そもそも借地権とはなにか―東京地方裁判所平成二二年三月二五日判決
借地権は、「建物の所有を目的とする」地上権又は土地の賃借権といいます(借地借家法第二条一項)。「建物の所有の目的」でなければ、借地借家法の適用がなく、民法の賃貸借になるので、借地借家法の法定更新等の保護は受けられません。事案は、契約書には「鋼材及び駐車場」と書かれていましたが、「プレハブ構造の仮設建物」がありました。判決は「借地権ではない」として次のように判断をしました。「被告が設置した仮設建物も、いわゆるプレハブ構造のものであり、撤去も容易である上、建物の登記を経由しておらず、本件土地の所有権を取得した者に対して対抗要件を備えていなかったこと、本件土地の主たる目的は「鋼材置場及び駐車場」であり、仮設建物の敷地の広さも約一一九〇坪の本件土地に比して僅少であり、本件土地が建物所有目的であるとは認めるに足りない。したがって、本件賃貸借契約につき、借地借家法の適用がないことが明らかである。」
借地の一部を駐車場して第三者に貸すのは転貸か(地主の承諾がいるか)―東京地方裁判所平成五年三月二九日判決
事案は、駐車場部分の面積は約一五ないし一八平方メートル程度で、土地全体の面積一二五・四八平方メートルの一二ないし一五パーセント程度でした。駐車場の契約内容は、自動車一台の駐車場として賃料を月額二万五〇〇〇円ないし二万六〇〇〇円と定めるほか、敷金、第三者への賃借権の譲渡転貸の禁止等について詳細な条項を定め、賃貸期間については一年間で合意による更新可能としています。判例は「地主の承諾は必要」と判断をしました。「民法六一二条(賃貸人の承諾なく賃借人が賃借権を譲渡し目的物を転貸することを禁じ、これに反したときは賃貸人が賃貸借契約を解除することができるものと規定)の趣旨に照らせぱ、第三者に使用収益をさせた対象が賃貸借の目的物である借地の一部であるからといって民法六一二条にいう「転貸」に該当しないということはできない。本件においては、契約内容及び利用形態であることに照らせば、本件駐車場部分を駐車場として使用させたことは転貸に該当する。たしかに、借地上に商店、飲食店、劇場等の、不特定多数の顧客の来訪を伴う建物を所有ないし管理する場合において、自動車を利用する顧客の来訪を容易ならしめるために、右建物に付属して不特定多数の顧客を対象とするいわゆる時間貸しの駐車場を設置するような場合には、第三者を対象とする駐車場として借地の一部を使用することが、社会通念上右建物所有ないし管理の目的の範囲内の利用行為と認められ、転貸に該当しないものと認められることもあり得るものといえる。しかし、特定の賃借人を対象として賃貸期間一年間しかも更新を前提とする駐車場契約を締結しているのであって、本件駐車場部分を第三者に駐車場として使用させたことについては、社会通念上本件建物所有の目的の範囲内の使用と認めることは到底できないものであり、転貸に当たることは明らかである。」
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