保証委託契約の解除更新料特約は消費者契約法に違反し無効とした事例
借家人が家賃支払を遅滞した場合に、保証委託契約が一度自動的に解除された上で更新され、その際に解除更新料を支払うなどとされた借家人と保証会社との保証委託契約における特約が消費者契約法10条により無効とされた事例(名古屋地裁平成23年4月27日判決・最高裁判所ウェブサイト及び消費者法ニュース八八号二〇八頁掲載)
【事案の概要】
原告は、平成一九年一一月、個人で居住用の部屋を、訴外B(賃貸人)から家賃七万円で借り、保証委託会社である被告(資本金三億三二〇〇万円)に部屋の賃貸借契約の連帯保証人となることを委託した。原告と被告との保証委託契約には、「原告が賃料の支払を一回でも滞納した場合,本件保証委託契約は,B及び原告の承諾の有無にかかわらず無催告で自動的に債務不履行解除された上で,自動的に同一条件で更新される。この解除更新の場合,原告は,被告に対し,その都度1万円の更新保証委託料を支払うという特約があった(これを「解除更新料特約」という)。賃貸借契約自体は続いているのに、保証委託契約だけが、一回滞納毎に解除・更新され、その都度一万円の保証委託契約の更新料が生じるというものである。原告は、平成二一年六月ころ、部屋を明け渡したが、平成二〇年一月から一二月の間に、解除更新料一万円を合計七回、合計七万円支払わされていた。原告は、この七万円の返還及び強引に明け渡しに追い込まれたことの慰謝料・弁護士費用の支払い等を求めて提訴した。
【判決の要旨と注目点】
名古屋地裁は「解除更新料特約は,消費者の権利を制限しかつ消費者の義務を加重するものであるし、信義誠実の原則(民法1条2項)に反して消費者の利益を一方的に害するものであって、消費者契約法10条により無効」と判決して原告の請求を認め、被告が受領した七万円は不当利得であるとして年六分の利息を付して返還するよう被告に命ずる判決をした。さらに、この判決は、不当な保証委託契約を結ばせて解約更新料を徴収したことを被告の不法行為とし、原告に対する慰謝料二〇万円、弁護士費用五万円の支払をも命じている。
消費者契約法一〇条は、「消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする」という条文である。現在の建物賃貸借契約の多くでは、保証委託会社を連帯保証人として実質的に強制することが行われ、その保証委託契約の内容も、消費者である賃借人に不利益で不当な特約が横行している。この判決は、解除更新料特約という、まことに奇妙な特約条項を消費者契約法によって無効と判断した重要なものである。
(弁護士 田見高秀)