更新料特約を有効と判断した最高裁判例(平成23年7月15日第2小法廷判決)
これまで裁判所の結論が分かれていた更新料条項について、最高裁判所が有効と判断した事例を紹介します。ただ、この判例の射程は限定的ですので、誤った理解をしないよう注意して下さい。
この事件は、京都市内の共同住宅の1室についての借家契約が問題となっています。契約は、賃貸期間1年・賃料月3万8000円となっており、更新の際は更新料として賃料の2カ月分を支払うことが契約書に記載されていました。契約は4回更新された(最後の1回は法定更新を主張して更新料を支払っていない)ところ、賃借人が3回の更新の際に支払った合計22万8000円の返還を求めたのに対し、賃貸人が法定更新の際にも更新料を支払うべきと主張して最後の1回の法定更新の際の更新料の支払いを求めました。この更新料条項が消費者契約法10条に反するかが争点です。
この事案に対し、最高裁は、更新料の性質について、「更新料は、賃料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり、その支払により賃借人は円満に物件の使用を継続することができることからすると、更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払い、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有する」としています。その上で、更新料は、民法等の規定に比べて、消費者である賃借人の義務を加重するものとして、消費者契約法10条の要件の一つに該当することは認めました。しかし、賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条のいう「消費者の利益を一方的に害するもの」とはいえないとし、もう一つの要件は満たさないとしました。つまり、契約書に明確に更新料の金額まで記載されている場合、その更新料の合意は消費者契約法に反せず、法定更新を選択した場合でも更新料を支払う義務があるとしたのです。
この判例は今後の借地借家の問題に強い影響を及ぼすことは明らかです。一般的に借家契約では、更新料条項として金額まで明示されている場合が多く、首都圏では2年ごとに1〜1・5カ月の更新料条項というのが多いので、著しく高額とまでいえず、契約書の更新料条項を無効とするのは難しいと思います。他方、借地契約の場合、そもそも契約書に更新料条項がなかったり、あっても金額まで記載されていなかったりする事例がほとんどです。とすると、最高裁が指摘する「一義的かつ具体的」な更新料の合意がありませんから、従来どおり法律上も慣習上も支払義務のない更新料を支払う必要はありません。また、最高裁の判断だと、仮に更新料条項が明確に規定されていたとしても、更新料が著しく高額な場合は無効となる余地がありますので、この点も注意して下さい。
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