保証会社の組織的な追い出し行為が不法行為として慰謝料を命じた事例
借家人が家賃支払を遅滞した場合に、保証委託契約が一度自動的に解除された上で更新され、その際に解除更新料を支払うなどとされた借家人と保証会社との保証委託契約における特約が消費者契約法10条により無効とされるとともに、保証会社が根拠不明の金銭を含め借家人に過分な支払をさせる行為や退去勧告を組織的に行っていたことが不法行為に該当するとされた事例(名古屋地裁平成23年4月27日判決)
【事案の概要】
甲(借主)とA(貸主)は、平成19年11月、マンション一室の賃貸借契約を締結した。この契約に際し、賃貸住宅等の入居者の保証人受託業務等を目的とする株式会社乙が甲との間で保証委託契約を締結して甲の連帯保証人となったが、同契約には、甲が賃料の支払を1回でも滞納した場合、保証委託契約が無催告で自動的に債務不履行解除された上で、自動的に同一条件で更新され、乙に対しその都度1万円の更新保証委託料を支払うという条項(解除更新料特約)が含まれていた。この特約に基づき、甲は乙へ解除更新料として合計10万円を支払った。また、乙は、「手数料」名目での金銭請求や約5分間に10回以上の不在着信を残すなどの甲への執拗な督促や退去の勧告等を何度も行った。
【判旨】
1、解除更新料特約は、甲(委託者)が初回保証委託料を支払って乙(受託者)に対する債務を履行しているのに、乙が自ら受託した保証債務を履行する前に自動的に債務不履行解除されることになり、明らかに契約の趣旨及び信義則に反するから、消費者契約法10条により無効である(既払解除更新料10万円の返還を認める)。
2、乙が、根拠の明らかでない金銭も含め甲に過分な支払をさせていたことや、甲とAとの間の信頼関係が破壊されたと認められる状況には至っていないにもかかわらず賃貸物件から出て行くように働きかける行為等を組織的に行っていたことは、社会通念上許容される限度を超え不法行為に該当する(慰謝料として20万円の支払いを認める)。
【寸評】
物件を借りるに際して連帯保証人を用意することができない賃借人のための賃貸保証委託会社が急増しているが、賃借人の立場の弱さにつけ込み、賃借人に過大な義務を負わせたり、不当な要求に及ぶ業者は少なくない。本事例は、そのような業者の行為を組織的な違法行為と認め慰謝料の支払いを命じたものであり、悪質業者への警鐘となると思われる。
(弁護士 松田耕平)