についての申し出があり、会社(地主)の履歴事項証明書及び土地の謄本を提出させて、貸主であることを確認し供託地代の精算、今後の支払先の口座を確認合意した。
 過去からの課題であった地代増額は、固定資産税評価替え後の5月に協議する。更新料は支払わないので請求を撤回し、地代確定時に更新の賃貸借契約書を作成することで合意が出来た。


組合の催物とお知らせ

■城北借組「西武デパート相談会」
 2月16日(水)・17日(木)午前11時~午後5時(午後1時~2時昼食休憩)まで、西武デパート7階お客様相談室。
 「無料法律相談会」
 2月18日(金)午後2時から組合事務所。相談者要予約。連絡・(3982)7654。
■多摩借組「定例法律相談」
 2月10日(土)午後1時30分から組合事務所。担当は山口真美弁護士。相談者は要予約。
■江東借組「法律相談」
 毎月第2水曜日午後6時から大島総合区民センター。
■葛飾借組「定例相談」
 毎週水・金曜日の午前10時から組合事務所。連絡・(3608)2251。
■足立借組「定例相談」
 毎月第2日曜日午後1時から2時、組合事務所。
 「第40回定期総会」
 3月27日(日)午後1時30分から東京土建足立支部の会館で(予定)。連絡(3882)0055。
■荒川借組「夜間相談会」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から組合事務所。
 「法律相談」
 毎月第3金曜日の午後7時から組合事務所。相談者は要予約。連絡・(3801)8697。
■北借組「法律相談」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から赤羽会館。相談者は要予約。連絡・(3908)7270。
■世田谷借組「相談会」
 毎月23日午後2時~7時まで組合事務所。連絡・(3428)0828。
■大田借組「第45回定期総会」
 3月27日(日)午後1時から大田区消費生活センター。連絡・(3735)8481。
■東借連「第19回理事会」
 1月25日(金)午後6時、豊島区東部区民事務所。