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東京借地借家人新聞


2007年11月15日
第488号

2008年度予算要求提出
東京住宅連が東京都に

住宅困窮者に家賃補助を
保証会社の悪質保証契約の規制要求


切実な住宅要求の実現を迫る
住宅団体の代表

 東借連をはじめとする住宅運動団体や労組など8団体で組織する東京住宅運動連絡会(東京住宅連)は、10月23日午後2時から東京都都市整備局長に対し「2008年度東京都予算に関する要求書」を提出した。
 東京住宅連から6団体14名が参加し、東借連から佐藤会長、細谷専務理事、皆川理事、渡辺評議員の4名が参加した。都市整備局からは総務部の八嶋広報担当副参事等が応対した。

住宅弱者に対し施策強化を

 東借連から提出した要求のうち、住宅弱者に対する総合的な住宅政策の拡充に関する要求については細谷専務理事が説明し、ネットカフェ難民やワーキングプアなど中高年や若者まで居住の貧困が加速し拡大する中で「民間賃貸住宅居住者への家賃補助制度の創設」、「最低居住水準未満世帯の解消など真の住宅セーフティネットの整備と具体的施策」、「セーフティネット法の居住支援協議会への民間賃貸住宅団体に係る東借連など団体の参加」「都営住宅の新規建設・供給戸数の拡大」等について実現を図るよう要求した。
 佐藤会長は、連帯保証人を立てられない人が増える中で連帯保証会社の悪質な契約書の横行によって、保証会社が家主に代行して借家人を強制的に追い出す問題が多発していることを指摘し、悪質な保証契約に対する対応と安心して借り続けられる公的保証制度の確立について要請した。また、退去時の原状回復については、都のガイドラインを借主に徹底させるために最高裁判決を紹介した分りやすいリーフレットを普及するよう訴えた。
 各団体からも切実な住宅要求の説明があり、都営住宅の新規建設の促進、都営住宅の定期借家制度導入の廃止、都営住宅の入居承継資格を原則配偶者とし親子間の継承を認めないとした都の方針の撤回等を求めた。
 各団体はその後、東京都知事や都議会各会派に要求の実現を求めて要請した。




供託中の評価証明書発行問題
で都主税局交渉

 東京都主税局固定資産税課は契約期限が切れの契約書及び供託書のみでは、契約内容が確認できないとして評価証明書を発行することが出来ないとする見解を10月5日に発表した。11月1日午後2時から主税局交渉を行い、東借連から佐藤会長はじめ7名が参加し、日本共産党の曽根都議が列席。主税局からは飯田固定資産税課長等が応対した。東借連は、「契約書がなくても、供託書及び借地借家人であることが確認できれば評価証明書を発行すること」等先の見解を撤回するよう要求した。飯田固定資産税課長は「地主は正当事由があれば契約の更新を拒否できる。更新が出来るか否か都では判断できない以上、評価証明を発行すると地主側から守秘義務違反を問われる可能性がある」と説明した。東借連では、主税局の見解は法の下の平等に反し、法定更新制度を否定するものと厳しく批判し、総務省と相談し、都の見解の法的根拠を明示するよう求めた。




再開発理由で明渡し
新宿区西新宿の佐伯さん

家主が不調後に業者に売却
新家主も同じ代理人通じ明渡し請求


新宿区西新宿の再開発予定地

 新宿副都心の西新宿で美容室を営業している佐伯さんは、昨年家主から再開発を理由に明渡しの調停にかけられた。家主の代理人の弁護士から立退きの補償はいくら位なら明渡しに応じるのか返事してほしいといわれ、知合いの内装屋さんに美容室の内装費用を見積もり、5百万円から6百万円かかるといわれ相手に通告した。家主の代理人はこの費用については補償する用意があるが、その他引越しに必要な費用や入居の際にかかる礼金、保証金、手数料などは自己負担するよういわれ、「自己負担してまでも立退き応じることはできない」と断わり調停を不調にした。
 ところが、今年7月に家主が再開発業者に売却してしまった。新しい家主も同じ代理人弁護士を通じて明け渡しを請求してきた。同時に家賃の受取り拒否を通知してきた。この時点で組合に相談。組合では、現行通りに家賃の支払いをすること。売却したというけれど、「前家主からは何の通知もないので、法務局にいって建物の登記を確認すること」その上で、家賃を支払い、受取を拒否したら供託で対抗し、立退きの話合いをすることをアドバイスした。
 佐伯さん「この一年間、立退き請求に始まり、調停、新家主の出現、家賃の受取拒否、弁護士から居座るならば裁判をするなどと脅かされ落ち着いて仕事も出来ない状態だったが、組合に相談して安心しました」と語っている。


 

地代滞納で契約解除通告

大田区


大田区北嶺町の阿部さん宅

 大田区北嶺町に所在する宅地約88・66平方メートル(26・82坪)を賃借している阿部さんが、不動産業者の紹介で組合事務所を訪ねてきたのは昨年の10月であった。契約更新を8ヵ月後に控えた同年8月、地主代理人弁護士から内容証明郵便にて契約解除の催告受けての相談だった。地代の支払いが度々の遅滞に一ヶ月分の滞納を理由としている。地主も留守にすることもあったが、滞納は事実なので弁護士を訪ねて謝罪することを進言。予想通り更新料を請求されて契約解除は事実上解消となった。更新料の支払いを断ると地代の値上げを求められるが、近隣と比較しても安くはないと主張し話合いが約一年続いた。
 阿部さんの粘り強さが更新料及び地代の値上げを撤回させて、合意更新に結び付けることが出来た。しかし、公正証書による契約となったことで、これを教訓に再びこのような失態を繰り返さないようにしなければと、阿部さんは反省とともに新たな決意を述べていた。




【借地借家相談室】

更新拒絶で借地契約が終了した場合
借地人に何か対抗する方法があるか

(問)地主が土地の明渡しを求めてきた。借地人は地主に対して借地上の建物を買取らせることが出来るというが、どんな場合に出来るのか。

(答)借地契約が終了した場合、本来ならば借地人は建物を取壊し、更地にして返却しなければならない。しかし、使用に耐えられる建物を壊すことは社会経済的利益の保護及び借地人が建物のために投下した資本の回収が出来ない。そこで借地人に「建物買取請求権」(借地借家法13条1項)を設けて借地に投下した資本の回収を可能にした。また間接的に地主に経済的負担をかけることによって更新拒絶を遣難いものにする効果をもっている。
 借地人が建物買取請求権を行使した場合、地主が買取を承諾しなくても、請求があればそれだけで建物の売買契約が成立する。その結果、地主は買取を拒否できず、建物を時価で買取ることになる。
 建物の時価は、「建物が現存するままの状態における価格であって敷地の借地権の価格は加算すべきではないが、この建物の存在する場所的環境は参酌すべきものである」(最高裁1960年12月20日判決)。即ち、地主が支払う建物の時価は建物自体の価格に場所的利益が加算される。この判例では、借地権価格を含めないとしているが、実際は借地権価格を考慮に入れている。それでは、どんな場合に「建物買取請求権」を行使出来るのか。一番多いケースは、借地人が更新請求をしたが、地主が更新を拒絶した場合である。
 権利行使の要件は(1)借地期間が満了したこと(2)契約の更新がないこと(3)借地上に建物があることである。
 地主と借地人が合意の上で解約した場合はどうであろうか。判例は「土地の賃貸借を合意解除した借地権者は買取請求権を有しない」(最高裁1954年6月11日判決)。借地人が買取請求権を放棄したものと解されている。また地代不払い等の債務不履行や契約違反で契約解除された場合も判例は一貫して建物買取請求権を否定している。地主と借地人の間で買取価格について協議が纏まらなかった場合は、調停や裁判で適正な買取価格を決定してもらうことも出来る。建物の買取価格は、鑑定実務では概ね借地権価格の20〜30%と考えられている。




毎月1回15日発行一部200円/昭和50年5月21日第三種郵便物認可

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