基調報告する増田尚弁護士 |
民間借家人の置かれている現状
民間賃貸住宅は1458万戸で、住宅全体の約24%を占めていますが、公共・公営賃貸住宅の割合が著しく少なく、民間借家の85%が個人の賃貸人で、大規模修繕計画もなく、劣悪な住環境に置かれています。
平成25年の住宅統計調査で、借家の空き家は429万戸で約9割が共同住宅、特に築30年前後の空き家が目立っています。
住宅を確保できない弱者である住宅確保要配慮者を食い物にする悪質業者(追い出し屋、囲い屋、脱法ハウス、無届介護ハウス等)が急増し、住まいは商売道具にされ、公的責任があいまいなまま野放しにされています。
賃貸住宅契約をめぐる諸問題
原状回復問題は平成17年の最高裁判決で原状回復特約が市場から放逐されています。標準契約書やガイドラインの周知徹底でトラブルの解決も容易になっています。
一方、更新料や敷引きなどの一時金は、平成23年の最高裁判決で特約を無効にすることは厳しく、最高裁判決をどう克服するか課題になっています。
賃貸管理業と家賃債務保証業について
管理業者も保証業者も法的規制がなく、管理業者は任意の登録制で国も検討委員会を発足しています。借家人に対する滞納家賃の取り立て行為などは弁護士法違反行為になります。
家賃債務保証業も賃借人の委託を受けて保証人の代理を行う業務にもかかわらず、賃貸人に代わって家賃を督促したり、追い出し行為をすることは非弁禁止の趣旨に抵触し、「利益相反」の問題にもなります。
ブラック家主問題
個人家主が建物の管理ができなくなる中で、賃貸住宅を買いあさる不動産業者が増えています。多くが買った途端に明け渡しを求める悪質な事例が多く、共同住宅に残っている借家人は移転が困難な人たちばかりです。
住宅確保要配慮者に対する家賃補助、公的保証など賃貸住宅における公的な役割を発揮させることが重要になっています。 |