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借地の無断転貸が信頼関係の破壊なしとして解除が認められなかった例

 借地の無断転貸が信頼関係の破壊なしとして解除が認められなかった例(東京地裁平成28.1.22判決)
 今回ご紹介するのは、私が賃借人側代理人としてかかわった事件で、つい先日判決があった事案です。
 昭和29年にAの名義で始まった借地(50坪)契約は、昭和49年と平成6年にそれぞれ合意更新され、平成6年の更新に際しては、Aから借地権を相続していた妻Bからその娘Cの夫Yに借地名義を変更し、名義変更料として500万円を支払った。
 一方、借地上の建物は、Aが昭和31年、家族の居住とAが創立した宗教法人Zの活動に供するために建築し、その所有名義はZで登記した。そして、Zの代表役員はA↓B↓Cと一族が承継してきた。建物にはZの看板が掲げられ、敷地内に鳥居や稲荷があり、Zが建物を使用していることが外部からも分った。信者は100人程度いた時期もあるが徐々に減少し、平成25年には40人程度となり、活動は月1回の祭礼ぐらいで、布教活動をすることもなかった。こうして、建物はZの使用に供される以外は、AB夫婦、CY夫婦とその各家族が居住してきた。
 地主Xは、先代の死亡に際して土地建物の登記簿を調べたら借地人と建物所有者が異なっていることを発見したとして、平成24年10月、借地権の無断転貸を理由として借地契約の解除を通告し、借地人Yと建物所有者Zに対し、建物収去土地明渡請求の本訴を提起した。
 判決は、宗教法人Zの代表者Cと借地人Yは同居の夫婦であり、YとZには一体性があり、建物の使用状況も借地開始後相当長期に渡り変化はなかったから、本件転貸は信頼関係を破壊すると認めるに足りない特段の事情があるので、解除は無効である、ZもそのことをXに対抗できる、としてXの明渡請求を棄却した。
 判決は、従前の判例に照らしても当然ですが(裁判官は審理の当初は借地人側に厳しい見方をしているようにとれましたが、被告側の丁寧な主張立証とCの本人尋問で心証が変ったようでした)、この事件は、解除の通告を受けてCYの家族が地元の借地借家人組合に相談したら、借地人と建物所有者が違うからダメだといわれ途方に暮れていたところ、信者の中にたまたま北借組の組合員(30年前頃借地の更新で組合に相談に来た方)がおり、私に紹介してきたものでした。組合活動の参考のため一言付け加えました。

(弁護士 白石光征)