滞納家賃を理由に鍵穴を覆い家財道具を処分した賃貸人に損害賠償責任
建物賃貸人が賃借人の荷物を撤去・処分した行為等について損害賠償責任が認められた事例(東京地裁平成30年3月22日)
アパートの賃貸人が、賃料の滞納のあった部屋の玄関扉の鍵穴を覆うカバーを取り付け、賃借人の家財道具一式を撤去、処分したことに対して、賃借人である夫婦が損害賠償請求を行った事案。被告である賃貸人がそのようなカバーの取り付け行為、撤去・処分を行っていないと主張したため、①カバーの取り付け行為、撤去・処分の有無、②賃借人夫婦の受けた損害額等が争点となった。
判決は、争点①について、カバーの取り付け行為、撤去・処分についていずれも賃貸人が行ったものであると認定し、争点②について賃借人夫婦それぞれについて、1人あたり、慰謝料50万円、財産的損害30万円、弁護士費用8万円の計88万円の損害賠償責任を認めた。
本件は、カバーの取り付け行為、家財道具の撤去・処分の有無を賃貸人が争い、それを立証する明確な証拠がなかった事案であるが、判決では賃貸人の従業員が賃借人に送ったメールや裁判前の賃借人側の弁護士に対する賃貸人の対応等からカバーの取り付け行為、撤去・処分についていずれも賃貸人が行ったものであると詳細に認定したものである。また、財産的損害について賃借人の主張を一部認めて、火災保険における二人世帯の家財の買い替え費用を参考に民事訴訟法248条により1人あたり30万円の損害を認めており、同種事案において参考になると思われる。
(弁護士 瀬川宏貴)