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更新料支払合意なき借地契約で慣習理由の更新料請求が棄却された事例

 自らが所有する二七八件の賃貸地のうち二四三件で借地人からの更新料授受があったとして、更新料を支払う旨の契約書上の条項がない借地契約につき、慣習を理由とする地主の更新請求が棄却された事例(平成二四年一二月二〇日判決‥判例検索ソフト・ウェストロージャパン掲載)
[事案の概要]
原告は、東京都内(江東区)の土地約三八坪の貸地につき、一坪当たり更新料約五万円が相当として更新料約一九〇万円を被告借地人に請求した。平成四年三月の前回更新のときは、名義書替料を割賦で支払うとの念書が差し入れられ、被告の先代から原告の先代に四〇〇万円が支払われた事実があった。
[判決]原告の請求棄却。平成四年の名義書替料の支払いは更新料の支払いであり、そのとき平成二四年の更新時に更新料を支払うとの合意があったと原告は主張したが、判決は、契約書の更新料支払特約の条項がないが、合意があったなら契約書にその旨記載されれば足りるはずであるとして、原告の合意の存在の主張を退けた。原告はさらに、「東京都内において、既に更新料支払の慣行は五〇年近く継続しており、現在では、賃貸人の請求に基づく更新料支払について商慣習又は事実たる慣習が成立している」と主張し、原告又は関連会社が東京二三区及びその近郊において所有していた居住用一戸建の底地二七八件について更新料支払の有無を調査したところ、二五七件につき更新料支払の有無の確認がとれ、そのうち約九五%に当たる二四三件では更新料が支払われていた」との原告元代表者の陳述書を提出した。これに対し、判決は、「陳述書添付された『更新料データ』と題する一覧表を検討すると、確認できた借地契約書に更新料支払の記載がないにもかかわらず、更新料支払の事実が認められるのは、二五七件中……一一件のみ」である。「その余は、借地契約書に更新料支払が明記されているか(二六件)、又は、借地契約書に更新料支払の条項があるか否か未確認であるから、東京二三区及びその近郊においては、借地人は、更新料を支払う旨の賃貸人との個別の合意がない場合であっても、商習慣又は事実たる慣習に基づき当然に更新料の支払義務を負うとは未だ認められない」として、結局、地主の更新料請求を認めなかった。特約がないのに更新料支払の慣習があるからとして更新料を請求することは認められないことは、既に判例上確定しているが、一つの事例を加える判決である。

(弁護士 田見高秀)