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2008年4月15日
第493号 |
08年予算要求で都が回答
東京住宅連が都市整備局と交渉
格差と貧困が住宅問題に
都営住宅新規 ゼロ建設を続ける都の姿勢を追及
3月26日、都庁で都市整備局と東京住宅運動連絡会(東借連、公営住宅協議会、公団住宅自治会協議会、公社住宅自治会協議会、都庁職住宅支部など)との間で、「2008年度東京都予算等に関する要求書」についての回答とその交渉が行われた。
連絡会に参加する各団体からは、格差と貧困の問題がワーキングプアーやネットカフェ難民、ホームレスとなって住宅問題にもあらわれていると指摘し、さらに石原都政になってからの9年は、東京都の公営住宅は新規に建設されることがなくなり、都営住宅の応募倍率は年々増加し、平成17年度で全国平均(9・9倍)をはるかに上回る32・1倍という異常なことを指摘し、都営住宅の新規建設を強く要求した。しかしながら、東京都の回答は「世帯数を上回る住宅が供給されていることや将来の人口の動向などを考慮し、そしてストック活用などで公平かつ的確な供給に努めていきます」など机上の数字合わせの発言に対して各団体から強い批判がだされた。
東借連も佐藤会長が事前に提出した文書での質問等と併せて、(1)公的な保証人制度の確立問題、(2)問題が続出し消費者契約法に違反する保証会社の委託契約問題、(3)管理会社のトラブル問題、(4)原状回復のガイドラインの普及問題、(5)更新手数料問題などを組合の相談事例などを紹介しながら重点的に質問したが、都市整備局の回答は従前のものをこえる発言はなかった。
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明渡しの相談が27%
ネットを通じて組合を知った4割
新規相談者9月〜2月調査
東借連では、昨年9月より毎月の新規相談者の実態調査を行っている。今年2月までの調査結果がこのほどまとまった。調査内容は、相談者の数(借地・借家別)、相談内容、組合を知った動機、入会者の数、入会者の建物用途以上5項目で、東京の11単組の調査結果を集約した。
半年間の相談者の数は624件で借地252件、借家が372件と借家の相談が6割を占めた。相談内容では明渡しが163件(27%)を占め、借家の老朽化や所有権の移転等に伴って明渡しをめぐる相談が急増していることが明らかになった。次に更新料が117件(20%)、敷金が68件(11%)、賃料が50件(8%)、増改築17件(3%)と続き、その他の相談が187件(31%)と多かった。その他の相談内容は借地権の譲渡、等価交換、底地買い、騒音等近隣トラブル、借家の管理や設備、地境、相続、物納、賃料滞納と様々な相談が組合に寄せられている。
組合を知った動機では、インターネットが240件で第1位の40%を占めた。東借連のホームページや各組合のブログの開設とインターネットの普及で借地借家人組合が急速に知られるようになってきたことを証明した。その他知人の紹介16%、組合員の紹介12%と組合が口コミで知られていることが明らかになった。消費者センターから組合を紹介されたケースも9%を占めた(図2参照)。とはいっても組合の知名度はまだまだ低く、宣伝の強化が必要となっている。
入会者は131人で借地63人、借家68人でほぼ同じ割合で、借家の相談は多い割合に入会者が少ないことが特徴といえる。建物用途では、入会者のうち住宅が104人と8割を占めた。
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更新拒絶で頑張る
地主の嫌がらせ負けず
地代の供託を20年間継続
豊島区駒込で借地している十数人のグループは、20年前の更新の際に更新料の問題で地代の受領を拒否された。以来、20年間にわたって供託をしてきた。グループとして毎月第3水曜日に、地代の徴収をかねて全員が集合してきた。
この間にも、地主からの様々な嫌がらせもあった。修理修繕をしている借地人に対して、大修繕や改築に当たるなどと主張し、中止を要求するなどの行為や大声でわめくなどのいやがらせ行為など後を絶たなかった。
その地主から、この2月に借地人十数人に内容証明の郵便が送付されてきた。びっくりした借地人は、お世話になっている組合に相談に来た。内容は「この3月で期間満了となるが、更新を拒絶する。現在供託されているお金は、使用損害金の一部として受領する。借地として使用している土地を期限までに明渡すよう通知する」と記載されていた。組合と相談し、借地人も現在、借地している土地には建物が存在するので契約を更新し、引き続き住み続ける意思を表明することにした。内容証明で十数人分を送付したところ、地主は内容証明書の受け取りそのものを拒否してきた。正当の事由のない更新拒絶であることを説明し、全員で権利を守ることにした。
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調停申立で家賃減額に
台東区東上野で約30㎡の店舗でスナックを営業している山本さんは平成16年の更新に際し、家主が100万円の更新料を請求してきた。
とても支払えないので、これを拒否すると家賃4万5千円の値上げを要求して来た。これも拒否すると家賃の受領を拒否したので、毎月13万円の家賃を供託してきた。
この不況でお客が減って経営が苦しくなったので、平成18年4月組合と連名で毎月の家賃を10万円に値下げするよう家主に請求した。その時は家主代理人の弁護士から応じられないという回答があった。
しかし、平成19年の2月に東京簡易裁判所に「家賃減額」の調停申立を行い、同年2月23日に裁判所から第1回目の調停期日が3月17日午前11時という通知があった。
すると、調停の通知が届いた日に家主代理人の不動産業者から「家賃は10万円にするが、3月の家賃支払からにしてほしい」との家主の回答を連絡してきた。
10万円への家賃減額請求が調停を1回もやらずに見事に成功した。
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【借地借家相談室】
法定更新された場合は
契約書で特約した更新料を
支払う義務があるのか
(問)前回の更新の際、更新料支払いが一方的に書き込まれた借地契約を呑まされた。今回法定更新を選択した場合でも更新料を支払わなければならないのか。
(答)更新料支払の理由として多くの裁判例で指摘されるのは、(A)賃料の不足を補充する趣旨(例えば賃料の前払い)(B)賃貸人の更新拒絶権・異議権放棄の対価(C)合意更新された期間は明渡を求められず、法定更新の場合の、解約申入れの危険を回避出来るという利益の対価、以上3点である。(A)は、最近余り強調されず、中心は(B)と(C)に移っている。
更新料支払特約があって法定更新した場合の裁判例で検討すると、(1)「肯定説」更新料特約は契約自由の原則によって合意したのであるから合意更新は勿論であり、法定更新にも有効である。即ち更新料特約が有る場合、賃借人は更新料支払の義務がある。(2)「否定説」更新料特約は合意更新の場合にのみ有効であり、法定更新になった場合は効力を有しない。即ち法定更新した場合、賃借人に更新料支払の義務はない。
江東借地借家人組合の組合員(借地人)の実際の裁判例で検討してみたい。
裁判では、法定更新した場合、契約更新料の支払義務の有無が争点となった。借地人は裁判で前記(2)説の立場から更新料支払理由の前提となっている(B)と(C)の事実を欠くので地主の更新料請求は根拠がないと主張した。
だが東京地裁は更新料支払合意が法定更新の場合を除外するものとは認められないとして(B)と(C)を否定し、(1)の立場から更新料支払を命じた(2000年3月13日判決)。
それに対して、東京高裁は借地人の主張を認め、(2)の立場から借地人に更新料支払の義務はないと判示した(2000年9月27日)。借地に関してはこの見解が裁判例では有力になっている。最高裁は(2)の見解に立つ東京高裁の判決を是認し、地主の要求を棄却した(2002年2月22日)。既に、(2)の見解に立つ同趣旨の借家に関する最高裁の判例(1982年4月15日)がある。相談者は法定更新を選択すれば裁判例から更新料の不払いは可能である。但し実行する場合は組合の顧問弁護士とよく相談する必要がある。
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