相当の更新料は支払う必要がない。金額を算出できる具体的基準が必要
「相当の更新料」は支払わなくてよい!
借地について、契約書などの書面に更新料の記載がない場合、借地人が更新料を支払う法的義務はないとされています(最高裁判所昭和51年10月1日判決)。
それでは、書面で更新料を支払うという記載があった場合、借地人は、更新料を支払う法的義務があるのでしょうか。
今回、ご紹介するのは、書面に「相当の更新料」を支払うという記載があった場合のケースで、東京高等裁判所は、令和2年7月20日、「更新料の支払請求権が具体的権利性を有するのは、それが、更新料の額を算出できる程度の具体的基準が定められていることが必要であるところ、本件合意第3項は、その「相当の更新料」という文言が、抽象的で、裁判所において客観的に更新料の額を算出することが出来る程度の具体的基準ではないから、具体的権利性を肯定することはできない」と判示しました(なお、地主から、この判決に対する異議申し立てはなく、この判決は、確定しています)。
この判決は、一義的かつ具体的に記載された更新料条項に関し、高額に過ぎるなどの特段の事情がないかぎり、消費者契約法に反しないとした最高裁判所平成23年7月15日判決と同様、その記載を見ただけで、誰が計算しても更新料の金額にブレがない場合でなければ、更新料を支払う必要は法的にはないと明言したものです。
つまり、「相当の更新料」だけでなく、「相応の更新料」や「相場の更新料」という記載でも、更新料を支払う必要はありません。さらに、「路線価を基準にした更新料」や「更地価格の5%の更新料」という記載も。見た人によって、金額にブレが出るので、同様に、更新料を支払う必要はありません。他方、借家であれば、「新家賃の1か月分の更新料」、借地であれば、「更新日に確認できる最新の路線価に借地面積を乗じた金額の3%の更新料」と書いてあれば、誰が計算しても、同じ金額になりますから、このような場合のみ、更新料は支払わなければならないということです。
この判決を受け、ご自身の契約書に、誰が見てもブレない金額の更新料の定めがあるかを確認し、そういう定めがなければ、更新料を支払わないという選択肢を検討することをお勧めします。
〈弁護士 種田 和敏〉