生活困窮者、高齢者、障害者、ひとり親世帯などが住宅の確保が困難な状況に置かれています。住まいは安心して生活を送るための基盤にもかかわらず、高齢者や障害者に対して約7割の家主が拒否感を抱いているとの調査結果もあり、実際に高齢者が民間の賃貸住宅の入居を拒否される事例が多数発生しています。政府は入居を拒否される人達を支援するための検討会を発足させ、秋には具体策が発表される予定です。
国土交通省の発表によると、2005年に約386万世帯だった65歳以上の単身高齢者は、2030年には約800万世帯に迫る見通しです。単身高齢者や低額所得者が住む賃貸住宅の多くが老朽化しており、居住支援法人には立退き相談が転居相談として多数寄せられています。2017年に改正住宅セーフティネット法が施行され、住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅登録制度が始まり5年が経過しますが、今年3月末で登録住宅は84万件を突破しましたが、要配慮者専用住宅は全国で僅か5284戸と登録住宅の0・6%しかありません。家賃低廉化補助を実施している自治体は40、家賃債務保証料補助等を実施している自治体が29、改修費補助が35という悲惨な実態です。
セーフティネット登録住宅の家賃の調査(令和4年12月末時点)によると、全国で家賃5万円未満の住宅が19%で、3万円未満では0・5%しかなく、東京都では3万円以上4万円未満が0・2%、4万円以上5万円未満が0・5%しかありません。一方10万円以上の物件は23・6%を占め、これでは低額所得者や高齢者等が住める物件はなく、全くセーフティネットが機能していないのが実態です。唯一機能したのが、マッチング・入居支援を行う居住支援法人の指定が668者、居住支援協議会は129協議会が設立されました。居住支援活動には補助金が支払われていますが、居住支援事業が赤字の法人が5割を超え、さらなる財政的な支援が必要です。
検討会は国交省、厚労省、法務省の合同で設置され、(1)住宅確保要配慮のニーズに対応した住宅を確保しやすくする方策、(2)要配慮者が円滑に入居でき、かつ適切な支援につなげるための方策、(3)入居後の生活支援まで含めた要配慮者に対する居住支援機能のあり方、(4)大家等が安心して貸せる環境整備のあり方以上が検討項目に上がっています。絵にかいた餅にならないためには、家賃補助制度の実施、公営住宅の供給の促進等の施策の検討が不可欠です。 |