定期借家制度の拡大肯定しない
全国連絡会と今後も情報交換確認
一月十四日、借地借家法改悪反対全国連絡会(以下「連絡会」)は、法務省民事局参事官室と借地借家法見直しをめぐり懇談するため法務省を訪問しました。
当日、法務省民事局参事官室からは、局付検事の斎藤恒久氏、遠藤啓佑氏両氏が応対しました。
国交省の動きに対し、意見交換
懇談会は、はじめに「連絡会」担当事務局の船越康亘全借連副会長から「借地借家法見直し推進派が国土交通省などへ見直し促進の圧力を強めている。国土交通省は、公的賃貸住宅に定期借家制度の適用を進めている。国土交通省のような動きに対して法務省のこれまでの対応や考え方について」の説明を求め、率直な意見交換をしたいと懇談会の目的について述べました。
ついで参加団体から、「規制改革会議以後、UR住宅定期借家制度を適用する」(全国自治協)「定期借家制度の成立過程で公営住宅には定期借家制度は適用することはないと建設大臣が答弁している。しかし、国土交通省は東京都、大阪府などの公営住宅に適用したことを容認している。」(全国公住協)「貧困ビジネスに悪用されている事例はあるが、民間借家市場にはほとんど普及していない。裁判所が耐震強度不足や老朽化を理由にした明け渡し判決を下している事例が相次いでいる。借地借家法の正当事由見直しの先取りではないか」(全借連)など、借地借家法や定期借家制度をめぐる現状を説明しました。
法務省の態度 一貫している
法務省からは、斎藤氏が、「行政刷新会議規制制度に関する分科会の検討項目に対する回答」(別項参照)の法務省見解方針になんら変更はなく、閣議でも確認されている。法務省の態度はこの方針で一貫しており、借地借家法の見直しは検討していない。」と基本的態度を明らかにしました。
公営住宅は定期借家不適当
その後、双方が率直な意見交換を行い、その中で、「耐震強度不足が明け渡しの正当事由の基準とはならない。建物の老朽化は朽廃との最高裁判決が生きている。」と正当事由の拡大解釈に一定の見解を示しました。また、「公共賃貸住宅へ定期借家制度を適用することについては、法務省のこれまでの方針とは考えが異にする」述べ、「連絡会」側は、資料を提供し、「定期借家制度が公営住宅法からみても不適当である。」との意思表示を示すよう要請しました。
今後の情報交換を確認
法務省からは、「今後とも情報交換の機会をつくり、具体的な資料の提供を歓迎する」との要請されました。
行政刷新会議規制制度に関する分科会の検討項目に対する回答要旨
*規制改革要望・賛成の意見等
建物の賃貸人が更新拒絶・解約申入れを行なう場合の正当事由を拡大し、建物の老朽化や耐震性、再開発を理由とした建替の事由等の法改正により明記し、その正当事由とすべき
*法務省からの回答
「建替が決議されたマンションにおける借家人の建物明け渡しについては、正当事由制度が建替事業の進捗を阻害しているとの立法事実は認め難く、一方で、建替の必要性等を常に正当事由とした場合、高齢者や零細企業等、正当事由により保護されるべき借家人が一方的に立ち退きを強要されることになり、その保護の要請に反すること、正当事由という柔軟な判断枠組が硬直化することとなり、借家人との適切な利害調整を図ることができなくなることなどの問題が生じるため、現行の正当事由制度を維持することが適当と考える。」
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