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東京借地借家人新聞


2008年2月15日
第491号

持続できる組合に
東借連第1回評議員会開催

宣伝の強化で組織拡大を
理論学習会の開催で相談員の養成確認

評議員会で報告する細谷専務理事
(左から2人目)
討議に参加する理事と評議員

 東借連第1回評議員会は、1月30日午後6時30分から豊島区勤労福祉会館において理事・評議員18名の参加で開催された。
  佐藤会長の司会で開会され、報告事項として2007年拡大集計報告を細谷専務理事、2007年年間収支報告を桜井会計より報告された。

都市整備局交渉2月5日に

討議事項は(1)借地借家人をめぐる情勢の特徴、(2)事業用定期借地権の期間延長と法改悪反対運動、(3)理論学習会の開催、(4)住宅要求と都市整備局交渉、(5)連帯保証人代行と保証委託契約書問題、(6)組織活動の改善と組織の拡大強化以上について、資料に基づいて細谷専務理事より報告・提案された。
 理論学習会については、各組合で相談員の養成に向けて、「借地借家法」と「消費者契約法」をテーマに常任弁護団の協力を受け、4月頃実施することを確認した。都営住宅の新規建設等住宅要求についての東京都・都市整備局交渉を2月5日午後2時から行なうことを決定した。

保証会社の被害の実態調査

 保証会社の保証委託契約書については、悪質な原契約書と保証委託契約書等の資料を集め、家賃滞納した借家人に対するドアを施錠するなど強制的に部屋の出入りを出来なくする等の保証会社による被害の実態を各組合で調査する。また、各行政区で保証会社が「民間賃貸住宅入居支援事業」などを通じ協定業者に指定されている等の実態を調べることを確認した。  組織の拡大強化では、東借連でリーフやチラシなど拡大に効果のある宣伝物を作成することを検討し、組織の拡大に足を出していくこと等が確認された。




保証会社の保証委託契約書で
消費者機構日本に申入れ

 賃貸借契約を結ぶ際に、頼める保証人がいない、また親族でも保証人を頼みにくいという借主が多い。そんな借主の弱みに付け込んで行なっている事業が「家賃保証サービス」だ。借主と家主が賃貸借契約を結ぶと同時に、保証会社は借主と賃貸保証委託契約、家主とは賃貸保証契約を締結する。これによって、保証会社は借主が家賃を滞納しても保証会社が貸主に滞納家賃を立替払いをし、夜逃げをした借主の荷物の処分費用も負担する。問題なのは、保証委託契約書の中身で、保証会社大手の日本セーフティ株式会社の契約書には、家賃を滞納すると「保証物件内に立入り、鍵・カードの交換、入口の暗証番号変更、施錠等の処置を行なうことに乙(借主)は承諾し異議・損害の請求を申立てない」、「賃貸人からの本賃貸借契約解除を承諾する行為を委託するものとする。乙が本賃貸借契約に違反し、2ヶ月以上全部あるいは一部の家賃滞納をした場合、または本条第2項(更新保証料を支払わない場合)に違反した場合において、甲(保証会社)は賃貸人からの本賃貸借契約解除の承諾を行なうことを乙は承諾し、異議・損害の請求を申し立てない」という借主には一方的に不利な内容となっている。
 「家賃を一ヶ月滞納しただけで貸室の退去を求められた」、「滞納家賃を支払っても明渡しを請求された」、「家賃の滞納で転居したら親に対し保証会社が家賃の激しい取り立てを行なっている」、「4日以内に滞納家賃を支払わないと貸室を封鎖すると予告通知が来た」等の相談が組合に寄せられている。東借連では、こうした悪質な保証委託契約書が消費者契約法に違反し、今後社会的問題なることが予想されるため、1月に消費者機構日本に団体訴訟の差し止め請求の検討を要請した。今後、保証委託契約の被害の実態を調査し、保証契約と原契約の資料を集める活動をすすめていくことが重要である。




原状回復で頑張ってる
荒川区南千住の渡邊さん

敷金返還で少額訴訟に
納得行かない原状回復費用

 昨年12月に入会したデザイン会社経営の渡邊さんは、11月に港区赤坂の事務所を移転した。会社創業当時は同じビルの601号室に10年程居り、その後平成5年から同階の604号室に移った経緯がある。今回14年借室していた604号室の敷金返還にともないビルオーナーから原状回復費として28万円を敷金より差し引くという敷金預かり金精算書を受取った。
 この金額に承服できない渡邊さんは移転先の荒川借組のの事務局長の元へ相談に行った。渡邊さんの借りていた604号室は入室当時以前から浴槽を撤去した状態の浴室を含めて約11坪。ビルオーナーから出された原状回復の業者見積はクロス張り替え(天井・壁・梁)、床パンチカーペット張替え、ジプトン天井ペンキ、その他クリーニング・ゴミ処理という内容だった。
 渡邊さんの言い分では「(1)14年前の入室時はリフォームされておらず、その時点からクロスは所々剥がれていた(2)天井の一部は雨漏りのシミができていた(3)広告デザイン制作なのでパソコン中心の仕事は清潔さ必須で土足厳禁で来客も多く、見た目もきれいにつかっていた」とのことで、引っ越し当日業者が付けたというビル入口カーペットの靴跡も管理人立会いで清掃したが、クリーニング代として4万円の請求がされている。
 裁判は29日で、「次号で良い報告できるように頑張ります」と渡邊さんは語っている。


 

更新料無効訴訟で不当判決

京都地裁

 京都地裁(池田光宏裁判長)は、1月30日更新料に関する取り決めは有効と判断し、更新料50万円の返還を求めた借主側の請求を棄却した。借主側は直ちに控訴した。本件は、家賃月額4万5千円で、毎年10万円の更新料を支払う契約。判決では、更新料については賃料の補充(賃料の前払い)の性質を持つと指摘し、「本件の更新料は、契約期間や月額家賃に照らすと過大ではない」と消契法10条違反に当らないとしている。一方法定更新の場合は更新料を支払う義務はないとの判決もある。年10万円の更新料は年間賃料の18・5%とサラ金並みの割合で過大でないといえるのか疑問の意見も出ている。




【借地借家相談室】

敷金返還の可能性が殆ど無い場合は
家賃の不払いで実質的な敷金回収を

(問)引越を考えているが、噂によると家主は全く敷金を返さないことで有名らしい。敷金は家賃の3箇月分差入れている。自衛策として引越前の3箇月家賃未払いで退去して、敷金で精算してもらうという方法で何か問題があるのか。

(答)敷金の回収見込みが無い場合に、家賃の不払を実行して実質上敷金を回収する方策を是認する賃借人にとっては画期的な最高裁判決(平成14年3月28日)がある。最高裁の判決を少し検討してみる。
 〈事実の概要〉
 A所有の建物をBが賃借し、それをYに転貸していた。Yは家賃100万円、敷金1000万円でBと転貸借契約を結んでいた。Y入居前からA所有の建物は信託銀行によって抵当権が設定されていた。Aの経済的破綻が心配でYはBに対して平成10年3月30日に6箇月後に退去するという契約解除を通告した。敷金の回収目的から一方的に6箇月分の家賃の支払を停止した。Aの借入金の返済がストップしたので信託銀行は、抵当権者の物上代位権を行使して平成10年6月YからBへの賃料債権を差押えた。Yは家賃600万円を未払いのまま9月30日に建物を退去した。信託銀行は差押え家賃を支払えとYを提訴した。Yは裁判で未払い賃料は、建物明渡時に敷金によって当然に充当され消滅するものであると主張した。
 最高裁は「目的物の返還時に残存する賃料債権等は敷金が存在する限度において敷金の充当により当然に消滅することになる。このような敷金の充当による未払い賃料等の消滅は、敷金契約から発生する効果であって相殺のように当事者の意思表示を必要とするものでない」として、Yの主張を容れて信託銀行を敗訴させた。
 この最高裁の判決は、一方的な家賃の不払によって実質的に敷金を回収する方策を認めたもので評価出来る。明渡しが完了すれば、未払いの賃料債権は相殺の意思表示を待たずに預託されている敷金の限度で充当され、当然に賃料債権が清算される。これは敷金契約から発生する効果である。従って、相談者は一方的に家賃の不払を実行しても何ら問題は無い。
 なお、最高裁判決は敷金の特殊性を考慮したものであって、単なる一般債権の場合には当て嵌まらない。

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毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

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