借地人が所有する建物を第三者に賃貸しても転貸借にはあたらない
建物所有目的で他人の土地を賃借する者は、その所有建物を第三者に賃貸しても、土地の転貸にはあたらないとした裁判例(東京地方裁判所昭和34年9月10日判決)
よく借地をしている方から建物を他人に貸すときに地主の承諾は必要ですか、という質問を受けます。建物は、借地人の所有物なので、自分の所有物を他人に貸すのは自由なはずなのに、こういった質問が出る理由は、その建物が、地主の土地の上に建っているため、その地主から借りた土地の権利も転貸することになるのでは?という疑問があるからだと思います。この疑問に対して、土地の転貸にあたらないと判断したのがこの裁判例です。
この裁判例は、「他人の土地を建物所有のために使用する権限を有する者は、この権限に基づきその地上に所有する建物を自由に他人に利用せしめることができるのであり、この建物利用にともなう敷地の利用は本来建物所有のためにする土地使用の権限に内包されるものというべきである」として、建物の賃貸は、土地の転貸にはあたらないため、地主の承諾は不要であるとしました。
実際、地主は、建物を建築する目的で土地を貸す(使う)ことを承諾しているのですから、その建物を借地人自身が居住する場合と、それ以外の第三者が居住する場合で、建物所有による土地使用の態様に違いはありません。そのため、建物の賃貸につき、地主の承諾を不要としても、地主には不利益は生じません。この点を重視したこの判決は、常識的な判断をしているといえます。
なお、戸建て住宅には、自家用車を停める駐車場部分があることが多いと思います。駐車場部分には建物が建っていないため、借地上の建物は賃貸できても、駐車場部分は土地の転貸になってしまうのではないかと心配される方もいるかもしれません。しかし、自家用車を停める程度のスペースの利用は、建物利用に付随した使用方法であり、建物と一体として評価されます。そのため、建物を賃貸するに際し、自家用車を停めるくらいの駐車場スペースも一体として賃貸する場合、同じく地主の承諾は不要です。
借地人の方は、建物を自分で使用しない場合、地主の承諾がなくても、第三者に建物を貸すことができることになります。
(弁護士 西田穣)