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役立つ裁判事例

更新料支払請求権は客観的に金額を算出できる具体的基準の定めが必要

 借地の更新料請求が棄却された事例(東京地裁平23・3・31判決・控訴なし)

《事案の概要》

(1)本件は、昭和63年12月、更新料350万円を支払って合意更新をした借地人Yが地主Xから20年の期間満了による更新料393万8170円の支払請求の訴訟を提起された事案。Xの支払請求の根拠は、昭和63年12月の更新の際、20年後の更新の際にも、更新料を支払う旨の合意があったというもの。

(2)訴え提起前、YはXの代理人弁護士と金額について交渉、いったん175万円の支払意思を示したが拒否され、その後北借組と相談の上、更新料の法的性質についての正しい知識を得て法定更新を選択することにしてこの意思表示を撤回していた。

《判旨》

(1)判決は、原告・被告の各本人尋問を踏まえ、昭和63年12月の契約時点では「Yも期間満了時に更新料の支払及び額についてXと協議することは念頭にあったと認められるが、更新料を支払う旨の合意(黙示の合意を含む)があったとまでは認められない」としてX主張の合意を否定し、Xの請求を棄却した。

(2)これで裁判官の役目は終ったはずであるが、判決では「あえて付言するに」として次のように判示した。「仮に、賃貸借契約の当事者間で更新料の支払につき合意がされたとしても、その法的性質については種々の考え方があり得るところであって、更新料の法的性質からその算出基準ないし算出根拠が一義的に導かれるものではないから、更新料の支払請求権が具体的権利性を有するためには、少なくとも、更新料支払の合意をする際に、裁判所において客観的に更新料の額を算出することができる程度の具体的基準を定めることが必要であって、そのような基準が定められていない合意は、更新料支払請求権の発生原因とはなり得ないものと解される」。そして、本件ではその「具体的基準についての合意は成立していない」として、この点でもXの請求は理由がないとした。

《寸評》

 本件は私がYさんの代理人としてかかわった事件です。Yさんの勝訴は当然ですが、この判決で意義のあるのは、判旨の(2)です。「更新料を払って下さい。はい、払います」程度の「支払合意」ではまだ「更新料支払請求権の発生原因」にはならないが、さらに「客観的に額を算出できる具体的基準」が定められていると、更新料支払請求権が「具体的権利性」を帯びてくるということで、そうすると地主が勝訴することになります。例えば「借地権価格の5%」などと記載されていると「客観的に額を算出できる具体的基準」になる可能性があります。既存契約書の解釈、更新契約書の作成に当っては注意が必要です。

(弁護士 白石 光征)

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