保証会社による一方的な追い出しを正当化する契約条項は無効である
保証契約の追い出し条項の有効性
リーマン・ショックの後、法的手続を踏まずに、鍵を交換し、賃借人を賃借物件から追い出す事例が頻発しました。この間の新型コロナウイルスの影響は、リーマン・ショック以上と言われており、再び違法な追い出しが頻発するおそれがあります。そこで、今回は、保証会社による保証契約で、保証会社による一方的な追い出しを正当化する条項について判断した判決(大阪地方裁判所判決2019年6月21日。以下「本件判決」といいます。)を紹介します。
まず、本件判決の事案では、保証会社の保証契約書に以下の条項がありました(以下「本件条項」といいます。)。
賃借人が家賃を2か月以上滞納し、保証会社において合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡がとれない状況の下、電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から賃借物件を相当期間利用していないものと認められ、かつ、賃借物件を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存するときに、賃借人が明示的に異議を述べない限り、賃借物件の明渡しがあったものとみなす権限を保証会社に付与する。
本件判決は、以下の要旨で、本件条項が、消費者契約法8条1項3号にいう「当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除」する条項に該当し、無効であると判断しました。
本件条項が、原契約自体の終了原因の有無や解除の意思表示の有効性を問わずに同契約を終了させる趣旨のものであることに照らすと、本件条項の適用により、いまだ原契約が終了しておらず、賃借人の占有が失われていない場合であっても、保証会社は、本件条項に基づき賃借物件内の動産類の搬出・保管を行い得ることとなる。このような行為は、原契約が終了しておらず、いまだ賃貸人に賃借物件の返還請求権が発生していない状況で、保証会社が自力で賃借物件に対する賃借人の占有を排除し、賃貸人にその占有を取得させることに他ならず、自力救済行為であって、保証契約の定めいかんにかかわらず、法的手続によることのできない必要性緊急性の存するごく例外的な場合を除いて、不法行為に該当する。
違法な追い出しに対しては、正しい知識で断固対抗しましょう。
(弁護士 種田和敏)