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東京借地借家人新聞


2008年1月15日
第490号

貧困と差別根絶を
反貧困ネットが国会で集会


反貧困ネットの集会で
報告する佐藤富美男会長

 「もうガマンできない!広がる貧困院内集会」が、昨年11月27日に衆議院第2議員会館会議室において約100人が参加して開催された。
 主催は反貧困ネットワーク(代表・宇都宮健児弁護士)で、非正規労働者、シングルマザー、DV被害者、障害者、ホームレス、民間賃貸住宅入居者、障害者等より当事者の置かれている実態と、「私たちの生活を守ってほしい」との切実な訴えがあった。
 当日は多数のマスコミ関係者と各党の国会議員14名と秘書8名が参加し、貧困問題への関心の高さが窺われた。

佐藤会長が居住の実態報告

 実の母親と離別後、里親に捨てられ養護施設からも追い出されるように出てホームレスとなった19歳の男性は「支援団体に出会うまで誰も生活保護の存在について教えてくれなかった」と話した。また、2人の子を抱えるシングルマザーは「別れた夫から受けた暴力の後遺症で十分に働けない。児童扶養手当が命綱です」と訴えた。
 民間賃貸住宅居住者の実態については佐藤富美男東借連会長が最近の相談事例を紹介した。
 古いアパートの明渡し問題が急増していると述べ、「老朽化を理由に立退きを迫られた青年は15万円の引越料が出すお金がなくて相談に来た」、「61歳の男性は公営住宅何度申込んでも当らない。これ以上歳をとるとアパートの保証人も立てられない」といった実情を報告した。また、病気ややむを得ない事情で家賃を滞納する事例が増えていることに触れ、「住宅のセーフティネット法が本当に貧困であえいでいる人達の助け舟になるかどうかは政治の力にかかっている」と訴えた。
 反貧困ネットワークでは当日「私たちの要求と政策」を発表した。住宅分野では「安心して住める住宅を国と自体は保障しろ」等の要求の実現を求めている。




事業用定期借地権の期間
10年以上50年未満に延長

細川衆院議員秘書と懇談

 借地借家法の一部改正案が12月14日、参議院本会議で賛成多数で可決・成立した。これにより、定期借地権の1つである事業用借地権の期間はこれまで10年以上20年以下が、10年以上30年未満と30年以上50年未満となる。施行は今年の1月1日。
 借地借家法改悪反対全国連絡会では、借地借家法一部改正案の審議の情報を得て、昨年11月21日に民主党の「次の法務大臣」の細川律夫衆院議員に要請行動を行い、事業用の定期借地権の期間延長が借家の正当事由制度や定期借家権の改悪の突破口になることのないよう訴えた。
 政策秘書の石原憲治氏が応対し、「不動産業界の狙う借家制度の改悪には反対である。参議院では野党が多数であり、我々が反対すれば法案は審議できない。事業用定期借地権については反対する理由がない」と延べ、今後も情報交換を行なうことを確認した。




地代減額で頑張る
練馬区旭丘の福島さん

地主の代理人が更新料請求
契約更新の条件をめぐって値下げ交渉


福島さんが借地している
練馬区旭丘(私道の奥)

 練馬区旭丘に借地して住む福島さんは、今年の3月末に借地期間の20年が満了した。この間、地代の値上げでいつのまにか近隣の相場と比較しても四、五倍の地代となり、知人の紹介で数年前に組合に相談した。この時は組合で地代値下げ請求の文書を出すと、相手は若干の地代の値下げに応じることになり値下げを実現させることが出来た。
 しかし、組合の相談の中で、契約書には更新に際して更新料を支払う約束があることがわかり、更新の時には地主が法外なことをいってくる可能性があることを指摘した。案の定、地主は不動産屋を代理人にし、更新料の請求をしてきた。組合では、期間満了までに更新することなく、法定更新にして、じっくりと交渉することにした。
 これを前後して門の修理や隣の軒先から流れる雨水で壊れた壁の修繕などを行う工事をした。すると地主は早速工事は改修に当たるからするなと無法なことを主張してきた。
 無視していると、代理人の不動産屋からあらためて更新の手続きを行うよう文書が送られてきた。組合と相談し、更新料の支払いには応じるがあまりにも高い地代については減額請求をすることにした。地代は近隣の相場と比較しても高いのでせめて公租公課の二倍になるように交渉をすることにした。減額請求が合意できれば、更新料についても請求の半分にし、合意するよう提案することにした。


 

高額な借地更新料

更新料支払義務なし借地法4
条に基づき地主に更新を請求
台東区

 台東区千束で永年雑貨商を営む野口さんは16坪を借地している。先月末に3軒先に住む地主に地代を持参した折り、突然地主から「来月10日に契約が満了になる。契約を更新するのであれば更新料として500万円支払って頂きたい」と言われ、慌ててしまった。家に帰り、家族と更新料について話し合った。だが昨今の景気動向では、とても高額な更新料を支払うことは出来ない。
 困り果て、近所の人から借地借家人組合があることを知り早速組合に相談し、加入した。組合の説明では、野口さんの借地契約書には「更新料支払特約」が書き込まれていない。このように更新料の支払い約束の無い場合は、法律的に更新料の支払義務がないことが判例上確定している。従って更新料を支払わなくても借地の更新は問題なく出来る。また建替えも組合の指導に随えば問題なく行えるという説明であった。
 後日組合が準備した「借地法」4条に基づく「借地契約の更新請求」を地主に配達証明付内容証明郵便で通知した。
 借地法4条は借地権が消滅した場合でも借地人からの請求によって一方的に更新を認め、地主は原則としてこれを拒めない。借地契約は地主と合意しなくても前の契約と同一条件の借地権が設定されたものとみなされ、木造建物の場合は借地期間20年と法定される。契約書が無くても借地契約は自動更新される。
 「次回、地主宅に地代を持参する時は地主に更新料は法定されていないし、判例上も支払義務がないことは確定していることを説明し、更新料支払い拒否の意思を明確に伝える積りである。今までは地主の要求に言われるままに応じて来た。これからは借地法を勉強して根拠の無い要求には一切応じない決心を固めた。」と語った。




【借地借家相談室】

抵当権設定後の建物を賃借している
が競落人から明渡請求を受けている

(問)平成15年に2年契約で店舗を借りた。2年後の更新は法定更新となった。平成19年4月に競売になり、11月に競落した買受人から店舗の明渡請求をされている。不動産業者は契約時に抵当権が設定されていることを一切説明していない。そのことを知っていれば設備費に300万円を投入していなかった。この設備費を不動産業者に賠償請求が出来ないか。また、200万円の保証金返還請求は誰にすればいいのか。

(答)【短期賃貸借の保護】利用権が602条の短期賃貸借(建物賃貸借の場合は3年以内の契約)である場合は抵当権の登記後に設定された賃貸借でも、抵当権者や買受人に対抗出来る(民法395条)と規定されていた。だが、平成16年4月1日、民法395条「短期賃貸借保護制度」は廃止された。しかし、「短期賃貸借に関する経過措置」(附則第5条)により次の条件を満たしていると「短期賃貸借の保護」は継続される。即ち抵当権設定後の建物賃貸借であっても平成16年3月31日までに契約された対抗力のある期間3年以内の建物賃貸借契約の場合は「短期賃貸借の保護」が適用され、その後の更新も認められる。
 但し、抵当権実行による差押さえの効力が発生した時以降に期間満了した場合にはもはや更新できないものとされている(最高裁昭和38年8月27日判決)。
 なお、「期間の定めのない建物賃貸借契約」は、「正当事由」があればいつでも解約できるのであるから民法395条にいう短期賃貸借に当たるという最高裁昭和39年6月19日判決がある。
 相談者の賃貸借契約は「短期賃貸借に関する経過措置」により民法旧395条の短期賃貸借の保護がある契約であるから買受人(新所有者)に対して対抗力がある。従って、賃借人の預託した敷金(保証金)は原則として新所有者から返還される。また、賃借人の賃借権は新所有者に対抗出来るので無条件で解約されることはない。新所有者の明渡請求裁判が確定するまでは建物を明渡す必要はない。
 登記簿の調査義務に関して、熊本地裁平成8年9月4日判決では、宅建業者の重要事項説明(宅建業法35条1項1号)に差押登記の有無も含まれるとして不動産業者の差押登記の調査説明義務違反を理由にして損害賠償責任を認めている。




毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

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