福祉国家から遅れている日本
イギリスでは住宅手当が選挙の争点に
基調講演する小玉徹大阪市立大学大学院教授 |
日本住宅会議・住まい連・住まいの貧困に取り組むネットワークの主催によるシンポジウム「住宅政策の改革を問う〜家賃補助、公共住宅、住まいの貧困」が3月7日午後1時30分から日本教育会館で開催され65名が参加しました。小玉徹大阪市立大学大学院教授より「家賃補助はなぜ必要なのか」とのテーマで基調講演が行われました。小玉教授は、ニューヨーク・イギリス・韓国の住宅運動の活性化について指摘。イギリスでは住宅手当が年金に次ぐ大きな支出になり、同手当が選挙の争点になっている。日本と韓国では労働市場の非正規と正規の分断など格差の中で、住宅手当もなく、福祉国家から大きく遅れていると発言。
イギリスやオランダなど欧州では、民間賃貸住宅市場に家賃統制をかけながら、公的な住宅の建設と共存しながら、民間賃貸住宅の水準を上げて、最後に住宅手当を入れていると指摘。従って、公的住宅と民間賃貸との質の格差もなく、各国では所得に占める家賃水準を引き下げることがより重要な政策課題になっていると。生活保護費の住宅扶助費は、ワーキングプア層にも使えるように単給化すべきであり、家賃補助こそ貧困への対策として重要であると強調しました。
続いて、前田昭彦・都留文科大学教授から「住宅政策とベーシックインカム」、植田芳博・社会構想研究所研究員より「借上げ公営住宅の問題」、小田川華子・横浜国立大学非常勤講師より「住まいの貧困の実態と打開策」について報告がありました。植田氏は、自治体においては公営住宅の直接建設方式の供給より財政負担が少ないことで民間住宅の借上げによる供給を強めているところがある一方で、借り上げ期間の満了による入居者の退去等の問題点を指摘しました。小田川氏は住まいの貧困の打開策として、民間住宅ストックを活用し、公的介入により低家賃で困窮者を排除しない一定の質を保った賃貸住宅の供給と家賃補助制度の導入等が提言されました。 |