政府の行政刷新会議の規制・制度に関する分科会(分科会会長・大塚耕平・内閣府副大臣)は、6月15日に第1次報告書をまとめました。
検討の中間段階で対処方針の1つとして借地借家法における正当事由制度の明示(建物の老朽化、耐震性)を規制改革の検討事項に掲げ「借家人保護の配慮を十分に行なった上で、建物の老朽化、耐震性、再開発等を理由とした建て替えの必要性がある場合において、借家人から円滑な明渡しを受けることを可能とする方策について、住宅・都市行政を所管する国土交通省と密接な連携の下、検討し、早期に結論を得る」。
また、「マンションの区分所有法の建替え決議があったことなどの一定の要件を備えた場合には、借地借家法第28条を適用せず、期間途中でも賃貸借契約を終了させることができる措置を講ずるなどの方策を検討し、一定の結論を得るべきである」との対処方針を打ち出しました。
法律を所管する法務省は「(老朽化・耐震性による)建て替えの必要性等を常に正当事由とした場合、高齢者や零細企業等、正当事由により保護されるべき借家人が一方的に立退きを強制されることとなり、その保護の要請に反すること、正当事由という柔軟な判断枠組みが硬直化することとなり、借家人との適切な利害調整を図ることができなくなるなどの問題が生ずるため、現行の正当事由を維持することが適当と考える」と回答し、規制改革要望・意見に対して「対応困難」と拒否しました。結局、正当事由の見直しについての法務省との合意は得られず問題提起するにとどまりました。
今年4月に日本経済団体連合会(経団連)は、「豊かで活力ある国民生活を目指して〜経団連成長戦略2010」の「成長を阻害する規制の例」として、「老朽化した建築物の建替え促進」の中で「借地借家法における正当事由制度の見直し」、「定期借家制度見直し」などの要望を発表し、規制・制度改革に関する分科会について、「精力的な調査・審議を期待する」、「わが国経済を活性化する様々な課題に果敢に挑戦し、改革を断行すべき」として大企業の事業活動を行う上で阻害する規制を見直すよう求めています。
今回の正当事由の見直しに関し経団連は要望理由の中で「新成長戦力(基本方針)(平成21年12月30日閣議決定)でも『老朽化し、温室効果ガスの排出や安全性の面で問題を抱えるオフィスビル等の再開発・建替えや改修を促進するため、必要な規制緩和措置や支援策を講じる』とされていることから、政治主導により早急に検討し、措置すべきである」と、担当課として法務省民事局参事官室に対して圧力をかけています。
経団連は、消費税の引き上げ、法人税の引き下げの早期実施を提言し、参議院選挙での菅首相の突然の消費税増税発言も自民党の消費税10%増税公約も実は経団連など財界・大企業の要望に沿ったものです。菅民主党政権が財界・大企業の圧力に屈しないよう借地借家法改悪反対の運動を今まで以上に強化することが重要です。
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