市民団体からの要望や給付窓口の状況を踏まえ、厚生労働省は12月8日に「住居確保給付金」の支給期間を3か月延長し、最長12か月とする方針を決定した。「これで家で冬を越せそうだ」と安どした家庭もあるだろう。
しかし、長引く経済活動の低迷により、所得回復の見込みがもてない世帯が増えているのは想像に難くない。新型コロナの前にあった貧困の再発見というステージは過ぎ去り、今や貧困は政策的に対処すべき重要課題である。一時的な現象であるととらえるのは楽観的過ぎるだろう。したがって、このような小さな追加的措置の繰り返しで貧困問題に対処できるとは思えない。
そもそも家賃の支払いが困難になるのは所得に対して家賃が高すぎるからである。これは一般的な生活リスクであるため、欧米先進国では戦後、家賃補助制度が創設された。イギリスでは低所得層(第I五分位)の31・5%、平均的な所得層(第III五分位)の10・8%が家賃補助を受けているし、フランスでは低所得層の55・7%、平均的な所得層の22・2%が受給している(2018年OECD)。
ところが、日本にはそれらに匹敵する家賃補助制度がなく、極めて低所得かつ貯蓄もほとんどない世帯が先述の住居確保給付金または生活保護の住宅扶助を受給できるに過ぎない。住居確保給付金は就労支援を受ける人向けの制度でしかない。
低所得の世帯でも安定的に住居に住めるようにするのが家賃補助制度である。土地住宅を個人の資産形成や投資対象と捉える考え方とは一線を画し、人間らしい生活を守る住宅保障の考え方に基づく家賃補助制度の導入が望まれる。 |