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2024年9月15日 第678号


公社住宅の最高裁判決に学ぶ
住まい連など住宅団体が緊急学習会
公社住宅にも借地借家法が適用
公社規則に基づく家賃値上げ否認


講演する石畑晶彦弁護士
 住まい連など住宅3団体の共催で、緊急学習会・神奈川県公社賃貸住宅の最高裁判決「最高裁判決の意義と今後のたたかい」が9月3日午後3時から練馬区ココネリ会議室で開催されました。
 住まい連代表幹事の坂庭国晴氏の司会で開会され、公社住宅の自治会の住民の代理人として裁判を闘った馬車道法律事務所の石畑晶彦弁護士より、最高裁判決に至る経過、地裁・高裁判決の問題点、最高裁判決の重要な意義とその内容、判決の波及について詳しく報告がされました。
 原告である住民8名は公社法施行規則16条に基づく賃料増額が施行規則第2条に基づかない増額ではないかということを発端に、弁護士に相談がありました。公社法施行規則第16条「第1項賃貸住宅を新たに賃借する者の家賃は、近傍同種の住宅の家賃と均衡を失しないよう、地方公社が定める」。「第2項地方公社は、賃貸住宅の家賃を変更しようとする場合においては、近傍同種の住宅の家賃、変更前の家賃、経済事情の変動等を総合的に勘案して定めるものとする。この場合においては、変更後の家賃は、近傍同種の住宅の家賃を上回らないように定めるものとする」。
 住民が住む住宅は築53年を経過し、設備も劣化し旧型の風呂釜を使用し、健康被害もガス会社から注意喚起を受けています。しかし、公社は新しい設備に更新されている部屋を基準として、鑑定調査し、賃料が決定されていました。
 地裁・高裁判決では、「被告において、家賃審議会の答申を受けて、市場家賃鑑定を経て、激変緩和策を取った上で定めるものとされ、一般の賃貸借のように、賃貸人である被告と賃借人である各原告との間の合意によって定めることはできず、原告らが主張する適正賃料は公社法及び施行規則等の法令の規定根拠に基づかないものである」と住民側の家賃減額の主張を退けました。
 住民は最高裁に令和4年5月に上告し、2年が経過する令和6年5月に弁論期日があり、同年6月24日に判決が言い渡されました。最高裁判決は地方公社法の目的について「地方公社は、住宅の不足の著しい地域において、住宅を必要とする勤労者に居住環境の良好な集団住宅を供給し、もって住民の生活と安定と社会福祉の増進に寄与することなどを目的とする法人であり」とし、地方公社の上記業務として賃借人との間で設定されている公社住宅の使用関係、私法上の賃貸借関係であり、法令に特別の定めがない限り、借地借家法の適用があるというべきである」と公社住宅にも借地借家法が適用されると初の判断が下されました。
 さらに、「公社住宅の家賃の変更に係る形成権を付与する旨の定めをすることが、公社法24条の委任の範囲に含まれると解されない」と、公社施行規則に基づき家賃を一方的に値上げすることは認められないと画期的な判決を下しました。今後の運動として、最高裁判決の内容を広報することが必要と締めくくりました。

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