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役立つ裁判事例

借地権譲渡の許可を得ずに借地権の譲渡を強行し契約を解除された事例

 借地人BがCとの間に借地上の建物につき借地権付売買の予約をし、CがさらにDとの間に賃貸借契約を締結したことにつき、これを仮装として、借地権の譲渡に該当するとされた事例(東京地裁平8・6・2判決 判例時報一六〇〇号一一五頁)
(事実)
(1)借地人Bが借地権を譲渡したい旨地主Aに申し出たところ、Aは本件土地が自宅敷地に接していることから承諾を拒否した。
(2)その後BはCとの間に借地権付建物の売買予約を締結し、CはBに7200万円を支払って建物の利用権を取得し、かつ、所有権移転請求権仮登記を経由した。
(3)その後建物の周囲に足場が組まれて改装工事がなされ、Cから建物を賃借したDが医院として利用しはじめた。
(4)Aは、右一連の事実からすると、BはAに無断で借地権を譲渡したものであるから、借地契約を解除し、Bに対し建物収去土地明渡を求めた。
(5)これに対しBは、BはCに対し借地権付きで本件建物を売渡す予約したのみで、Cには本件建物を賃貸しているだけである、と主張し、Aの請求を争った。
(争点)
 BとCとの契約は借地権の譲渡に当るか否かである。
(判旨)
(1)Aの譲渡不承諾の意向を承知しているにもかかわらず、あえて、CがBに7200万円といった高額の金員を支払い、本件建物の占有を取得し、これをDに転貸し、改修等自由にこれを利用していること、その代わりBは本件建物から転居し利用について全く関与しなくなっていることからすると、BはAの承諾を得ないまま借地権と建物の譲渡を強行したというべきである。
(2)BとCは、Aの不承諾意思にもかかわらず本件借地権の譲渡を断念するつもりがなく、かつ、譲渡した場合と同様の経済的効果(引渡、金銭授受、利用、仮登記)を先取り的に実現しているのであり、譲渡予約を仮装しながら、実は譲渡を強行していることにほかならない。
(3)Aの不承諾の意向に不当な点はなく、BとCはAの承諾を得ずに、かつ、警告を無視して本件借地権を譲渡したものであるから、Aの解除は理由がある。
(寸評)
 本件借地人BとCはやりすぎである。地主Aの解除を認めた本判決は正当であると思う。借地権譲渡を地主が承諾しなかった場合には、借地人は借地権譲渡許可の申立を裁判所におこせる。本件のBもそれをおこしたが、それはDが医院を開業したあとであった。やはり譲渡許可の裁判所の決定を取り、しかるのちに事を始めるべきであった。

(弁護士 白石光征)

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