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自民党改憲草案の危険性
自由法曹団事務局次長
弁護士 瀬川宏貴

 7月の参議院選挙で憲法改正が争点となっており、自民党はじめ改憲政党は、憲法改正を声高に主張しています。それでは彼ら改憲政党が目指すのは、どのような憲法であり、どのような国家なのでしょうか。昨年4月には、自民党、みんなの党、維新の会などから改憲案が公表しています。この稿では、自民党の改憲草案「日本国憲法改正草案」の内容をご紹介してその目指すものを明らかにしたいと思います。
 自民党の改憲草案の特徴は、大きく言って、三つあります。最大の眼目は、憲法9条を改定して、日本を米国とともに「海外で戦争をする国」に変えることです。これが第一の柱です。自衛隊を国防軍とし、「国の交戦権は、これを認めない」と定めた日本国憲法9条2項後段を削除して、戦争ができる国に変えようとするものです。
 第二の柱は、憲法の性格を変えることです。近代憲法の本質は、個人の権利を保障するために、国家権力を制限することにあります。つまり、憲法の本来の役割は、国民の権利を保障するために、国家権力を縛ることにあります。しかし、「改正草案」は、これとは逆に、国民の権利を公益を理由に大幅に制限し、国民に国防義務、国旗・国歌の尊重義務などを課すことによって、国民を縛る憲法に変えようとしているのです。例えば、自民党の改憲草案では、「公益及び公の秩序」という日本国憲法にはない曖昧な規定を根拠に国民の人権を制限できるとしています。また、日本国憲法では、憲法の本質が国家権力を制限することにあることの具体化として公務員にのみ憲法を尊重し擁護する義務が課せられていますが(憲法99条)、自民党の改憲草案では、公務員より先に国民に憲法尊重擁護義務が課せられています。
 第三の柱は、国民の国家への統合を図るということです。「海外で戦争をする国」は、必然的に、戦争国家体制への国民の動員と反戦・平和運動に対する沈黙を要求します。「改正草案」は、天皇の元首化、国旗・国歌の尊重義務、家族の強調などにより、国民の国家への統合を図ろうとしています。例えば、自民党の改憲草案の前文は、「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって」という文言から始まります。そして、日本国憲法にある政府により戦争の惨禍を起こしたことへの反省、国民の平和的生存権の規定を全て削除しています。
 このように自民党の改憲草案の中身を見ていけば多くの国民にとって歓迎しないものであることは明らかです。
 1人1人がその危険性を広めていくことが改憲を許さないために重要であると思います。
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