地代自動改定特約の効力を否定し特約を前提の増額請求を棄却した事例
地代自動改定特約の効力を否定し、同特約が有効であることを前提とした地主からの賃料請求を棄却した事例(東京高裁平成28年3月30日判決)
借地人側の代理人として、先日、東京高等裁判所から判決を受けた事案をご紹介します。
1 事案の概要
借地人Yの父Aは、昭和31年頃、地主Cから土地を借り受けた。Aの死亡に伴いYの母Bが借地権を相続したが、Yは、昭和59年9月、地主Cとの間で、Yを借地人とする土地賃貸借契約書を取り交わした。この契約書には、「2年ごとにその時点の賃料に10%を加算する」旨の賃料改定特約が設けられた。
Yは、その後、本件特約にしたがって増額改定された地代を支払っていたが、平成14年7月には、本件特約にしたがって改定される地代は高額に過ぎると考え、その後は本件特約が適用されないことを前提とした地代を支払った。
地主Cから賃貸人たる地位を承継したXが、賃料改定特約は有効であるとして、同特約を適用した場合の地代との差額(未払賃料)の支払いを求めて提訴した。Yが勝訴し、Xが控訴。
2 判決要旨
控訴審は、本件特約の記載内容と借地近辺の標準地の地価の変動率を詳細に認定し、本件特約は借地をめぐる経済情勢を重要な指標としているから、当時想定されていた経済情勢=地価の継続的な上昇を見込んで、地代改定を巡る協議の煩わしさを避けて紛争の発生を未然に防止するため、一定の基準に基づいて地代を自動的に増額するために設けたと認めるのが合理的であり、このように解して初めて、本件特約が地代改定基準として相当と認められると認定し、Xの主張を排斥した。
地代の不相当性については、直近の改定からの地価の変動率、近隣類地の地代との比較を踏まえ、遅くとも平成14年7月分以降の地代は借地借家法11条1項に照らして不相当に高額であると判断、Xの控訴を棄却した。
3 所感
訴訟では、本件特約の基礎となる事情や増額改定された地代の不相当性について争われましたが、特約締結前後の借地近辺の標準地の地価の変動や近隣類地の地代について、提出した証拠に基づいて非常に丁寧な認定がなされました。改めて立証活動の重要性を学ばせて頂いた事案でした。
(弁護士 大浦郁子)