3月に閣議決定された「住生活基本計画」では、住生活をめぐる現状の課題に対応するために、8つの目標設定し、目標5では「住宅確保要配慮者が安心して暮らせるセーフティ機能を整備」として、基本的な施策として公営住宅の計画的な建て替えとともに、「緊急的な状況にも対応できるセーフティネット登録住宅の活用を推進。地方公共団体のニーズに応じた家賃低廉化の推進」が盛り込まれました。
平山神戸大学大学院教授は国交省の登録住宅のインターネットに掲載されている「セーフティネット住宅情報システム」から、住宅セーフティネット登録住宅の実態について分析し、日本住宅会議会報2021年111号に発表しました。
要配慮者を拒ばまない住宅
登録住宅には要配慮者のみを対象とする「専用住宅」と、要配慮者を拒まず、同時にそれ以外の一般世帯をも受け入れる「一般住宅」があり、家主は受け入れ可能な要配慮者として、高齢者、子育て世帯のみと範囲を限定することができる。専用住宅に登録すると、国や自治体から改修費の補助や家賃低廉化補助(家主に対して)が受けられる。改修費は国費限度額が50万円(一戸)、国3分の1、地方3分の1の補助(限度額50万円)が受けられる。国の改修費補助を受ける場合には、公営住宅に準じた家賃額以下であるとされています。家賃低廉化補助は国2分の1地方2分の1で最高4万円まで補助があり、低廉化前の家賃は近傍同種家賃と均衡をした家賃とされ、10年間は支援の継続が求められています。その他床面積等の基準があります。
大東建託住宅の98%入居中
しかし、表1のように登録住宅21万7308戸(2月5日現在)の実に85%は大東建託の物件で、ビレッジハウスが9・8%を占めています。大東建託は土地所有者にアパートを建てさせ、それを借り上げて転貸するサブリースビジネスを展開する会社です。昨年まで低迷していた登録住宅が大東建託の物件の大量登録で国の目標を一気に超過達成しています。さらに問題なのは、表2のように大東建託の物件は98%が入居中の物件で、専用住宅は0件です。要配慮者が入居可能な物件は、全国で2819戸と僅か0・9%しかありません。これで、果たして登録住宅の活用ができるのか甚だ問題です。
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