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役立つ裁判事例

土地の賃貸借契約が、建物所有の目的であるとは認められなかった事例

 土地の賃貸借契約が、建物所有の目的でないとされた事例(東京地裁平成六年三月九日判決、判例時報一五一六号一〇一頁)
(事実)
 貸主の先代は、昭和四九年に、自己所有土地を賃貸した。
 借主は、右賃借土地の隣接地を所有し、そこでフォークリフト等の販売・修理等の営業を行い、本件賃借土地を洗車場、更衣室、部品倉庫として使用してきた。
 その後、貸主・借主双方は、平成ニ年二月一日付賃貸借契約書を作成した。
 その内容は、賃貸借期間一年、自動車駐車場一時使用目的、付帯設備として二四坪以内の既製品プレハブ建物を設置することができるというものであった。
 そして、平成三年一一月に至り、貸主は、借主に対し、本件土地賃貸借契約の解約を申し入れて、本件土地の明渡を求めた。
(争点)
 本件土地賃貸借契約が建物所有を目的とするものであるか否かである。
(判決の要旨)
 裁判所は、『本件土地賃貸借契約に当っては権利金の授受がなく、賃貸借契約書において自動車駐車場の一時使用目的として、設置可能な建物を種類規模を限定していること他方、借主としても、本件土地を洗車場、更衣室兼部品倉庫として利用してきているもので、平成二年の契約の際も、もし短期間で明度を求めるものとすれば多大な経費をかけてプレハブ建物を設置し、賃料の増額に応じることもなかったであろうと考えられ、当然に契約書のとおり契約を終了させる意思でなかったと推測されるが、その反面、本件土地を建物所有の目的で賃借する旨の合意があった事実が認められず、むしろ本件経緯に照らせば建物所有の目的では賃貸しないとの貸主の意図をある程度借主が了解していたものと考えられる。したがって、一時使用の目的とは言い得ないものの建物所有の目的とするものであるとまでは認めることができない。』と判示した。
(短評)
 借地上に建物が建築されたとしても、建物所有の目的でないときには、旧借地法あるいは借地借家法の適用がなく、民法の賃貸借の規定が適用されることになる。
 建物所有の目的といい得るためには、借地上に建物を所有することが主たる目的になっていることを要し借地を使用する目的が別にあり、これに付随して建物を所有することが予定されている場合であっても、建物所有の目的といえないとされる。
 本判決は、従前の借地の利用経過および契約書の文言を詳細に検討した上建物所有の目的でないと判断したもので参考となる。

(弁護士 榎本武光)

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