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東京借地借家人新聞


2007年12月15日
第489号

住宅こそ最優先の課題
住まい連が住宅困窮告発集会

住宅貧困の実態を報告
老朽アパートの立退き問題等を報告


住宅難・住宅困窮を告発する11・14集会
報告する佐藤富美男東借連会長

 国民の住まいを守る全国連絡会(住まい連)は、11月14日午後6時から新宿の全労済東京会館において「住宅難・住宅困窮を告発する11・14集会」を開催し、31団体から52名が参加した。はじめに、住まい連代表幹事の坂庭国晴氏より、真の住宅セーフティネットの実現をめざす住まい連の重点要求と取組み等が報告された。
 5団体から住宅貧困の実態が報告され、首都圏青年ユニオン書記次長の山田信吾氏から、青年をめぐる劣悪な労働条件の実態として「東北に住む20代の女性が、求人誌で東京の派遣会社の寮に入ったら、社員から俺と関係をもったら寮費をタダにしてやるといわれ寮を抜け出し、家も仕事も全て失い、1ヶ月間ネットカフェなどをさまよっていた」との話が紹介された。しんぐるまざあず・ふぉーらむの竹内三輪さんは、民間の賃貸住宅は「家賃が高い・狭い・ぼろい」と訴え、不動産屋で「契約名義は男の人でなければダメといわれる」等の母子家庭に対する入居差別等が指摘された。
 全国生活と健康を守る会連合会の前田美津江さんは、公営住宅の使用継承について国の通知で公営住宅の入居者が死亡すると原則配偶者で子供は60歳以上で東京都では重度の障害者(1、2級)しか認めないため、病気の娘と孫と同居する入居者が「私に何かあったら、娘と孫はどうすればいいの」との深刻な相談が寄せられていることが明らかにされた。
 東借連会長の佐藤富美男氏は、城北借組に寄せられる最近の相談例から開発業者による明渡し問題が急増している実態を報告。老朽化しているアパートに住んでいる住民は高齢者ばかりでなく派遣などで働く若者が多く、安い家賃のアパートを転々として生活している、保証人をつけられない等の問題が指摘された。保証人に代わる保証会社は、家賃を滞納すると鍵を付替えたり家主に代わって契約を解除するなど不当な契約書が横行しており、公的な保証人制度の確立等を訴えました。
 都庁職員労働組合住宅支部の石原重治氏はこの9年間、石原都政の下で都営住宅の新規建設はゼロのままで、都営住宅の応募倍率が昨年ついに57倍に達し、「建てない、入れない、追い出す」最悪の住宅行政の転換を訴えました。
会場からも発言があり、住宅こそ最優先すべき課題であることが共通認識となった。




住宅セーフティネットの実現で国交省と交渉

国民の住まいを守る全国連絡会
住まい連の国土交通省交渉

 住まい連では、先の国会で成立した「住宅セーフティネット法」に基づき国土交通省が作成した「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給促進に関する基本的方針」に対する要請書を10月12日に提出し、午後1時から国土交通省と交渉した。
 要請書の(1)住宅セーフティネットの1賃貸住宅の質的、量的不足、2住宅セーフティネットを実現する当面の要求、課題について、3「住宅セーフティネット基本方針案」等についての質問と要請の3項目に関して国交省が回答した。
 民間賃貸住宅の要求項目では、「(1)借地借家法の改悪と定期借家制度の廃止は、法務省の所管であると回答を拒否。(2)住宅確保要配慮者の入居差別と円滑入居については、住宅セーフティネット法成立を受けて、安心賃貸事業で各自治体、不動産業者等の協力を受けて円滑入居のネットワークをつくって実施していく。(3)住宅確保要配慮者の住宅保証を実現するための家賃補助等については、地域住宅計画に基づき各地方自治体が提案すれば独自事業として可能である。」等の回答があった。
 基本方針の「居住支援協議会」について、借地借家人組合など居住者団体も参加できるかとの質問では、「円滑入居をすすめるための福祉サービスなど支援事業で具体的な活動をしていれば参加は可能である」との回答があった。また、ネットカフェ難民への賃貸住宅の初期費用の貸出しと家賃補助制度の実施については、「地域の実情をふまえて地方公共団体が地域住宅計画で盛り込むべき課題である」とし、「国で事業を決めることはしない仕組みになっている。全て地方公共団体が判断して、地域住宅計画に盛り込めば支援していく」と回答。今後予算の増額と計画の見直しもあり得ると答えた。




明渡しで頑張った
荒川区西尾久の鈴木さん達

粘強い交渉で明渡し断念
3店舗の借家人が営業権を守りぬく


明渡しを撤回させた
荒川区西尾久のマンション

 荒川区西尾久で3階建マンションの1階店舗(約12坪)を借り電気店を営む鈴木さんは、4年前の秋に漏水事故が発生し家主からマンションを建て直すから明渡してほしいと通告された。
 このマンションは2階から上は居室で20数世帯以上の入居者がいたが、水道の設備が悪く時々漏水事故が数箇所で発生していた。
 店舗を借りている人は6店舗だが、気がついてみると居住者も減り店舗も3店舗となった。更新時が来る人から徐々に立退いたようだ。鈴木さんは最後まで残って営業を続けていた他の2人に声をかけ、3人で組合に相談し入会した。
 「水漏れ程度なら修繕で直せるのにどうしても追い出すなら、それなりの補償をするか、近くに代替の店舗を確保し再築時には現行の賃料で再入居させよ」と何度か家主と交渉を続けた。
 この間に家主は代替の店舗を探してきたが店舗としては狭すぎるため、建て直し期間中に品物の展示できないために他の倉庫を借りて保管しなければならず、鈴木さんたちは倉庫の賃料も補償してほしいと主張した。
 これに対し家主は、考えると回答したものの何ら誠意も見せず、時間が経過した。最近になってついに建て替えをあきらめ建物を部分的に補修し、入居者の募集を始めた。徐々に入居者が増え、空き店舗にも新しい入店者が入ってきた。
 鈴木さんたち3人は最後まで営業を守り頑張りぬいた結果、家主の明渡し請求を撤回させる大きな成果を上げた。この経験を生かして今後は商売繁盛に力を入れると張り切っている。


 

終の住処得た途端に転売

豊島区

 豊島区池袋で古い木造の平屋建ての建物で、クリーニング屋を営んでいた川上さんは、今から20年位前に家主から家賃の大幅な値上げを請求された。困っている時に友人から、借地借家人組合を紹介され、入会した。組合から家賃の増額には応じられない旨通知すると、家主は、賃料の受領を拒否してきた。そのため、賃料を法務局に供託し、頑張ってきた。
 その後、供託中の5年前に道路の拡幅のために立退き問題が起こり、家主とその代理人との交渉が行われ、最終的には今までより奥に、新しい2階建ての家を建ててもらいそこに住むことになった。
 川上さん自身は新しい家に引越しと同時に死亡し、現在は高齢の母親が一人住んでいる。やっと終の住処を得たと思っていた今年になって、不動産業者が新しい家主と名乗り、立退きを求めてきた。何度と起こる借家問題でのトラブルに、川上さんの母親も「組合だけが頼りです。」と語り娘さんとも相談しながら、今後の対策を進めていくことにした。




【借地借家相談室】

連帯保証人は承諾していない更新契約後の
借主債務の支払義務はあるか

(問)友人の息子Aのマンション入居時に保証人を頼まれ、連帯保証人になった。ところがAの家主から突然、1年分の滞納家賃と共益費の支払を求められたが、請求に応じなければならないのか。また保証人になると何時までも責任を負わなければならないのか。

(答)入居時の契約でAの保証をしたが、その後家主から保証人に関する連絡などは何もなく、契約の更新にはノータッチであったという。このように保証人の自覚もない人間に対し、家主からの保証債務の履行請求は寝耳に水の事であり、その請求に不満を持つのは当然の気持ちである。
 だが判例の傾向は保証人には厳しいものである。最高裁は原則として契約更新後についても保証人の責任を認めている。その理由として賃貸契約は正当事由がない限り、更新拒絶が出来ないなど本来相当長期間の存続が予定されている。従って保証人も更新を前提とした賃貸借契約の存続を当然予測できる筈である。また保証人の債務は賃料債務を中心とするので賃料額は特定されており、更新後といえども保証人の予期せぬ責任が一挙に発生することがない。以上の理由から「特段の事情のない限り、保証人が更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責を負う趣旨で合意されたものと解するのが相当であり、保証人は賃貸人において保証債務の履行を請求することが信義則に反すると認められる場合を除き、更新後の賃貸借から生ずる賃借人の債務についても保証の責めを免れない」(最高裁平成9年11月13日判決)と判示した。
 最高裁判決の原則から言えば、相談者は家主からの滞納家賃請求に応じなければならないことになる。
 しかし最高裁は同判決で例外として(1)更新後の債務について保証しないなどの期間満了後の保証責任について格別の定めがある場合(2)格別の定めがなくても、反対の趣旨をうかがわせるような特段の事情がある場合(3)保証債務の履行を請求することが信義則に反する場合、に関しては責任義務がないとしている。
 Aの家主には保証人の損害を回避すべき義務があり、それを怠って損害を拡大した責任は重い。それゆえ前記「例外」の(3)に該当するので保証人の保証債務責任を認めるべきではない。




毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

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