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東京借地借家人新聞


2007年3月15日
第480号

東借連第30回定期総会開催

吉田万三候補支援で決議 安心して暮らせる都政取戻そう

東借連第30回定期総会で挨拶する
佐藤冨美男会長(3月4日ラパスホール)

 東借連第30回定期総会は、3月4日午前10時から豊島区南大塚のラパスホールにおいて、代議員・評議員41名が参加して開催された。
 司会の野内副会長の開会挨拶で始まり、議長団に大田借組の菊池代議員、城北借組の菊地代議員が選出された。佐藤会長より挨拶があり、「東借連が創立されて今年で40年を迎える。2年前に組織の後退に歯止めをかけ前進しようと運動してきたが、残念ながら歯止めをかけることができなかった。組合運動の原点に立ち返って理論的にも実践的にも検証する必要がある。今日の総会を新たな出発点にしていこう」と訴えた。
 来賓には、日本共産党植木こうじ都議会議員、生活協同組合・消費者住宅センターの久保峰雄理事長、東借連常任弁護団の田見高秀弁護士が参加し、祝辞が述べられた。総会にメッセージを寄せた団体が発表され、メッセージの一部が披露された。

組織財政問題で活発な討議


 細谷専務理事より運動方針案が参考資料に基づき報告された。次に、決算報告と予算案が桜井会計より、監査報告が田原監事よりそれぞれ報告された。午前中の全体会議は12時前に終了し、午後1時から2つの分散会で議案に対する討論が行なわれた。
 分散会終了後の全体会議では、分散会の司会者の野内、桜井両代議員より討論の特徴が報告された。両分散会とも、東借連の組織・財政と拡大問題に討論が集中した。分散会討議の提案を受けて、運営委員会より東借連の組織財政部会を早急に立上げ、組織の改革に向けた検討を実施していくとの答弁があった。
 採決に移り運動方針案・決算報告・監査報告・予算案が満場一致で採択された。総会決議として「吉田万三さんを都知事に、命と暮らし住み続ける権利を守ろう」、「憲法改悪と国民投票法案に反対する決議」が採択された。
 最後に、新役員36名が選出された。代表して佐藤新会長からの力強い決意表明で総会は終了した。




 
 ■判例紹介

2筆の借地の一方にのみ登記ある建物がある場合の明渡請求は権利濫用

 一体として利用されている2筆の借地のうち一方の土地上にのみ借地権者所有の登記されている建物がある場合において両地の買主による他方の土地の明渡請求が権利の濫用に当たるとされた事例(最高裁平成9年7月1日判決、判例時報1614号)

(事案)
 ガソリンスタンド会社を兄弟で設立した。兄が代表取締役で弟が監査役。2筆の土地の所有者は弟で、会社が弟から借地をした。
 会社は、奥の土地(A地)に3階建の事務所建物を建築して、所有権保存登記をしたが、道路側の土地(B)には建物はなく、地下にガソリン貯蔵タンク、地上に給油設備、ポンプ室があった。
 兄弟不仲となり、弟がAB両地とも不動産業者に時下の約10億円で売却してしまった。買取った不動産業者が、会社に土地明渡の要求。
 争いとなった点は、建物がないB地の借地権を土地購入者である不動産業者に対抗できるか、ということであった。
 東京地裁は、A地の借地権対抗力がB地にも及ぶという理由で、借地権者を勝訴させたが、東京高裁は、B地は借地権を対抗できず、買主の明渡請求は権利濫用でもないとして、逆転敗訴。  
  本判決は、借地権は対抗できないが不動産業者が明渡を要求することは権利の濫用で許されないと判断した。

(判決の要旨)
 「A地とB地は、ガソリンスタンド社会通念上相互に密接に関連する一体として利用されており、B地を利用できなければガソリンスタンドの営業が不可能になるので借地人はその土地を利用する必要性が強い。反面、買主は、AB地につき格別の利用目的があるわけでない。買主は、AB地が賃貸借ではなく使用貸借であるとの説明を受けて買ったものではあるが、土地はガソリンスタンドとして利用されていたのであるから、借地人がその土地の明渡に直ちに応じると考えたことは、なお落ち度があった。借地人は、B地上には、給油施設の他・ポンプ室を有していたが、その規模から見て独立の建物と考えず、登記しなかったこともやむを得なかった。買主が、本件土地を時価で買い取ったことを考慮しても、なお本件明渡請求は権利の濫用に当たり許されない。」

(説明)
 2筆の借地と自宅用に借地して建物の登記をしたが庭部分の借地が別の筆になっていて、建物が存在しないという場合があり得る。この場合、庭部分の借地権は、土地の買主に対抗できないことがこの判決の前提になっている(参考、最高裁昭和44年10月28日判決、判例時報576号)。
 その上で、買主からの明渡請求が権利濫用になるかどうかを問題とした。高裁判決は権利濫用にならないと判断し、本最高裁判決は権利濫用になると判断したように、権利濫用の判断は微妙なものがある。

 




明渡しで頑張ってる
新宿区の五十嵐さん

大手住宅メーカー”金の無いの一点ばり”
30年間住んだアパート立退けない

 新宿区に住む五十嵐さんは、このアパートに住んで30年近くになる。五十嵐さんの外に、約十世帯住んでいるが、ほとんどの居住者はこの数年間に契約したお年寄りや外国人の居住者であった。家主は隣に住んでいるが、老朽化を理由に明渡しを求めてきた。その交渉役として、大手住宅メーカーのNホームの社員が対応した。当初「敷金は返還します。他は引越料数万円だけです」と説明していた。いろいろなところに電話や相談にいってたどり着いたのが借地借家人組合だった。
 早速、五十嵐さんは組合に入会した。組合の説明で「借地借家法では、人が住めなくなる朽廃の状態にならなければ、老朽化だけでは明渡しを求める正当な事由にはならないこと、引き続き住み続ける権利のあることなど」が説明された。五十嵐さんは「確かに、老朽化はしているが住めない状態ではないので、自らが法律を学び、交渉しよう」と決意した。Nホームの社員に対して、話合いを求めたところ「貴方だけは30年も住んでいるので、他の人と違う補償をするので協力してほしい」と言われた。しかしながら、実際の対応で補償については、金の無いの一点ばりで、説得にかかってきた。
 五十嵐さん「よくよく考えてみるとこのまま話をすすめて明渡しに応じてしまえば、家主は新しいマンションで収入が増える。Nホームの社員は、話をまとめて金儲けが出来る。損をするのは私だけ、それならばがんばるしかない」と決意を固めた。




地主が更新拒絶

大田区

 大田区蒲田本町2丁目所在の宅地約12坪を賃借の田中さんと約9坪賃借中の高橋さんは地主から有効活用を理由に契約更新拒絶を請求されたが拒否すると、地主は経営する駐車場の出入り口幅約2・5mをさらに広げたいと、月額20万円の家賃を15年間保証すると借家への移転を求めるが、直ちに半額に訂正するなど借地人を無視したものであった。思わず「正当事由」になるのかとの問いには応えず、裁判はやって見ないと判らないという地主の弁護士。裁判は想定していますと毅然と対応する借地人に、苦笑いの弁護士は帰り際、自分は元判事であったことを口にする。地主の代理人弁護士を代えての新たな揺さぶりにも動じない借地人の姿は頼もしい。




【借地借家相談室】

店舗の原状回復費は家主が負担する
ものと明確に判断した大阪高裁判決

(問)店舗で通常損耗を含む原状回復特約は認められないという注目すべき判決が大阪高裁であったというが、どんな内容の裁判だったのか。

(答)大阪高裁(2006年5月23日判決)の店舗の敷金返還請求裁判で、先の最高裁(2005年12月16日)判決の厳しい認定基準を適応し、原審の京都地裁判決が覆され、借主全面勝訴の判決があった。
 裁判が提起された原因は、店舗の賃貸借契約が終了したので、貸主に預託していた敷金140万円の返還を請求した。ところが返還された金額は36万9286円だけであった。約定の償却費42万円と未払光熱費2万2114円が敷金から差引かれることはやむを得ない。だが、残金の55万8600円は当然返還されるべきものであるとして借主は京都簡裁へ敷金返還請求訴訟を提起した。
 その後、裁判は京都地裁へ移送されて審理された。貸主は裁判で、契約書には通常損耗を含む原状回復特約があり、約定の償却費44万1000円(消費税を加算している)、未払光熱費、既払返還金、及び原状回復費53万7600円を差引くと返還すべき敷金残額は一銭も無いと主張し争った。
 京都地裁は通常損耗を含む原状回復特約の成立を認め、借主の請求を棄却する判決を下した。
 借主は判決を不服として大阪高裁へ控訴した。裁判は主に原状回復義務の成否を中心に争われた。
 大阪高裁は、通常損耗を含む原状回復特約の成立の成否を最高裁(2005年12月16日)の認定基準を適用し、次のように判断した。「本件賃貸借契約において、通常損耗分についても控訴人(借主)が原状回復義務を負う旨の特約があることを認めることはできない」として原状回復特約は成立していないと認定した。
 また裁判で貸主は営業用物件においては通常損耗を含む原状回復費用を賃料に含めて徴収することは不可能であると主張した。それに対し、大阪高裁は「営業用物件であるからといって、通常損耗に係る投下資本の減価の回収、減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けることにより行うことが不可能である」とは言えないとして原状回復費の貸主負担を認定し、その上で貸主に対し、借主が請求していた金額の総てを返還するよう判決した。



毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可


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