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保証会社が賃料の代位弁済を行った場合賃貸人への債務不履行に当るか

保証会社による代位弁済と賃貸借
契約の債務不履行

 今回は、保証会社が賃貸人に対し、賃借人が支払っていなかった賃料を立替払いした場合に、賃借人に債務不履行があったかが争われた事件を紹介します(大阪高裁判決平成25年11月25日)。
 同判決は,保証会社が弁済しているから、賃借人に賃料等の不払いはないとの賃借人による主張に対し、「本件保証委託契約のような賃貸借保証委託契約は、保証会社が賃借人の賃貸人に対する賃料支払債務を保証し、賃借人が賃料の支払を怠った場合に、保証会社が保証限度額内で賃貸人にこれを支払うこととするものであり、これにより、賃貸人にとっては安定確実な賃料収受を可能とし、賃借人にとっても容易に賃借が可能となるという利益をもたらすものであると考えられる。しかし、賃貸借保証委託契約に基づく保証会社の支払は代位弁済であって、賃借人による賃料の支払ではないから、賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するに当たり、保証会社による代位弁済の事実を考慮するのは相当でない。なぜなら、保証会社の保証はあくまでも保証委託契約に基づく保証の履行であって、これにより、賃借人の賃料不払という事実に消長をきたすものではなく、ひいては、これによる賃貸借契約の解除原因事実の発生という事態を妨げるものではないことは明らかである。」と判示し、保証会社による代位弁済を、賃貸人と賃借人間における賃貸借契約の債務不履行の有無を判断するにあたり考慮することは相当でないとしました。
 この判決は、常識的な判断だと思いますが、法的には検討が必要な面もあります。そもそも、本来的には、賃料を誰が払おうが、支払われればよいので、賃借人に債務不履行はないようにも思います。しかも、保証会社が滞納家賃を支払うのは、賃借人が保証料を支払っているからなので、賃借人側で、保証会社が滞納家賃を穴埋めしたといえます。ただ、やはり保証会社が支払ったから、賃借人に債務不履行がないという結論は不当なので、裁判所は、債務自体を賃借人による家賃の支払として、保証会社による支払を含まないと解釈したのだと思います。これは保証人の場合も同様です。
 いずれにしても、家賃は滞納しないようにするのが肝要です。

(弁護士 種田和敏)