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東京借地借家人新聞


2008年5月15日
第494号

相談員要請学習会開催

第1回は民法と借地借家法
借地借家法は民法に優先
戦争中国策で地主の力抑えた正当事由


4月19日に開催された「相談員養成学習会」
4月19日に開催された
「相談員養成学習会」

 東借連の「相談員養成学習会は」が4月19日午後1時30分から豊島区東部区民事務所において、9組合及び全借連の神奈川・千葉県連から26名の参加で開催された。
 野内副会長の司会で開会され、佐藤会長が主催者を代表して挨拶した。学習会の講師の東借連常任弁護団の榎本武光弁護士より1時間30分にわたって借地借家法との関係で「民法の賃貸借」について講演がされた。

■借地借家法は民法の特別法
 榎本弁護士は、はじめに相談員になるための心得として、「分ることと分らないことを区分する。分らないことを相談者が喜ぶようないい加減な回答をしてはいけない。相談者のかかえている問題、生活の背景を含めて事実関係を詳しく聞くことが大事で、分らないことがあっても、後で調べて他の人に聞いて正しい結論を得ることが出来る」と指摘した。相談員は「相談の内容について、問題の周辺のことも調べていくと、相談を受けるに従って知識が広がり、相談員の力量を高めることが出来る」と説明した。
 今回の学習会は第1回目として、借地借家法が生まれてきた背景、基盤、民法との関係について、借地借家人にとっての武器である借地借家法をどういう風に使っていったらよいか等が説明された。
 借地借家法は、民法の基盤の上の特別法の関係になり、借地借家法や契約にない事項は民法の定めに従うことになる。民法の存続期間、不動産の対抗力など不十分な点があるが、借地借家法では借地借家人の権利を保護する手当てがされ、「借地借家法が民法に優先する関係になっている」と説明した。

■正当事由の歴史的経緯学ぶ
 次に、借地借家法の正当事由制度は、戦争中に銃後の家族を守るためと称して法律が作られたが、地主の力が圧倒的に強かった時代にこれまでの運動が実り、国策で地主の力を抑え、その後も引続き居住の安定を図ってきた歴史的な経緯のある制度で、法定更新とともに守っていかないといけないことが強調された。
 また、契約は対等な当事者を前提にしているが、貸主より力の弱い借主は不利な契約を押し付けられることが多い。消費者契約法では消費者を不利な契約から保護するために制定された。借地借家人にとっては、借地借家法と消費者契約法の2つの武器があることが指摘された。




定期借家制度で国交省と懇談
普通借家契約からの切替え等を質問
法改悪反対全国連絡会


国交省住宅局と懇談する全国連絡会代表
国交省住宅局と懇談する
全国連絡会代表

 借地借家法改悪反対全国連絡会は、定期借家制度導入後の現状と課題や住宅政策について国土交通省と4月21日午前10時30分から1時間半ほど懇談した。国土交通省から住宅局住宅総合整備課の三浦賃貸住宅対策官が応対した。
 規制改革会議の「借家制度の改善」の答申については、「借地借家法の所管は法務省であり、国土交通省は住宅政策として活用しやすいようにPRし普及させる」と述べ、「議員立法なので国会の動きをホローしていく」と国交省の役割について語った。
 全国連絡会の代表は、定期借家制度が借家人の追い出しに利用されたり、「再契約可」と契約書に書いてあっても期間満了で借家人が追い出されている実態など指摘し、同制度について借主側の実態を調査すべきであると訴えた。
 また、定期借家推進協議会が平成12年3月1日以後に契約した居住用の普通借家契約については、当事者が合意により定期借家契約への切替は可能であるとの解釈をしている問題については「グレーゾーンの問題で法務省の見解を聞いてみたい。当時の国会の審議を重く受け止める必要がある」と回答した。定期借家制度は、特別措置法の附則3条で法施行前にされた建物賃貸借の契約当事者が合意の上でも普通借家から定期借家の切替は禁止されている。





借地更新料で頑張る
豊島区西池袋の大川さん

地価の5%の高額請求
法定更新も視野にじっくり交渉

大川さんが居住する豊島区西池袋付近
大川さんが居住する
豊島区西池袋付近

 豊島区西池袋に住む大川さんは親の代から借地し、30年前に堅固な建物に建替え、契約更新を行った。
 今回の更新に際して、地主は不動産業者を代理人として更新料(坪あたり12万円)と賃料の値上げ請求を行い、併せて契約内容に「(1)増改築に際しては地主の承諾が必要。(2)更新に際しては合意更新、法定更新にかかわらず相当金額の更新料を支払う」との提案をしてきた。契約書には更新料を支払うとの約定もないので、まず更新料を支払うとの法的根拠とその算出根拠を示すように通知した。
 代理人の不動産会社は「更新料支払いの根拠はない。慣習として存在している。支払わないと建替えとか借地権の譲渡のときに困りますよ。算出根拠は、土地の価格の5%が弁護士と不動産業者の見解である」と強弁した。
 5月末の期間満了前に決着をつけないといけないと考えていた大川さんに、組合では「期限満了までに合意更新が出来ない場合は、法定更新し、じっくり話合うことができること。またこの契約は、増改築については地主の承諾を必要とするという記載がない契約であること。借地権の譲渡も地主が承諾しなければ、裁判所の承諾があれば出来ること」などを説明した。組合の説明を聞いた大川さんは「じっくり交渉していくことにしました。借地権も大事な財産ですので」と話した。



 

過去2回の借地更新料請求

台東区桜木

 台東区桜木2丁目に住む杉山さんは昭和27年に90坪の借地契約をし、木造建物を建てた。契約書には契約期間が定められていなかった。地主は昭和47年に契約更新を言ってきた。組合に加入していた杉山さんは期間の定めの無い借地契約は「借地法」2条で木造建物の場合は30年と規定されているから、10年後が更新だと主張。その6年後、杉山さんは亡くなり長男が借地権を相続し、昭和57年と平成14年の更新は組合と打合せ通りに法定更新を選択し、更新料を拒否した。先月、突然地主の相続人から過去2回の更新料分として560万円を請求してきた。組合に相談したところ、更新料の請求権は5年で商事消滅時効になるという判例(東京地裁平成3年5月9日判決)があるので請求は拒否出来るという説明を受けた。早速、時効の援用と更新料請求を拒否する旨の文書を内容証明郵便で地主に送った。




【借地借家相談室】

20年の借地契約の途中で
堅固建物へ建替えたが
30年へ自動延長されるか

(問)昭和63年に父名義で借地の更新をした。その3年後に父が亡くなり、私が借地権を相続した。建物が老朽化していたので、平成5年に建替承諾料290万円を支払って木造2階建てから鉄骨4階建てへ建替えた。だが、借地契約書は父名義・存続期間20年のままで、存続期間30年の契約へ書換えずにいた。
 地主は20年経ったので借地の更新だと言って坪5万円の更新料を請求してきた。堅固建物を建てたのだから契約書を取交わさなくても、存続期間30年の契約に自動的に延長されるのではないか。

(答) 借地借家法は平成4年8月1日から施行されている。それ以前に設定された借地権については「建物の滅失後の建物築造による借地権の期間の延長に関してはなお、従前の例による。」(借地借家法附則7条)とされている。この場合には借地法が適用される。
 借地法7条は借主が残存期間を超える耐用年数のある建物を再築することに対して貸主が遅滞なく異議を述べなかった場合、借地権は建物滅失の日から、堅固な建物については30年間、その他の建物については20年間存続する。但し、残存期間がこれよりも長い時はその期間による。このように建物再築による期間延長を規定する。即ち再築による法定更新を定めている。
 ここでの「滅失」は「建物滅失の原因が自然的であると人工的であると、借地権者の任意の取壊しであると否とを問わず、建物が滅失した一切の場合を含む」(最高裁昭和38年5月21日判決)。即ち、火事による建物の焼失や地震・台風による建物の倒潰の他に借主が再築のために建物を取壊す場合も含まれる。
 なお、借地法4条、6条による法定更新の場合は朽廃による借地権の消滅が問題になるが、7条による法定更新の場合は期間の途中で朽廃があっても借地権は消滅しない点に違いがある。
 結論、相談者の場合は、平成5年に貸主が堅固建物への建替えを承諾しているから建物取壊しの日から存続期間30年の借地契約が法定される。
 条文上は存続期間の起算点を滅失日としている。しかし時間が経過すると滅失日が確定できない場合もある。建物保存登記日を起算点とした例もある(東京地裁昭和48年7月25日判決)。



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毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

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