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東京借地借家人新聞


2008年12月15日
第501号

東借連秋季研修会開催
田見弁護士が借地法で講演

正当事由成立の意義を強調
城北借組の相談事例を基に解説

東借連秋季研修会(11月29日・豊島区東部区民事務所)
東借連秋季研修会
(11月29日・豊島区東部区民事務所)
講演する田見高秀弁護士
講演する田見高秀弁護士

 東借連秋季研修会が11月29日午後1時30分から豊島区東部区民事務所において34名の参加で開催された。研修会は相談員養成を兼ねて今年の4月の「民法の賃貸借」に続く2回目で、講師の東借連常任弁護団の田見高秀弁護士より「借地借家法の借地法」について約1時間半にわたって講演が行われた。
 生駒勝美理事の司会で開会され、佐藤冨美男が開会のあいさつを行い「住まいの貧困問題は今日大変深刻であり、多くの若者たちが法律知識もないためにゼロゼロ物件を借りて不当な権利侵害を受けている。私たちは今日学んだことを力にして大いに今後の相談活動にも生かしていこう」と訴えた。

■相談事例交え借地法を解説
 講演では、田見弁護士は民法と借地借家法の違いについて説明し、「民法の賃貸借は範囲が広く借りている人の保護を十分に考えていない。しかし、土地や建物を借りることは普通の物の貸し借りと違い、長い期間が必要でありすぐに追い出されては困る、そこで借地借家法は居住権や営業権を守ることを目的に制定された」ことなど借地借家法の成立の意義を説明した。
 また、大正10年に制定された借地法では、「存続期間が満了すると更新する制度がなかったため昭和16年に正当事由がなければ、地主は更新拒絶ができないという重要な改正がされ、現在に至るまでこの制度の枠組みが維持されている」ことが強調された。
 次に、借地法の借地権の定義、存続期間、更新、更新後の期間、更新料、期間満了前の建物の滅失、借地権の対抗力、増改築と借地非訟事件、強行規定等について報告し、城北借組の法律相談で実際の借地紛争事例(1)借地人に更新料支払い義務なし・地裁勝訴判決を勝ち取る。(2)更新拒絶・無断増改築解除と闘った。(3)借地人と借地上の建物名義人の相違で無断譲渡による契約解除で争った。(4)隣家からの貰い火で延焼・東京地裁に補修工事許可の申立を行い補修した。以上4つの事例を紹介しながら分かりやすく説明がされた。
 適正地代の算定についての質問で、最近の東京地裁の判決で税金の倍率方式が否定されたことから地代と公租公課額は関連性がないことが指摘された。
 この他、法定更新でも更新料を支払う旨の特約を無効にすることができるか、通路の使用権が認められた契約は地主が変わっても引き継がれるか等の質疑応答が行われた。




首都圏交流連絡会議
組織・相談活動等で交流

川口市で開かれた首都圏交流連絡会
川口市で開かれた首都圏交流連絡会

 11月27日(木)に埼玉県川口市で首都圏交流会議が行われた。埼玉、神奈川、東京の借組と全借連の十名が参加した。東京借組からは、佐藤会長、細谷専務理事、桜井会計、中田理事が参加した。
 佐藤全借連副会長(東借連会長)の挨拶で始まり、自己紹介と各組合の相談事例の紹介や借地借家人をめぐる情勢などが報告された。明渡し問題、更新料問題、保証会社問題などが報告され、今後の相談活動を進めていくうえで教訓的な問題も出された。
 運動団体としての組織的な活動についても各支部単組での借地借家法の勉強会や総会に向けた組織調査、定期的な新聞の発行など組合員同士の交流をどう進めるか真剣に話しあわれた。




更新料で頑張ってる
荒川区6丁目の斉藤さん

六百万円の請求断ると
一千万円に増額し地代の受領拒否

親子三代にわたり営業している荒川区の和菓子店
親子三代にわたり営業している
荒川区の和菓子店

 荒川区荒川6丁目で昭和22年から親子三代にわたり46坪を借地して和菓子店を経営している斉藤さんは、昨年5月に20年の更新を迎えていたが、地主が何も言ってこなかったから気がつかなかった。
 ところが今年の夏になって不動産屋から更新の通告を受け「更新料を600万円支払え、地代は現行6万円のところ8万円に値上げする」と言われてビックリ。斉藤さんは今まで親の代から更新料を支払っていたので、今回300万円位は仕様が無いと思っていたが、金額の差があまりにも大きいのでとっても支払えないと断ったところ、どうした訳か今度はいきなり地主本人が直接来宅。しかも、更新料は1000万円に値上げすると通告してきたので、法定更新にすると決めて地代を現行6万円で9月末に地主の銀行口座振込んだ。すると、地主は10月に入って直ぐに振込んだ地代を返しに来て「更新料を払ってないから地代の受領を拒否する」と言ってきた。斉藤さんはそれならばと9月末に9月分から10月分の地代を6万円で供託した。数日後、地主から今度は賃料二ケ月払ってないから契約を解除すると文書通告を受けた。
 斉藤さんは、地主の理不尽なやり方に怒りを感じた。商売も売上げが伸びず不況続きの中で高額な更新料や一方的な値上げ等到底容認できるものではない。地主とはみんなこんなやり方で借りている人達を苦しめていることを初めて知って、もう少し早くから借地人の権利を知っておけばよかったと反省している。




底地競売で落札業者と交渉
板橋区

松平さんが商売する板橋区清水町附近
松平さんが商売する板橋区清水町附近

 板橋区清水町で商売をしている松平さんは、二十数年前に、当時の地主から多額な更新料の請求を求められ、地代の受取を拒否され供託した。その後、その地主が底地を担保に銀行から多額の借金をしていたが、バブルの崩壊で競売にかかった。その前には、債権機構から、地代の差押えなどいくつかの係争があった。
 競売で落札したのは、A不動産会社だが、その背後に大手不動産会社のM不動産がいた。昨年から今年の前半にかけては借地権を買取り、立退きをして跡地にタワーマンションを計画していた。執拗な交渉に組合員であることを通告し、話し合いをしていた。ところが、11月に入ると様相は一変した。借地権の買取を言っていた不動産会社は底地を買取ってくれ、しかし、その条件は親族以外には絶対流さないでという一筆を提出するように要求してきた。組合に入会し、20年以上頑張ってきた松平さんには到底承服できないので断り、今までどおり組合と相談しながら交渉するということを不動産会社に通告した。




【借地借家相談室】

防火・準防火地域では建物は
境界線からどの程度隔てる必要があるのか

(問)借地が15坪と狭いので敷地一杯に建てたいと思い、建設会社に相談した。ここは防火地域であり、建築基準法で外壁が耐火構造の建物の場合、隣地境界に接して建てられると言われた。そこで鉄骨3階建の建物を境界ギリギリに建て始めたところ、隣家に境界から50cm以上離して建てるよう要求された。要求に従わなければならないのか。

(答)建物をどの程度離して建てるべきかについては、その地方の慣習に従う(民法236条)。そのような慣習がない場合は民法の規定によって、境界から50cm以上離すことが原則となっている(民法234条)。この距離は土台敷または建物側壁の固定的突出部分(例えば出窓)と境界線との最短距離をいうとされている。ところが建築基準法では「防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる」(建築基準法65条)と規定している。この規定は明らかに民法の50cm以上の距離規定に反するものである。
 問題は民法の規定に反していても、防火・準防火地域では外壁が耐火構造の建物であれば、境界線に接して建てることが許されるのか。換言すれば、民法と建築基準法とのどちらの規定が優先するのか。民法では境界から50cm以上離さない規定違反建築は、建築に着手してから1年以内又は完成前であれば、建築変更や差止めが出来ると規定している(民法234条2項)。
これに関係する事例(境界から50cm以内の建物の収去請求訴訟)では、民法と建築基準法のどちらが優先するのかが争点となり、一審の大阪地裁、控訴審の大阪高裁は、相隣者の同意や民法236条の慣習等の合理的な理由がないから建築基準法の適用は認められないとして、建物の一部収去の請求を認めた。これに対して、上告審は、「建築基準法65条は、民法234条1項の規定が排除される旨を定めたものと解するのが相当である」(最高裁平成元年9月19日判決)として、建築基準法は民法の特則という立場から民法に優先すると明確に判断。耐火外壁の建築物に限り、隣地境界に接しての建築を許可する趣旨とした。
 結論、判例に従えば隣家の要求に従わなくてもよい。




組合の催物とお知らせ

■城北借組 「西武デパート相談会」
 1月14日(水)・15日(木)午前11時〜午後5時(午後1時〜2時昼食休憩)まで、西武デパート7階お客様相談室。
 「無料法律相談会」
 1月16日(金)午後2時から城北法律事務所。担当田見高秀弁護士。相談者は要予約。連絡・(3982)7654。
■大田借組 「常任理事会」
 12月20日(土)午後6時半組合事務所。連絡・(3735)8481。
■多摩借組「定例法律相談」
 1月10日(土)午後1時半から組合事務所。担当山口真美弁護士。相談者は電話で必ず要予約。
 「第3回忘年理事会」
 12月20日(土)午後6時から組合事務所。連絡・042(526)1094。
■江東借組「法律相談」
 毎月第2水曜日午後6時から亀戸カメリアプラザ。連絡・(3640)4694。
■葛飾借組「定例相談」
 毎週水・金曜日の午前10時から組合事務所。連絡・(3608)2251。
■足立借組「定例相談」
 毎月第2日曜日午後1時から2時、組合事務所。要事前連絡。連絡・(3882)0055。
■荒川借組「夜間相談会」
 毎月第1・第3水曜日午後7時から組合事務所。
 「法律相談」
 毎月第3金曜日の午後7時から組合事務所。連絡・(3801)8697。相談者は要予約。
■世田谷借組「相談会」
 毎月25日午後2時〜7時まで組合事務所。連絡・(3428)0828。
■北借組「法律相談」
 1月21日(水)午後7時から赤羽会館。相談者は要予約。連絡・(3908)7270。
■東借連「第19回理事会」
 1月24日(土)午後1時から東京芸術劇場。





毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

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