借地権を合意解約すると法13条の建物買取請求権は放棄することになる
1 建物買取請求権の活用法
借地借家法13条は、借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができるとして、借主の「建物買取請求権」が規定しています。最近この「建物買取請求権」の意外な利用法があるとして注目されることになりました。
借り主がこの「建物買取請求権」を行使すると土地の貸主と借主との間で建物の売買契約が成立したことになり地主は買取を拒否することはできません。建物の売買契約が成立すると、その瞬間に、建物の所有権が地主に移転することになります。そのため、借地上の建物は地主の所有物となった以上、賃借人は他人の所有物である建物を収去する義務はなくなります。賃貸借契約期間満了による終了時においては、事実上、地主が建物収去をしなければならないということになります。
2 合意解約は慎重に
合意解約によって土地賃貸借契約が終了する場合は、合意に至るまでに建物をどうするかについての話し合いすることが多く、話し合いで決まることが多いと思います。話し合いが成立しない場合について、旧借地法時代の最高裁判例(最判昭29年6月11日)では、建物買取に関する合意が存在しない限り、買取請求権の放棄・建物収去が当然の前提と解すべきとしました。借地権者が借地上建物の運命まで顧慮したうえで合意をしたと考えられるから、特に建物買取りに関する合意が存在しない限り、買取請求権の放棄・建物の収去が前提とされていると解されるからです。現在の借地借家法下での裁判例はないようですが、「買取請求権」は発生しないと考えられます。合意解約によって土地賃貸借契約が終了する場合は建物買取請求権を放棄するのかについて慎重に考えることが大事です。
(弁護士 黒岩哲彦)