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更新料支払特約には、特段の事由がない限り、法定更新の場合は含まない

 更新料支払特約には、特段の事由がない限り、法定更新の場合を含まないとされた事例(東京地裁平成四年一月八日判決、判例タイムス八二五号)
(事実概要)
 賃借人は、昭和五六年一〇月から店舗(ゲーム喫茶)建物を賃借したが、昭和六三年一〇月の契約期間到来に際して、四三万一五七〇円の賃料を五〇万六二一円に値上げ請求され、また契約書に定められている更新料として賃料の二カ月分の請求を受けた。
(判決の要旨)
 「本件賃貸借契約書には、『本件契約の更新の際は、賃借人は賃貸人に対し更新料として新家賃の二カ月分相当の金額を支払うものとする』と規定しているが、文言上は合意による更新のみを指すのか法定更新含むのか判然とせず、解釈によって判断するしかない。『新賃料』という表現からは、通常新賃料が定められることのない法定更新は念頭に置かれていないと考えられる。ところで、一般に更新料を支払う趣旨は、賃料の不足を補充するためであるとの考え方、期間満了時には異議を述べて更新を拒絶することができるが、更新料を受領することにより異議を述べる権利を放棄するものであるとの考え方、あるいは期間を合意により更新することによりその期間は明渡を求められない利益が得られることの対価であるとの考え方などがある。上の賃料補充説にたてば、法定更新と合意更新と区別する理由はないが、そのように推定すべき経験則は認められず、かえって適正賃料の算定に当たっては、更新料の支払の有無は必ずしも考慮されておらず(実質賃料を算定する際には更新科の償却額及び運用益を考慮することはあるとしても)、また実質的に考えても、賃貸借の期間中も賃料の増減請求はできるのであるから、あえて更新料により賃料の不足を補充する必要性は認められないのに対し、賃貸人は更新を拒絶することにより、いつでも期間の定めのない契約に移行させることができ、その場合は、期間の経過を待たずに、正当事由さえ具備すれば明渡を求めることができるのであるから、賃借人においては、更新料を支払うことによりその不利益を回避する利益ないし必要性が現実に認められること等を総合考慮すると、特段の事由がない限り、更新時に更新科を支払うというのみの合意には、法定更新の場合を含まないと解するのが相当である。」
(解説)
 更新科支払特約がある場合、法定更新のときも更新料支払義務があるかどうかについては、最高裁昭和五七年匹月一五日判決がこれを否定しているが、その後も、法定更新でも更新料支払義務があるとする判決がなされることがある。
 本判決は、法定更新の場合には、約定更新料の支払義務はないと判決し、その理由も詳細である。特に、更新科とは賃料を補充するものであるから根拠のある請求であるという賃料補充説に対して明確な批判をしている。

(弁護士 川名照美)

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