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東京借地借家人新聞


2008年7月15日
第496号

全借連第27回定期総会

大阪で7月4日・5日に開催
運動の原点で活発な討議
岸本羽衣国際大学教授がセイフティ・ネットで講演

全借連第27回定期総会で記念講演する岸本羽衣国際大教授
全借連第27回定期総会で記念講演する
岸本羽衣国際大教授

 全国借地借家人組合連合会の第27回定期総会が、7月4日・5日大阪キャッスルホテルにおいて延75名の参加で開催された。東借連から代議員・評議員・オブザーバーを含め9組合・11名が参加した。
 総会初日は、全借連の佐藤副会長(東借連会長)の開会挨拶で始まり、河岸会長の挨拶、日本共産党の山下芳生衆院議員が来賓の挨拶をした。
 次に、特別講演として前日本住宅会議理事長の岸本幸臣氏(羽衣国際大学教授)より、「住宅セイフティ・ネットで住宅貧困は解消できるか」と題するテーマで記念講演が行なわれた。岸本氏は、現在の住宅セイフティ・ネット法は、公費負担の削減と民間市場の拡大によって、富裕階層はより豊になる一方で最低居住水準以下の世帯(195万世帯)は市場から取り残され、格差はさらに拡大すると指摘した。居住の権利を実定法にしてこそ住まいの人権が保障されることを強調した。
 運動方針が船越副会長より提案され、3つの分散会で5日の午前中まで全国の組合の経験の交流と運動方針の中の「全借連運動の原点」と「組織の拡大強化」を重点に活発な討論が行なわれた。
 5日の午後の全体会議で分散会の報告がされ、船越副会長のまとめの後、運動方針・決算報告・予算案等が満場一致で採決された。新役員には東京から佐藤副会長、細谷事務局次長など9名の役員が選出された。




固定資産税評価証明発行で
都主税局が懇談拒否
総務省との見解相違追及で

曽根都議と懇談する役員
曽根都議と懇談する役員

 東京都主税局は、固定資産税課税台帳の評価証明と閲覧問題で「契約書が存在せず、賃料を供託している場合には、供託書の提示のみでは真に権利を有する賃借人であるかどうか確認できない」との見解を昨年10月に発表した。
 東借連では、昨年11月に主税局と交渉し、評価証明を発行できない法的根拠を求め、総務省及び法務省に照会するよう求め、今年2月に総務省固定資産税課と会談し、都主税局の見解について総務省の意見を聞いた。
 総務省は「借地借家人に対しては原則公開であり、真に賃借人であるかどうかの立証責任は税務当局にある」との説明がされた。
 6月19日に日本共産党曽根肇都議を通じ主税局に要請書を渡し懇談を申し入れたところ、6月24日になって主税局は「東借連への回答について総務省に確認したところ、そういう話はしていないといっている。事実と違う。東借連の要請内容では土台が違うので懇談には応じられない」と拒否してきた。
 6月27日に東借連の役員6名は、曽根都議と面会し、今後の対応について相談した。主税局が東借連との懇談を拒否してきたことは、総務省との協議で主税局の先の見解に矛盾が生まれ、追い詰められた証拠である。都主税局の見解は借地借家人に原則公開を認めた平成14年の地方税法改正の趣旨を逸脱するもので、東借連では引続き不当な見解の撤回を求めていく。現在多くの地方自治体では契約書がなくても供託書のみで評価証明を発行している。




礼金ゼロ・敷金ゼロ物件要注意
実は鍵利用の一時使用契約

スマイルサービスの施設付鍵利用契約
スマイルサービスの施設付鍵利用契約

 敷金礼金ゼロいわゆる「ゼロゼロ物件」を扱う(株)スマイルサービスは、「施設付鍵の一時使用契約」として賃貸借契約を認めず、契約書には「本契約は賃貸借ではありませんので居住権、営業権は認められない」と明記し、会員制の「鍵利用権」としている。また、「一日でも利用料を遅延した場合は、違約金として利用料の10%を支払う」という内容を承諾書に記入している。
 これの違法性を問いただした利用者は、(株)スマイルサービスから違約金を取り戻した。遵法意識に欠けた企業から「取り戻せるお金は確実に回収しよう!」「一人の泣き寝入りも許さず最後まで徹底的に弾劾しよう!」と6月1日都内で「スマイルサービス相談会」が開かれた。
 相談会には反貧困ネットの湯浅誠氏をはじめ弁護士、マスメディア数社、青年達が始めた借家人組合準備会が参加し、今後の運動についても論議が交わされた。6月10日には(株)スマイルサービス本社近くの新宿大ガード下で宣伝行動を行なった。ビラを受け取った人は「スマイルとは違うゼロゼロ物件に住んでいるけど、注意しないとね」など声をかけてきた。弁護士は「裁判では原告を救うことしかできません。もっと被害に遭われている多くの方を救う為には皆さんのご協力がぜひ必要です」と拡声器で訴え、通行人の共感を呼んだ。青年達の連帯の力が、借地借家法逃れの「貧困ビジネス」に断罪を下すことは間違いない。
(参考 HP悪徳不動産会社スマイルサービスとの闘い)




底地買いで頑張った
豊島区雑司ヶ谷の向山さん

底地買うか借地権売るか
大阪の地上げ屋二者選択を強要

底地が売却された豊島区雑司ヶ谷付近
底地が売却された豊島区雑司ヶ谷付近

 向山さんは、豊島区雑司ヶ谷で借地上の建物を数年前に購入し住むようになった。昨年、地主から底地を大阪の業者に売買したので今後はそちらに地代を支払うように通知された。
 その業者は、底地を買取るか、借地権を売却するか二つに一つと言ってきた。数年前に借地権付の建物を買取ったために買取る資金もなく、かといって売却して他に住むところも難しいと考えていた向山さんにとって、相手の対応が怖く感じてきた。知人の紹介で組合に相談に来た。
 組合では、業者のいう二つに一つではなく、今までどおり借地として住み続けることができることを説明した。同時に相手の対応に恐怖を感じていたので、業者に組合事務所に来てもらうことにした。業者は、向山さんには直接面会しないこと、地代も組合事務所を通して集金に来ることを約束した。同時に、この同じ地域には弁護士も含め数人がいた。他の借地人はこの弁護士を通じて、数ヶ月で話合いをまとめ、底地を買取ったり、借地権を売却してしまった。向山さんは、組合と相談して、業者が提示した三分の一ならば買取れることを通告した。業者は、この価格では他の借地人との整合性が保てない、何とかしてくれないかと泣きついてきたが、この価格以上ならば、借地のままでいく事を繰り返し通告した。最後は、こちらの提示した価格で売買が成立した。向山さんは「こんなに安く買取ることができたのも組合のおかげです。」と語った。




 

借地人が勝訴
東京地裁が明渡し請求で判決
土地の有効利用を否定し更新料の請求も全面棄却

大田区

 今年の4月25日の判決で内容は大田借組組合報に掲載された。
 大田区北糀谷2丁目に土地約64・4坪を賃借する小山田さんは、650万円の更新料を請求されて過去にない深刻な不況で支払いは困難と、知人の紹介で組合長に相談して入会した。借地法上建物が現存しており、法定更新もやむを得ないと更新料の支払いを拒否する旨を小山田さんは組合を介して地主に通告。
 地主はこれまで更新料を支払うか、土地を明渡すかと借地人らに求め、明渡しさせた土地は賃貸住宅建築する等の活用して来た。小山田さんより通告を受けた地主は、待っていたとばかりに自ら土地の使用と有効利用を理由に更新拒絶明渡し、予備的請求として更新料を求めて東京地裁に提訴してきた。2年余に及ぶ小山田さんの奮闘内容は、組合の集まりや定期総会で報告されて組合員の注目だった。
 地主の提示額か、裁判所提示の相当額と引き換えに土地明渡せとの求めに応じず、和解へと進み更新料での協議となる。当初の請求の半額以下の提示にも拒否するとさらに金額を下げて、過去の支払い事例を示されて苦悩する。小山田さんは、組合長ら多くの組合員に激励されて、更新料不払いを主張して、弁護士の奮闘による判決を求めた。
 判決は、地主の土地使用の必要性は乏しく、借地人の土地を使用する必要性は相当に高く、地主には人を押し退けてまで使用する必要性はないことは明らかであると有効利用を否定した。また、東京都内においては更新料の支払いが一般的な慣習となっており、過去に二度の更新の際にも更新料を支払っており、当事者間の慣習に従うのが当然との地主の主張に対し、借地契約が法定更新される場合にも更新料の支払いがなされるという事実たる慣習があるとまでは、本件全証拠によっても未だに認めるに足りないというべきである。地主の請求をいずれも棄却する。以上のように東京地裁は見事な借地人勝利の判決を下した。




【借地借家相談室】

備付けのエアコンの修理代金は
修繕特約がある場合でも家主の費用負担

(問)賃貸マンションの備付けのエアコンが故障し、不動産管理会社に修理を依頼したところ、特約で修理は賃借人負担となっているので、電気店に自分で修理を依頼するようにと断られた。取敢えず自分で電気店へ修理を頼み、室外機のコンプレッサー不良交換で、5万円の修理代を支払った。本来備付けの設備は、貸主が修理代金を負担するのが道理だと思うのですが。

(答) 民法606条1項で賃貸人は修繕義務を負っている。賃借人の故意・過失がない限り、賃借人が修繕をした場合、賃貸人に対してその費用を請求することが出来る。但し、同条は、任意規定であり、特約で修繕義務を賃借人に負担させることは可能である。しかし特約を結べば何でも認められる訳ではない。
 (1)「借家人の負担において修繕を行う旨の特約をもって賃借人に積極的に修繕義務まで課したものと解することはできない。仮に修理特約により何らかの修繕義務を負うものとしても、その範囲は小修理・小修繕の範囲に限られるべきである」(名古屋地裁平成2年10月19日判決)。
 (2)「修繕特約は、一定範囲の小修繕については賃借人の全額負担とする旨を定めたものであるといえるが、居住用建物の賃貸借における特約の趣旨は、通常賃貸人の修繕義務を免除したにとどまり、更に特別の事情が存在する場合を除き、賃借人に修繕義務を負わせるものではない」(仙台簡易裁判所平成8年11月28日判決)。
 即ち、家主の修繕義務を免除したにとどまり、積極的に借家人に修繕義務を課したものではない。仮に修繕特約によって賃借人が修繕義務を負うとされる場合でも、少額の費用で済む「小修繕」についてのみ修繕義務を負い、「大修繕」については修繕義務を負わない。従って、大修繕に関しては修繕特約を結んでも無効というのが裁判例である。
 結論、修理代金が概ね1万円以下の場合が小修繕と言われる。相談者のエアコン修理は、小修繕とは言えない。従って、修繕義務を負わない。賃借人が自ら修理費用を負担した場合は、賃貸人に対して、民法608条により、直ちに支出した費用の全額を費用償還請求できる。賃貸人が修理費用を支払わない場合は、家賃と相殺することが出来る。




組合の催物とお知らせ

■城北借組 「西武デパート相談会」
 8月20日(水)・21日(木)午前11時〜午後5時(午後1時〜2時昼食休憩)まで、西武デパート7階お客様相談室。
 「無料法律相談会」
 8月22日(金)午後2時から城北法律事務所。担当田見高秀弁護士。相談者は要予約。
 「借地借家問題講座」
 8月2日(土)午後1時から板橋区グリーンホール。連絡・(3982)7654。
■多摩借組 「我が家の耐震診断と耐震補強の学習会」
 9月20日(土)午後1時30分から国分寺労政会館第1会議室。講師は生協・消費者住宅センターの建築士他。参加無料。
 「定例法律相談」
 9月6日(土)午後1時30分から組合事務所。相談者は必ず予約。連絡・042(526)1094。
■江東借組 「法律相談」
 毎月第2水曜日午後6時から亀戸カメリアプラザ(亀戸文化センター)。連絡・(3640)4694。
■葛飾借組 「定例相談」
 毎週水・金曜日の午前10時から組合事務所。連絡・(3608)2251。
■足立借組 「定例相談」
 毎月第2日曜日午後1時から2時、組合事務所。要事前連絡。連絡・(3882)0055。
■荒川借組「夜間相談会」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から組合事務所。
 「法律相談」
 毎月第3金曜日の午後7時から組合事務所。連絡・(3801)8697。
■世田谷借組 「相談会」
 毎月25日午後2時〜7時まで組合事務所。連絡・(3428)0828。
■北借組 「法律相談」
 8月6日(水)・20日(水)午後7時から赤羽会館。連絡・(3908)7270。





毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

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