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2007年6月15日
第483号 |
居住の安定に逆行する
国と都道府県の住生活基本計画
入居収入
基準引下げで空家増やす
住まい連との交渉で国土交通省が回答
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住まい連の国土交通省交渉
(5月15日、国土交通省) |
国民の住まいを守る全国連絡会(住まい連)は、「都道府県計画」の中の「公営住宅の供給」等の問題に絞って、国土交通省の冬柴大臣宛に申入書を提出し、5月15日に国交省交渉を行なった。この交渉には東借連から佐藤会長と細谷専務理事が参加した。
住まい連では、3月5日に記者会見を行い、現状の都道府県計画案の公営住宅供給は10年かかっても公営住宅応募者の要求に応えられるものとなっていないことを明らかにした。今回の申入れでは、(1)都道府県計画の策定の経過、(2)公営住宅の全都道府県の目標量の総計と内訳、(3)住宅事情を分析して得られた「公的な支援により居住の安定の確保を図るべき世帯の数」、(4)都道府県計画見直しの有無、(5)公営住宅施行令の一部改正案(入居収入基準の引下げ、家賃算定基礎の見直し)の撤回以上について見解を求めた。
国交省からは住宅局住宅政策課の山下企画専門官他が出席した。国交省の説明によると住宅統計調査を基に民間賃貸住宅市場において最低居住水準を満たす住宅を確保することができない世帯の数を推計し、公営住宅の目標量を定め、香川県を除く46都道府県の総計は112万703戸であることを説明した。この内、約80%が空家募集で新規建設は約1%しかないことが明らかにされた。
平成21年実施予定の公営住宅の入居収入基準の引下げ(月収20万円から15万8000円)によって、11万8千人が収入超過者となり公営住宅に住めなくなるなど、今回の都道府県計画は、住宅困窮者をさらに増大させる、とんでもない計画であることが明白となった。
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ネットカフェ難民増やす法改悪
荒川区熊野前商店街で街頭宣伝
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若い娘さんもマイクで法改悪反対を訴える |
東借連と荒川借地借家人組合は、5月26日の12時から午後1時まで、借地借家法改悪反対街頭宣伝行動を荒川区東尾久の熊野前商店街において8組合17名の参加で実施した。炎天下の中、同商店街で1時間にわたりハンドマイクでの訴えとチラシの配布を行なった。地元荒川借組の組合員の家族である若い姉妹が行動に参加。ハンドマイクで「借地借家法の改悪を許さないために、皆さん署名運動に協力して下さい。借地借家人の生活と権利を守る民間唯一の団体である借地借家人組合に加入しましょう」と訴えた。
事業用の定期借地権に続いていよいよ借家制度の改悪法案が国会に上程されようとする中で6月には大山商店街で街頭宣伝活動を行う予定だ。
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明渡しで頑張った
納得のできる条件で和解
組合で学び自信を持って調停に
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マンションに住み替えた増渕夫妻 |
大田区大森南2丁目所在の木造トタン葺二階建工場兼共同住宅の内、二階部分の居宅兼作業所約37・95uを賃借していた増渕さんが、移転先で感想を述べた。
明渡しを求められた約7年前は家主に逆らうなんて考えられなかった。明渡しを拒否すれば何をいわれるかと心配していたが組合に入会して借家人として権利を主張することの大切さは知った。弁護士から改めて、明渡し請求の内容証明郵便が届くと、驚き不安も募ったが、組合は直ちに明渡しを拒否し交渉は組合を通すよう通告した。また、受領拒否された家賃も組合で供託手続きをしてくれたので安心したという。しかし、自分以外の居住者はすでに立退き、工場も閉鎖された時は心穏やかではなかったという。しかも工場の上に共同住宅を増築したので最近特に地震でのゆれが気になっていた。
そんな時、明渡しの調停裁判となってびっくりしたというが、組合の研修会にも参加している増渕さんは、これはチャンスと自信を持って調停裁判に臨み、納得出来る条件で合意。徒歩3分のマンションに住み替えて、東南角の部屋は明るくて風通しも良いし仕事の顧客も増えて笑顔で「こんなにタイミングがよく幸運が舞い込んできてよいのだろうかと、これも組合員になって権利を主張することが出来たから」と喜んでいた。
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雨漏りで賃料半額提供
葛飾区
葛飾区内で美容業を営んでいる近藤さんは、1年前より雨漏りの修繕工事を貸主に要求してきた。1階は雨が壁を伝わり、2階はポトリポトリと数箇所において桶をいくつか置く始末。畳は使い物にならず、再三貸主に修繕を要求したが工事は始まらない。リフォームの工事業者が見積もりをしても家主と金額で合意できず、一向に工事を実行に移す事はなく畳のカビに悩まされ、2階は使用不能。この間現家賃8万5千円を支払うことに納得できず、再度期日までに雨漏りストップの工事を完了しない場合には賃料を2分の1とする旨を文書で通知した。家主はこれに対し無視の態度をとった。近藤さんは貸主代理人に賃料の半額を持参。代理人はしぶしぶ受領した。その後半年家主より何の反応もない。半額の賃料提供については争ってもよいと心に決めた賃借人の実力行使である。
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【借地借家相談室】
家主から立退きを求められた時の立退
き料で和解する場合の手順と考え方
(問)2階建ての古い木造アパートを借りている。先日家主から「このアパートは老朽化しており、万が一強い地震があった場合、倒潰の危険があるので建替えたいと思います。来年3月末日までに立退いて下さい」という通知が届いた。世間では引越料とか立退料をもらった話を聞きくが、一般に立退料というのは幾ら貰えるものなのか。
(答)
普通借家契約は期間の定めがある契約の場合、借家人に債務不履行がある場合は別として家主は契約期間内の中途解約は原則として出来ない。例えば2年の賃貸借契約であれば、借家人側に家賃の不払・無断転貸借・用法違反等がなければ、2年間は家主側からは解約が出来ない。また期間満了の場合でも家主に正当事由が無ければ解約請求は出来ない。
このように家主は中途解約が出来ないことを、或は明渡しの正当事由が存在しないことを認識しているからこそ、その無理を押通すために金銭で決着をつける。その無理を借家人に納得して貰うために支払われるのが立退料である。
立退料は法律上定まった制度ではない。立退料請求権は法律上制度化されていないが、裁判の実務上・判例上で立退料請求権を認めた形となっている。「借地借家法」28条では「賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合」を条文上明記したことにより、立退料の概念を認めたと考えられている。
立退料の内容は(1)立退きによって借家人が支払わなければならない移転費用の補償(2)立退きによって借家人が事実上失う利益の補償(いわゆる居住権・営業権)(3)立退きにより消滅する利用権の補償(いわゆる借家権価格)等である。相談者の場合は居住用なので交渉の中心が(1)と(3)とになる。
(1)は(イ)引越にかかる費用(梱包・運送・保険・分解取付調整・住所変更届・移転通知費用等)(ロ)移転先取得費用(敷金・権利金・保証金・仲介手数料等)(ハ)同等の借家の従前家賃と移転先の新家賃との差額の一定期間分(2年〜5年分)などである。
(3)の借家権価格は東京国税局管内では一律に借地権価格の30%として算定する取扱いになっている。
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