家賃保証業者の「追い出し条項」は消費者契約法10条に反し無効
〈事案の概要〉
適格消費者団体が家賃債務保証会社に対し、消費者契約法12条3項に基づき、保証委託等の契約条項の差止等を求めた事案。
問題となった契約条項は以下のとおり。
(1)賃料3か月分以上の滞納があったときは、家賃債務保証会社が、無催告で、賃貸借契約を解除できるという条項
(2)賃料等の支払いを2か月以上滞納し、家賃債務保証会社が合理的な手段を尽くしても賃借人と連絡がとれないなど所定の4要件を満たすときは、家賃債務保証会社が、建物の明渡があったものとみなすことができるという条項
〈判断〉
上記条項(1)について
最高裁は、賃貸借契約の解除は、賃借人の生活の基盤を失わせるという重大な事態を招来し得るものであるから催告の必要性は高いとした上、上記条項(1)は、所定の賃料等の支払いの遅滞が生じた場合、賃貸借契約の当事者でもない家賃債務保証会社がその一存で何らの限定なく賃貸借契約を無催告で解除権を行使することができるとするものであるから、消費者契約法10条に該当すると判断した。
上記条項(2)について
最高裁は、上記条項(2)は、賃貸借契約が終了していない場合でも、家賃債務保証会社に建物の明渡しがあったものとみなすことができる旨を定めた条項であり、賃借人の建物に対する使用収益権が一方的に制限されることになる上、賃借人は明渡義務を負っていないにもかかわらず、法律に定める手続によることなく明渡が実現されたのと同様の状態におかれることになり著しく不当であるとして、消費者契約法10条に該当すると判断した。
〈コメント〉
本判決の原審判決である大阪高裁判決は、上記条項(1)および(2)について、いずれも限定的な解釈をすることで消費者契約法に違反しないとした。
これに対し、本判決は、上記のとおり上記条項(1)および(2)の問題点を正面から認め、賃貸借契約の解除や明渡が賃借人の生活の基盤を失わせるという観点から、消費者の利益を一方的に害すると判断したものである。また、上記条項(2)の判断において、法的手続によらない明渡(自力救済)につき厳格な判断を行っており実務上も重要な意義のあるものである。
(弁護士 瀬川宏貴)