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なぜ、いま自由にモノを言えなくなる社会なのか
弁護士 枝川充志

 先の参議院選挙で自民党が圧勝し、改憲を進める勢力が多数を占めるようになりました。いよいよ本格的に憲法改正が政治スケジュールに位置付けられることになります。そうである以上、様々な表現媒体をつかって憲法の意義や改憲の問題性についてきちんと発言し討議していく必要があります。
 しかし自民党の改正草案を見ると、今後そのような発言を封じることを可能にする規定が新設されています。具体的には表現の自由の条文です。
 自民党草案では、現行憲法21条1項とほぼ同じ条文である「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する」に加え、2項を新設して「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」との規定を設けています。この規定が意味するところは何でしょうか。
 これまでの連載にもあったように、憲法は本来国民の自由を保障するため国家権力に対して縛りをかけるものです。そのために自由を保障する種々の規定をおいているのです。
 しかしこの条文は違います。国民の自由、すなわち人権に制約をかけようとしているのです。表現の自由は人間の尊厳にかかわる人権とされ、また民主政治に不可欠の人権とされています。それは、表現することが人間の本質であり、また民主政治において十分に議論をたたかわせることが不可欠と考えられているからです。そのため表現は自由でなければなりません。しかし自民党草案では、このような重要な人権を憲法で制約しようとしているのです。
 自民党の「日本国憲法改正草案Q&A」で「『反国家的な行動を取り締まる』ことを意図したものではありません」としています。しかし「公益」や「公の秩序」を害する場合とはいったいどんな場合でしょう。原発反対やTPP反対を叫ぶデモ行進をなどをして、時の政権の政策や方針に反対するとしましょう。時の権力者が原発再稼働やTPPを進めるようとしている場合、そのようなデモは「公益」に反する活動とされ禁止される恐れがでてきます。官邸前で抗議活動をすれば人がふくれあがり交通秩序が乱れる、だから「公の秩序」を害するとして取締りを受けかねません。憲法がこのような制約を認めることになるわけですから、対抗するのは極めて困難となります。
 いま、自由にモノが言えない社会をわざわざ作り出す必要がどこにあるのでしょうか。
 戦前、私たちは言論が制約された時代を経験しています。それがいかなる悲劇を招いたか歴史上明らかです。「公益及び公の秩序」によって表現の自由を制約することはまさに時代を逆行させるもので、決して許してはなりません。
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