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自力救済条項があっても侵入したり鍵を替える行為を違法とした事例 |
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建物賃貸借契約書に自力救済条項があっても、建物内に侵入したり鍵を取り替える行為が違法であるとされた事例(札幌地裁平成11年12月24日判決。判例時報一七二五号) |
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(事実関係) |
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1、賃借入X(原告)は平成10年7月、札幌市内のマンションの一室を賃借し、妻とともに居住した。Y(被告)はこのマンションの管理会社である。
2、賃貸借契約書には次のような特約があった。
「賃借人が賃借料の支払を七日以上怠ったときは、賃貸人は直ちに賃貸物件の施錠をすることができる。また、その後七日以上経過したときは、賃貸物件内にある動産を賃借人の費用金担において賃貸人が自由に処分しても賃借人は異議の申立てをしないものとする」(本件特約)
3、Xは、「部屋に雨漏りがする、かびが発生した」など苦情を述べたが、Yは、かびによる被害の弁償には応じられない旨回答した。
そこでXは同年10月分から賃料の支払を停止した。するとYはXに対し、「督促及びドアロック予告通知書」、続いて「最終催告書」を送り付け、そこには、一定日時までに連絡がない場合には、以後何ら勧告することなくドアロックし部屋への立入りを禁止する旨記載されていた。
4、管理会社Yの従業員は上日時の最終日、X夫婦が外出して留守の間、本件特約があることを根拠に、部室に立ち入って、部屋内の水を抜き(水道管の破裂を防ぐため)、ガスストーブのスイッチを切り、浴室の照明器具のカバーを外すなどした上、部屋の鍵を取り替えた。
5、そこでXはYに対し、その行為は違法だとして損害賠償(慰謝料)の支払を求めて提訴した。 |
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(判決) |
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1、本件特約は、賃貸人側が自己の権利(賃料債権)を実現するため、法的手法によらずに、通常の権利行使の範囲を超えて、賃借人の平穏に生活する権利を侵害することを内容とするものである。
2、このような手段による権利の実現は、近代国家にあっては、法的手続によったのでは権利の実現が不可能又は著しく困難であると認められる場合のほか、原則として許されないものというほかなく、本件特約は、そのような特別の事情がない場合にも適用される限りにおいて、公序良俗に反し、無効である。
3、本件の場合には右の「特別の事情」は認められず、Yの行為は違法であるからXに対し慰謝料10万円支払うべきである。 |
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(寸評) |
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このような特約(自力救済)が入っている契約書はよく見かける。この判決の考え方はごく常識的であり、悪徳業者に対する警告として意味がある。
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