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東京借地借家人新聞


2010年1月15日
第514号

家賃補助など政策の転換を

平山神戸大教授が住宅政策の問題点を講演

保守主義の住宅政策

グループ優遇で持家促進

保守主義の住宅政策の特徴
保守主義の住宅政策の特徴

 『住宅政策のどこが問題かー持家社会の次を展望する』(光文社新書)の著書の平山洋介神戸大学院教授の講演(NPO法人建築ネットワーク主催)が昨年11月都内で行なわれた。平山教授の説明によると、首都圏でピーク時に7000万円弱の住宅価格は、現在4000万円以下に下落し、世帯収入は低下しているにもかかわらず住宅・土地の負債残高は増加し、持家取得が資産形成と結ぶつかなくなってきているという。
 平山教授は、日本では戦後一貫して保守主義の住宅政策がとられ、持家や家族を持つ中間層を優遇・援助し、中間層を円の中に誘導する政策を続けてきたが、その反面、円の中心部から外部の個人や賃貸住宅に対しては政策の対象から除外してきたと指摘。また、グループ主義で企業に所属していれば社宅、家賃補助、住宅融資、年功賃金など手厚い住宅保障があったと強調。

破綻した持家中心の住政策

 しかし、持家政策は破綻し持家を持てない単身者や非正規雇用が増加し、低所得の賃貸住宅居住者は低家賃の木造賃貸住宅が減少する中で、家賃が大きな負担になっている。さらに、家賃保証会社の台頭によって追い出し被害が増加し、民間賃貸住宅の居住の不安定化がすすんでいる。
 平成20年の住宅統計調査によると持家61・2%に対し、公営住宅が4・1%、UR・公社住宅が1・8%、民間賃貸住宅27・1%で、公共住宅が6%弱と少ない。その公共住宅も削減されストックが減少している。フランスでは日本の公共住宅に匹敵する低家賃の社会住宅が17%を占め、オランダでは実に3割以上が良質の賃貸住宅・社会住宅が占め、所得に応じて家賃補助がヨーロッパの先進国では当然のごとく実施されている。
 景気対策のための住宅政策ではなく、賃貸住宅居住者への家賃補助や単身者の公営住宅入居資格の拡充と公営住宅の建設の促進など、住宅保障を中心に据えた住宅政策の転換こそが求められている。




 

追い出し屋を登録制で法規制

国交省・民間賃貸住宅部会「最終とりまとめ」

定期借家は普及促進

借地借家法改悪反対が課題に

JR蒲田駅西口の街頭宣伝に参加した東借連の組合員
JR蒲田駅西口の街頭宣伝に参加した東借連の組合員

 民間賃貸住宅の紛争の未然防止、滞納・明渡し問題、民間賃貸住宅ストックの質の向上等について10回にわたって議論してきた国土交通省の社会資本整備審議会住宅宅地分科会民間賃貸住宅部会は、昨年12月14日に「最終とりまとめ(案)」を発表した。
 この間、借家人の家賃の滞納で連帯保証人に代わる家賃保証会社が追い出し屋と呼ばれるように無法な家賃の取立てや鍵の交換・家財道具の処分などの悪質な行為が全国に拡大した。東借連と全借連も協力し、追い出し屋対策会議などの団体による運動の大きな盛り上がりによって、同部会でも家賃保証会社や管理会社に対する法律の規制が大きな争点となった。
 最終とりまとめでは、家賃債務保証業務の行き過ぎた督促行為に対しては「貸金業法における取立て規制のような行為規制が必要」であるとして、家賃保証業を登録制にすることが提言された。

家賃滞納履歴DB化を容認

 これを受けて政府は、来年春の通常国会に「追い出し規制法案(通称)」を提出し、家賃滞納者への深夜・未明の督促、無断での鍵の交換、家財撤去など強引な取立て・追い出し行為を禁じ、違反した場合には、管理業・サブリース業、家賃改修代行業などの業種を問わず、個人家主も含めて刑事罰を科し、被害救済に向け国交省と消費者庁が連携して取り組むことになった。
 また、家賃債務保証業務等の適正化の方策と、滞納等が発生した場合の円滑な明渡しのための方策については、「分けて検討する必要がある」として、一部の家賃保証会社による賃借人の家賃滞納履歴のデーターベースの構築(ブラックリストづくり)については、「安易に保証を拒否することにつながりかねない」という意見がある一方、「民間事業者が取り組むこと自体禁止できない」との意見も出された。
 今年の2月から家賃保証会社の団体は借主の滞納歴などの信用情報のデーターベースの稼動を始めており、借主の同意を求めるとしても、同意しなければ借貸住宅を借りられない恐れが出てきた。

定期借家がトラブル防止?

 この他、「最終とりまとめ」では「契約解除事由の予測可能性の向上方策の検討」として、「契約解除の判断基準の客観化の立法措置」、「円滑な明渡しのために簡易に債務名義を得る仕組みの検討」、「定期借家制度の普及促進」等借主を簡単に追い出すことができる対策などが盛り込まれた。
 とくに、定期借家制度については、「更新されることなく、確定的に賃貸借が終了することから、明渡しに関するトラブルの防止にも資する面がある」との提言が盛り込まれた。
 これらの提言は、日本経団連や不動産業界の見解に沿った内容で、定期借家制度の廃止と正当事由の見直しなど借地借家法改悪反対の運動が今年の大きな運動の課題となってきた。




組合の催物とお知らせ

■城北借組「西武デパート相談会」
 2月17日(水)・18日(木)午前11時〜午後5時(午後1時〜2時昼食休憩)まで、西武デパート7階お客様相談室。
 「無料法律相談会」
 2月19日(金)午後2時から城北法律事務所。相談者は要予約。
■多摩借組「定例法律相談会」
 2月13日(土)午後1時30分から組合事務所。担当は山口真美弁護士。相談者は要予約。
■江東借組「法律相談」
 毎月第2水曜日午後6時から大島総合区民センター、担当西田穣弁護士。
■葛飾借組「定例相談」
 毎週水・金曜日の午前10時から組合事務所。連絡・(3608)2251。
■足立借組「定例相談」
 毎月第2日曜日午後1時から2時、組合事務所。連絡(3882)0055。
■荒川借組「夜間相談会」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から組合事務所。
 「法律相談」
 毎月第3金曜日の午後7時から組合事務所。連絡・(3801)8697。相談者は要予約。
■世田谷借組「相談会」
 毎月25日午後2時〜7時まで組合事務所。連絡・(3428)0828。
■北借組「法律相談」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から赤羽会館。相談者は要予約。連絡・(3908)7270。
■大田借組「第44回定期総会」
 3月28日(日)午後1時から大田区消費者生活センター。連絡・(3735)8481。




地上げで頑張った!

荒川区西日暮里のNさん

一年で地上げ屋撤退

元の地主に土地が戻った

 荒川区西日暮里1丁目で昭和35年頃から36坪を借地しているNさんは、一昨年10月に地主から「諸般の事情で不動産を手放すことになったので以後の地代と賃貸借をどうするかは新地主と話し合ってくれ」と連絡が入った。数日後、新地主と名乗る業者が来宅し、「土地を買取るか明渡すか二者選択しかない」と言われた。
 Nさんは組合に入会し、今後話を聞く時は組合事務所以外では拒否する。万一自宅に来た時は110番する。以上を業者に通告した。話し合いでは、「土地を買う気はない。立退く意思もない。これ以上話し合っても無意味である」ときっぱりと断った。
 ところが、数日後業者は自宅に連絡もなく訪問してきたので、Nさんは警察に通告し、パトカーと交番の巡査が数人駆けつけてきて注意され、業者はその場から引き上げた。その後、地代は組合事務所に業者が来て集金していたが、昨年10月で1年が経ち突然文書で「借地は元の地主に返したので当社は一切関係ありません」と撤退宣言。主張通りに解決したNさんは「組合に入って本当によかった」と感謝の言葉を寄せている。




 

老朽化で明渡訴訟

建物朽廃の根拠なし

裁判所が家主の請求棄却 台東区

 Cさんは台東区三ノ輪の借家に昭和50年3月から居住している。この借家はCさんの奥さんの生家であり、奥さんの親が昭和11年から借りていたものを承継したものである。建物は昭和2年8月に保存登記されたもので、既に築後80年以上を経過した3軒長屋である。Cさんは、その中央部分を借りている。
 家主は長屋の隣の4階建てビルに住む自営業者であり、そのビルと長屋を取壊して所有地と借地に跨る建物を建築する心算であった。
 家主は平成18年1月26日に建物の老朽化を理由に明渡請求訴訟を提起してきた。
 裁判の争点は(1)本件建物が朽廃しているのか、(2)家主の解約申し入れについて正当事由が認められるのかが争われた。
 家主側は1級建築士による調査報告書に基づいて、「地震時には倒壊の可能性もあり、危険な建物である。建物は自然的腐食状態によって建物の社会的経済的効用を失った状態にあって、既に朽廃している。したがって、本件建物部分の本件賃貸借契約は終了した」と主張した。
 借家人側は、「調査報告書」は本件建物を直接調査したものではなく、本件建物以外の部分を撮影又は調査したものに基づく結果に過ぎず、本件建物部分について、何ら客観的資料を示すものではないと反論した。
 裁判所は、家主側が「建物朽廃」の根拠としている「写真撮影報告書」及び「調査報告書」は現物建物を実際に調査したものでないことを指摘し、「同報告書の耐震性に関する意見についても本件建物部分以外の本件建物を調査した結果に止まるものであることに照らすと、原告の主張は、採用することができない」として、明渡請求には理由がない判示とした。結果、裁判所は家主の請求を棄却した。


毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

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