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借地人が建物買取請求権を行使すると明渡の強制執行の阻止理由になる |
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建物収去土地明渡判決と建物買取請求権(最高裁平成七年一二月一五日判決、判例タイムズ八九七号) |
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(事案) |
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借地人は、期間満了に際して更新を拒絶され、正当事由有りということで、借地上の建物を収去して借地を明け渡せという判決を受けた。借地人は、建物収去土地明渡の強制執行を実行されてしまう立場になったが、借地法に基づき建物買取請求権を行使して、それを理由にして、強制執行を許さないと争った。一審、二審とも借地人の請求を認め、最高裁も同様の判決をした。 |
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(判決要旨) |
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「借地上に建物を所有する土地の賃借人が、賃貸人から提起された建物収去土地明渡請求訴訟の事実審口頭弁論終結時まで(高裁が結審するまでという意味)に借地法四条ニ項所定の建物買取請求権を行使しないまま、賃貸人の上請求を認容する判決がなされ、同判決が確定した場合であっても、賃貸人は、その後に建物買取請求権を行使しに上、賃貸人に対して上確定判決による強制執行の不許を求める請求異議の訴えを提起し、建物買取請求権行使の効果を異議の事由として主張することができる。なぜなら、建物買取請求権は、前訴確定判決によって確定された賃貸人の建物収去土地明渡請求権の発生原因に内在する瑕疵に基づく権利とは異なり、これとは別個の制度目的及び原因に基づいて発生する権利であって、賃借人がこれを行使することにより建物の所有権が法律上当然に賃貸人に移転し、その結果として賃貸人の建物収去義務が消滅するに至るのである。したがって、賃借人が前訴の事実審口頭弁論終結時までに建物買取請求権を行使しなかったとしても、実体法上、その事実は同権利の消滅事由に当たるもりではなく訴訟法上も、同訴確定判決の既判力によって同権利の主張が遮断されることはない。そうすると、賃借人が前訴の事実審口頭弁論終結時以後に建物買取請求権を行使したときは、それによって前訴確定判決により確定された賃借人の建物収去義務が消滅し、前訴確定判決はその限度で執行力を失うから、建物買取請求権行使の効果は、民事執行法三五条二項所定の口頭弁論の終結後に生じた異議の事由に該当する。」 |
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(説明) |
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借地期間到来に際して、更新を拒絶されたときは借地人借地上の建物を地主に買い取ってもらう権利、建物買取請求権がある。この建物買取請求権は、地主かち起こされた土地明渡請求訴訟の最中に行使する義務はなく、いつ行使してもよい。建物買取請求権を行使すると、建物の所有権は地主に移転し、借地人は、建物代金の請求権を取得する。その結果、借地人は、建物を収去する義務がなくなり、また、建物代金が支払われらるまでは、建物からの退去を拒否することができる。この判決は建物買取請求権行使の効果が請求異議事由(明渡の強制執行を阻止する理由)になることを初めて認めた最高裁判決である。
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