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借地権付建物の共有者間の譲渡には賃貸人の承認や承諾料は必要ない!

 借地権付建物の共有者間の譲渡の際の地主の承諾の要否(最高裁判所第1小法廷昭和29年10月7日判決)

 古い判例ですが、ついこの前、共有者間の借地権譲渡の事案で地主から要求された承諾料を拒否する根拠として使った判例ですので、紹介します。
 この事案は、相続によって相続人4名が借地権付建物の共有者となっていたところ、共有者のうち2名が、残る共有者のうちの1名にこの借地権付建物の持分を譲り渡し、建物の所有権移転登記を完了したところ、地主から無断譲渡を理由に賃貸借契約解除を主張されたというものです。
 この事案の第1審判決は、借地権譲渡の際に地主の承諾を必要とする趣旨を、借地権の譲渡により賃借人が交替し最初の賃借人と別個の者が土地の使用をするようになることが相互の信頼関係を破壊し賃貸人に不利益を与えるおそれがあることから解除原因としたものと解した上で、4名の共同賃借人がそのうち2名に減少したに過ぎないような場合はこの趣旨に含まれず、民法612条によって賃貸借契約を解除することはできないとしました。この判断は、高等裁判所でも肯定され、上記最高裁でも肯定されて確定しました。
 法は「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない」(民法612条1項)とした上で、これに違反した場合「賃貸人は、契約の解除をすることができる」(同条2項)と定めています。
 この「譲渡」には、売買や贈与だけでなく包括遺贈なども含まれるとされています。共有者間の持分移転も、形式的にはこの「譲渡」に該当するのですが、この裁判例は、賃貸人に不利益がないという観点から解除原因にあたらないとしたもので、常識的な結論であると思われます。
 同じく賃貸人の不利益がないという観点から、借地上に一緒に居住していた夫婦の離婚に伴い、元夫から元妻に借地権付建物が財産分与された事案において、無断譲渡を理由とする賃貸借契約解除を否定した事例(最判平成21年11月27日)もあります。
 これらは賃貸借契約解除まで請求されていないが、承諾料を請求されている事案で承諾料を拒否する理由としても使えると思いますので参考にして下さい。

(弁護士 西田穣)