住宅会議シンポジウム(12月10日) |
日本住宅会議の総会とシンポジウムが12月10日の午後、台東区民館で開催されました。
総会では、塩崎賢明理事長より2016年の活動報告と2017年度活動方針が提案され、東日本大震災の復興の遅れの上に、熊本地震や台風10号など深刻な自然災害被害による住宅難民が全国で発生していて、被災者の生活再建・住宅再建のための復興法制度の整備と促進の取り組みが大切と強調されました。
平山洋介教授が基調講演
シンポジウムでは、はじめに前千葉県知事・元参議院議員の堂本暁子氏が「災害多発時代に求められる女性・多様性の視点」と題して記念講演を行いました。続いて神戸大学大学院教授の平山洋介氏が「住宅セーフティネットを考える」とのテーマで、基調講演を行いました。
平山氏は住宅セーフティネットという考え方は、社会の中のごく一部の人を技術的に取り上げ上げるもので、90年代以降のネオリベラリズム(新自由主義)の政策とセットで出てきている特殊な技術論であると指摘。日本の住宅システムは「保守主義」と「自由主義」が混在しており、政府が責任をもって住宅を供給する北欧型の「社会民主主義」とは大きく異なっている。OECD諸国で家賃補助をやっていないのは日本など一部の国だけであり、日本は家族や会社が大きな役割を果たしている。
戦後、持ち家が大衆化され持ち家社会が形成されたが、このまま持続するか疑わしい。様々なデーターを示しながら、住宅建設戸数が落ちこむ中で90年代から政府の住宅金融公庫が住宅の供給を支え、2000年代に入り銀行の住宅ローンが支えるようになった。この結果、住宅ローン残高が急増している。しかし、所得デフレとキャピタルロスによって負債が増えても住宅・土地の資産価値は90年代以降急激に落ち込んでいる。今後、住宅は階層化を強め、持ち家世代から若者などは「賃貸世代」か「親の家世代」に変化していることが指摘されました。
限定されたセーフティネット
続いて大阪市立大学研究員の葛西リサ氏が「母子世帯の居住貧困」について、住まいの改善センター理事長の坂庭国晴氏が「新たなセーフティネット住宅について」の経過・特徴・課題について報告。政府のセーフティネット住宅施策は、住宅困窮者をごく一部に限定し、入居者の選別の問題も起こるなど多くの問題点と弱点があると指摘しました。 |