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住宅研究交流集会で報告する中島明子氏 |
日本住宅会議・住まい連(国民の住まいを守る全国連絡会)・住いの貧困ネットの共催団体は、10月19日、東京都内で「自治体住宅政策のあゆみとこれから〜居住保障の実現」をテーマに2024年住宅研究・交流集会が開催されました。
はじめに、坂庭国晴住い連代表幹事より、「地方自治体の住宅政策について、今日の地方、地域の住宅問題をふくめ幅広く考え、議論、交流を行っていきたい」と主催者を代表し、開会の挨拶がありました。
集会ではコーディネーターとして、国立保険医療科学院上席主任研究官の坂東美智子氏が紹介され、続いて岸本聡子東京都・杉並区長からとメッセージ文が紹介されました。中島明子氏(和洋女子大学名誉教授で目黒区住宅政策審議会会長)が「自治体住宅政策の過去、現在、未来―住宅政策から地域居住保障政策への道」と題した講演では、未来に向い自治体住宅政策の今後について「独立した住宅福祉課・部などを作る必要がある」と強調しました。
講演IIでは、川田菜穂子氏(大分大学準教授、大分市住生活基本計画策定委員)が「少子高齢化・人口減少が顕著に進む地方自治体の住宅問題と住宅政策」と題して講演を行い、大分市の空き家(集合住宅含)、公営住宅の現状から住宅問題を考え「小規模自治体では住宅政策を広域で連携、幅ひろい視点からの自治体住宅支援体制が必要」など具体例を示しました。コメンテーターの大本圭野氏(元東京経済大学教授、日本住宅会議元理事長)より「わが国における自治体住宅政策の検証」について、「地方分権というけれど財政の裏付けもない状況は問題。住宅政策に財政権の委譲が必要。真の地方分権、地域主権が必要である」とコメントがありました。
その後集会参加者オンライン参加含)からの質疑、討論が行われ、「国政選挙中でも地方自治体の選挙でも首長選挙でも住宅政策の議論が全くない。これからの事を考えた自治体住宅政策の議論を議会の中にまで広げ考えていく必要がある」など意見がありました。研究集会は40名(オンライン参加含)全借連から綾達子事務局次長がオンライン参加しました。
岸本杉並区長からのメッセージ
憲法25条は第1項で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と生存権を定めており、住まいがなければ、健康で文化的な最低限度の生活を送ることはできません。住宅は誰もが必要とするもので、公共性が極めて高いにもかかわらず、現代社会では個人による所有が推奨され(私有化)、賃貸については需要と供給の市場原理が適用され(市場化)、不動産は投資の対象となっています(金融化)。これを当たり前としてはいけないと私は思っています。住宅の公共性をにわかに取り戻すことはできませんが、命と暮らしを守る最前線にある自治体にできることはあります。選挙公約では、住まいを失った人や失いかけている人に対して、安定した住まいの確保を最優先とする「ハウジングファースト」の理念にそった支援をおこない、民間賃貸住宅に暮らす低所得者を対象にした家賃補助制度を創設することを掲げました。「住むことは権利だ」という視点に立つと、住宅政策は大きく変わってきます。杉並区は他区と比べて住宅全体に占める公営住宅の数が少なく(23区中19番目)、入居希望者の倍率は5倍です。本来なら公正な価格で安心して住むことができる公営住宅を増やしていかなければいけないのですが、新たな公営住宅の建設が困難な中で、住宅弱者を守る知恵を絞らなくてはなりません。
本日の集会が、「住むことは権利」という視点にたった住宅政策のあり方を具体的に話し合う大事な場である認識しています。皆さまの経験、知見、政策提案が住まいを取り巻く公共政策の立案に活かされること、今日の活発な議論を期待申し上げ、連帯のご挨拶とさせていただきます。
2022年10月19日 杉並区長 岸本聡子 |